従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第55話 犯人捜し

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「そうか……どこにでもいるんだよな、弱いものいじめする奴はよ……
ヨシヒロが見つけてくれて良かった。ちゃんと家族に迎え入れてくれたみたいだしな」

「クロとユキが見つけてくれなかったら、ルーナは死んでました……
だから、許すわけにはいかなくて」

「猫や犬、小動物で腕を試してから魔物に向かう奴も、少なくねぇからな……
とりあえず今日は、ギルドで見張ってもらって構わねぇ。
もし見つけたら、すぐ教えてくれ」

「ありがとうございます、ガーノスさん」

「いいってことよ。
俺も、弱いものいじめする奴は大嫌いだからな!」


別館にやってきたガーノスさんに、今回の出来事を一通り話すと、
ギルド内での調査を快く許可してくれた。

ギルドの隅にはいくつかテーブルが設置されている。
そこに座って、人間観察でもしようかな。
そんなことを考えながらも、ガーノスさんの言葉が胸にギュッと響いていた。

魔物ではなく、犬や猫、小動物で腕試しをしてから魔物討伐に向かう――
……なめとんか!と思う。
だけど、この世界ではそれが許されてしまっている現実が、何よりキツい。
自分に害をなす存在でない限り、殺傷すべきじゃないはずなのに。

そう思いながら別館を出て、正面からギルドへ入ると、
血気盛んな人々が集まった時特有の、独特な空気が漂っていた。

そして、相変わらず俺に向けられる視線が痛い。
とはいえ、今の俺の顔は認識されない。その点だけは、少し安心できた。

……まあ、クロたちはしっかり認識されているから、
結局あまり変わらないのかもしれないけど。


「ヨシヒロさん! こんにちは!」

「アリーシャさん、こんにちは。
今日は少しばかり、お邪魔しますね」

「裏でギルド長から話は聞きました!
思う存分いてくださいね! 私も、絶対に許せませんから!」

「ははは、ありがとう」


受付でアリーシャさんに挨拶をすると、
「思う存分いてください」と、なぜか気合十分な様子だった。

アリーシャさんも俺と同じ気持ちでいてくれて、
「許せない」と怒ってくれたことが、すごく心強い。
こういう人がいてくれると、本当に救われる。

そう思いながら周囲を見ると、受付に一番近いテーブル席が空いていた。
そこへ向かって腰を下ろした瞬間、ギルド内が妙にざわつき始める。

チラチラとこちらを見ながら、小声で何かを話しているのが分かる。
……勝手に話していな。
俺は君たちに用はない。

俺が探しているのは――あの時の男だけだ。
心の中でそう呟きながら、静かに周囲を見渡した。


「主、ルーナをいじめてた奴が分かったら、決闘していい?」

「僕も決闘したいです。ルーナのために」

「君たちは本当に優しいねぇ。でも、決闘はやめよう?」

「なんでだよー! 悪い奴なんだぞー!」

「あのね。
君たちと決闘したら、相手は死んじゃうのよ。
クロは悪魔ちゃんだし、ユキはフェンリルでしょ?
普通の人とやり合ったら、確実に死ぬ」

「じゃあ……半殺しならいい?」

「クロ!めっ! そんな怖いこと言っちゃダメ!
相手を傷つけるってことは、その男と同じになるってことなんだよ?
同じ土俵に上がっちゃダメ。
それ以外の方法で、ちゃんと懲らしめようね」

「チェッ……
でも、主がそう言うなら、そうする」

「そうですね。
ルーナを傷つけた人と、同じにはなりたくないです」

「うん。分かってくれて、ありがとう」


周囲を警戒していると、クロとユキが
「犯人を見つけたら決闘したい」と言い出した。
この世界では、決闘でどちらかが死んでも罪に問われない。
だからこそ、即座に「ダメだ」と止めた。

するとクロが、真剣な顔で
「半殺しならいい?」なんて言い出すものだから、
思わず本気で叱ってしまった。

理由をきちんと説明すると、
クロは少し不満そうな表情をしながらも「分かった」と頷いてくれた。

ユキもまた、「傷つけた人と同じにはなりたくない」と言ってくれて、
本当にホッとした。

……いや、君たちが本気を出したら、瞬殺なんだよ。
怖い怖い。

そんなことを考えながら、二人の頭をそっと撫でる。
この子たちが、どれだけルーナのことを大切に思っているか。
それが痛いほど伝わってきて、胸が温かくなった。

今日は犯人に会えないかもしれない。
それでも、必ず見つけなければならない。

話をして、理解できる相手なら――まだ救いはある。
もし、そうでなかったなら……

まあ、その時は、その時で考えよう。

そう心に決め、俺は行き交う冒険者たちを静かに観察し続けていた――









「主、お腹空いたー」

「そうだなぁ。もうお昼だしな。ちょっと待ってて。
アリーシャさん、すみません。ここで昼食を食べても大丈夫でしょうか?」

「構いませんよ! 結構いらっしゃるんですよ。
このテーブルで昼食を食べてから、依頼を受ける方」

「そうなんですね! ありがとうございます!
クロ、ユキ。食べていいって」

「わーい! ありがと、アリーシャ!」

「ありがとうございます、アリーシャさん!」

「ふふっ、いいですよ~。クロくんにユキちゃん。」


テーブルに座ってから、どれくらい経っただろうか。
気づけば昼食の時間になっていて、クロがお腹が空いたと言い出した。

受付のアリーシャさんに確認すると、
笑顔で「大丈夫ですよ」と言ってもらえて、ほっと胸を撫で下ろす。

俺はすぐに、アイテムボックスの鞄からサンドイッチとスープを取り出した。
今日のスープは、冷たくても美味しいコーンスープだ。
この場所では、むしろちょうどいいだろう。

