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第111話 命を救うということは
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ザッパアアアアンンッ!
「ぎゃあああっ!! びっくりした……!」
「やかましいわ! お前の声の方がよほどびっくりするわ……」
「仕方ないだろう?!
でかいし怖いんだから……
もしこの魚が人間じゃなかったらと思うと、普通に怖いだろ……」
「我らの鑑定に間違いなどあるわけがなかろうが……」
「ロウキは慣れてるから、そういうことが言えるんだよー!」
「ほらほら、ロウキ様もヨシヒロ様も喧嘩しないで。
あっくんが喋りますわよ」
「あ、ごめん!」
水面から突然姿を現した巨大魚。
その圧倒的な迫力に、思わず叫んでしまった俺は、
そのたびにロウキに怒られ、軽い口喧嘩になってしまう。
そんな俺たちを、ルーナがやんわりとなだめてくれた。
その横で、あっくんは巨大魚に向かって、真剣な表情で問いかけていた。
「なるほどー! パーパー!
このお魚さん、ジャスター・ジョーンズってお名前だって!」
「えーっとね、ブルーメイド? 王国で……
うーん? さい、しょう……?とかいうことを、していたって」
「えっ……ブルーメイド王国で宰相してた……?!」
「なに? んーとね……
王に意見したら、みせしめ?で、こうなったって言ってる、パーパ!」
「……クソじゃん。」
あっくんの通訳を聞いた瞬間、言葉を失った。
まさかこの巨大魚が、俺の夢に出てきたブルーメイド王国の人間で、
しかも国王に“見せしめ”として獣化させられた宰相だなんて、
誰が想像できるだろうか。
王に意見しただけで獣化させるなんて……
アーロンさんとは、天と地ほどの違いだ。
どうして俺の夢に、その国が出てきたのか――
そう思っていると、あっくんがさらに続けた。
「えっとね、Dream Voice(ドリームヴォイス)っていうスキルが、
このお魚さんの固有スキルなんだって!」
「それでね、パーパの夢で助けを求めたって!」
「え?! そうなの?!
じゃあ、あの声は……この巨大魚――
えっと、ジャスターさんだったってこと?」
「そうだよって言ってる!」
「リツが言ってたスキル、
こんなに近くに持ってる人がいたなんて……驚きだな……」
ついこの間、リツが教えてくれたスキルの持ち主が、
こんなにも近くにいたなんて。
その事実に、驚くと同時に、ズシンと心が重たくなった。
――無力な俺に、何が出来るんだろう。
女神アイリスが与えてくれた Angelic Hand なら、
もしかしたら何とかなるのかもしれない。
だけどど、迷っている。
本当に自分なんかが救えるのかという不安。
そして、この安寧が崩れてしまうかもしれないという恐れ。
目の前に、助けを求める存在がいるのに。
そんなことを考えてしまう自分が、
ひどく情けなく思えた。
「パーパー!」
「ん?」
「悲しい顔してるパーパ……大丈夫?」
「心配させてごめんな。
ちょっと……色々考えてた」
「……ちょっとこっちに来い、ヨシヒロ」
「え? あ、うん……
ごめん、ちょっと話してて?」
色々と悩んでいたところでロウキに呼ばれ、
俺は少し離れた場所へと移動した。
ロウキも、何か思うところがあるのだろうか。
そう考えていると、
ロウキはいつになく真剣な声で、静かに口を開いた。
「助けるも見捨てるも、お前次第だ」
「……え」
「助けてくれてありがとうと言われて満足して終わり。
そんな都合のいい話にはならんぞ。
一度救えば、お前はもう“ただの異世界人”ではいられなくなる。
これまでは我らのように従魔となった。
それも我ら自身の意思でな。
だから、何も問題は起きなかった。
だが、今回は違う。
あの男は、ただの獣ではない。一国の政治を司っていた宰相だ。
そんな重要人物を“可哀想だから”という理由で救ったとしても、
それが誰かの耳に入れば、国は必ず動く。
ブルーメイドだけではない。
この国も、動かざるを得ない状況になるだろう。
救った命の責任を、お前は一生背負い続ける覚悟があるのか?
情に流されて中途半端に首を突っ込むのが、
一番この世界をややこしくするのだ」
「ロウキ……」
「我が言いたいのは、それだけだ。
どう決断するかはお前の自由。我らは、お前の判断に従うまでだ。
よく考えることだな」
「……分かった。」
ロウキの言葉を聞き終え、俺は思わず視線を落とした。
どれも正論で、反論の余地がない。
下手に手を出せば、俺が望んでいるこの静かで幸せな居場所が、
政治や権力という泥沼に飲み込まれてしまう可能性は高い。
だから、仕方がないことだってある。
見捨ててしまえばいい。
そう自分に言い聞かせても、
獣の姿で苦しむあの男の瞳が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
救うということは、その生き物の人生を背負うということ。
今回の状況で、その重さを痛いほど思い知らされ、
胸に重くのしかかってきていた。
「あっくん、ジャスターさんに伝えてくれる?