そんなことを考えながらテーブルに並べると、
ユキがぴょんっと椅子の上に飛び乗った。

最近のユキは、なぜか両前足を使ってパンを掴めるようになり、
椅子に座って食べられるようになっていた。

さすがにスープは飲めないので、
後で床に置いてやろうと思い、ひとまずはテーブルの上へ。

それにしても、この器用さ。
フェンリルって、やっぱりすごいんだな……

そして、そんな様子を見ている冒険者たちもまた、
俺が最初にユキを見た時と同じような表情で、彼を見つめていた。

まあ、そうなるよな。
椅子に座って前足でサンドイッチを掴んで食べるフェンリルなんて、
普通は見たことがない。

……可愛いだろう?
俺の従魔たちは。
そう皆に言って回りたいくらいだ。


「主ー、全然来ないな」

「そうだな。毎日通ってるわけじゃないのかもしれないな」

「ちょっと飽きちゃった」

「あはは。そうだね。
じゃあ、ゲートくぐって少し休憩するか?」

「そうするー!」

「分かった。じゃあ俺は、もう少しここにいるから、二人は先に戻ってな?」

「あるじさま、おひとりで大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。
気にしなくていいから、行っておいで?」

「分かりました!
ご飯を食べたら行きましょう、クロ兄さん!」

「そうしよー!」


サンドイッチを頬張りながら人間観察を続けていると、
どうやらクロとユキは、人探しに飽きてしまったようだった。

ここは俺一人で大丈夫だろう。
そう思って、「ゲートから家に戻っていいよ」と声をかける。

二人は大きく頷くと、急いで食事を済ませ、
アリーシャさんにお願いして受付の中を通らせてもらい、
外へ繋がる扉から別館へと出て行った。

……まあ、分かる。
何もせず、ただ人間観察しているだけだからな。
そりゃ飽きるよね。子供だし。

そういうところも、なんだか可愛い。
こんなふうに思ってしまう俺は、
完全に従魔たちに心を奪われているんだろうな。

でも、それが悪いことだとは思っていない。
だから、特に気にもしない。

そんなことを考えながら、
俺は一人、サンドイッチを頬張りつつ人間観察を続けていた――









数時間後――


「今日はもうダメだな……
疲れたし、俺も戻るかな。
アリーシャさん!
今日は無理を言ってすみませんでした。
そろそろ帰ります!」

「犯人、見つからなくて残念でしたね……
でも、そのうちきっと来ますよ!
その時は、ちゃんと叱ってやりましょう!」

「そうですね!
その時は一緒にお説教、お願いします!
今日はありがとうございました!」

「いえいえ!
では、また。お疲れさまでした!」


あれから数時間待ってみたものの、
あの時感じた気配の男は、結局現れなかった。

毎日通っているなら会えると思ったけど、
どうやら、そこまで熱心に冒険者をやっているわけではなさそう。

そう思いながらアリーシャさんに挨拶をして別館へ向かい、
誰もいなかったので、せめてものお礼にと、
いつものルミグミをテーブルの上に置く。

それからゲートをくぐり、家へと戻った。


「主ー! お帰りー!」

「その顔は……見つからなかったんだな?」

「あるじ、おつかれさま」

「あるじさま、また必ず探しに行きましょうね」

「あー! ヨシヒロ様、おかえりなさい!」

「ただいまー」


ゲートを抜けると、そこには皆が集まっていて、次々と声をかけてくれた。

「おかえり」と言われること。
そして「ただいま」と言えること。

……それだけで、幸せすぎる。

たとえ相手が魔物だとしても、彼らの優しさを俺は知っている。

だから、彼らが発する言葉のすべてが、どうしようもなく愛おしい。


「よし。
ちょっと田んぼの様子を見てから、晩ご飯の支度をしようかな」

「賛成ー!」

「行きましょう、あるじさま!」

「そういえばさ、今日初めて見た冒険者がいてさ――」


こんなふうに、他愛のない会話をしながら過ごす時間が、
俺にとっての癒しであり、心を元気にしてくれる。

この子たちからもらっているものに、
何かお返しができているわけじゃない。

それでも――
皆が楽しく、生き生きと過ごせるように。
俺は、できる努力を続けたい。

だから、1つずつ。
確実に、問題を解決していこう。

そう思いながら、皆と一緒に湖へと向かった。

それにしても……
あと1週間くらいで、お米が収穫できちゃうのか。

そう思うと嬉しくて、
思わずニヤけてしまうのだった――
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