少し考える時間が欲しいって」
「分かったって! パーパの言葉は分かるんだよー!」
「そっか……
あの、ジャスターさん、すみません。
俺も色々と考えたくて。
申し訳ないのですが、少しだけ……時間を下さい」
「大丈夫だってー!
どんな決断をするにも、時間がかかる。分かっています、だって!」
「はは……さすが宰相だ……
すみません。ありがとうございます。
皆、俺ちょっと王都に行ってくるから、遊んでて」
どうやら、人間の言葉はまだ理解できるらしい。
俺が何を考えているのか察したうえで、
時間をくれたジャスターさん。
宰相ともなれば、頭の回転が良くなければ務まらないだろうし、
俺が何に迷い、何を恐れているのかくらい、
簡単に想像がつくのだろう。
……だったら、分かってくれるよな?
一般人の俺が抱えている不安も、
最悪の決断を下すかもしれないということも。
そう自分に言い聞かせながら、その場を離れ、
一人で王都へ向かうため、ゲートをくぐった。
ゲートを抜けると、作業机に座り、
山のような書類に囲まれたガーノスさんの姿があった。
「ん? ヨシヒロ、どうした。一人か?」
「ガーノスさん、今日はここにいたんですね」
「今日は机仕事よー。
で? 一人で来るなんて珍しいじゃねぇか。
従魔と喧嘩でもしたのか?」
「ロウキたちと喧嘩はしてないんですけど……」
何ともタイミングが良くて、正直ほっとした。
ここは相談してみるべきか。
そう思う反面、
ガーノスさんの答え次第で自分の決断を左右されるのは、
まるで責任を押しつけているようで、少し抵抗もあった。
それでも、ロウキの言葉があまりにも重く、
自分一人で結論を出す勇気が、どうしても持てなかった。
のんびり過ごしたいだけなのに、
こんな大事に巻き込まれるなんて、思いもしなかった。
だけど、もう事態は動き始めている。
俺の決断一つで、誰かの人生が、
そして――俺自身の未来が変わってしまうかもしれない。
その覚悟を胸に、俺はガーノスさんに、思い切って問いかけた――
「ぎゃあああっ!! びっくりした……!」
「やかましいわ! お前の声の方がよほどびっくりするわ……」
「仕方ないだろう?!
でかいし怖いんだから……
もしこの魚が人間じゃなかったらと思うと、普通に怖いだろ……」
「我らの鑑定に間違いなどあるわけがなかろうが……」
「ロウキは慣れてるから、そういうことが言えるんだよー!」
「ほらほら、ロウキ様もヨシヒロ様も喧嘩しないで。
あっくんが喋りますわよ」
「あ、ごめん!」
水面から突然姿を現した巨大魚。
その圧倒的な迫力に、思わず叫んでしまった俺は、
そのたびにロウキに怒られ、軽い口喧嘩になってしまう。
そんな俺たちを、ルーナがやんわりとなだめてくれた。
その横で、あっくんは巨大魚に向かって、真剣な表情で問いかけていた。
「なるほどー! パーパー!
このお魚さん、ジャスター・ジョーンズってお名前だって!」
「えーっとね、ブルーメイド? 王国で……
うーん? さい、しょう……?とかいうことを、していたって」
「えっ……ブルーメイド王国で宰相してた……?!」
「なに? んーとね……
王に意見したら、みせしめ?で、こうなったって言ってる、パーパ!」
「……クソじゃん。」
あっくんの通訳を聞いた瞬間、言葉を失った。
まさかこの巨大魚が、俺の夢に出てきたブルーメイド王国の人間で、
しかも国王に“見せしめ”として獣化させられた宰相だなんて、
誰が想像できるだろうか。
王に意見しただけで獣化させるなんて……
アーロンさんとは、天と地ほどの違いだ。
どうして俺の夢に、その国が出てきたのか――
そう思っていると、あっくんがさらに続けた。
「えっとね、Dream Voice(ドリームヴォイス)っていうスキルが、
このお魚さんの固有スキルなんだって!」
「それでね、パーパの夢で助けを求めたって!」
「え?! そうなの?!
じゃあ、あの声は……この巨大魚――
えっと、ジャスターさんだったってこと?」
「そうだよって言ってる!」
「リツが言ってたスキル、
こんなに近くに持ってる人がいたなんて……驚きだな……」
ついこの間、リツが教えてくれたスキルの持ち主が、
こんなにも近くにいたなんて。
その事実に、驚くと同時に、ズシンと心が重たくなった。
――無力な俺に、何が出来るんだろう。
女神アイリスが与えてくれた Angelic Hand なら、
もしかしたら何とかなるのかもしれない。
だけどど、迷っている。
本当に自分なんかが救えるのかという不安。
そして、この安寧が崩れてしまうかもしれないという恐れ。
目の前に、助けを求める存在がいるのに。
そんなことを考えてしまう自分が、
ひどく情けなく思えた。
「パーパー!」
「ん?」
「悲しい顔してるパーパ……大丈夫?」
「心配させてごめんな。
ちょっと……色々考えてた」
「……ちょっとこっちに来い、ヨシヒロ」
「え? あ、うん……
ごめん、ちょっと話してて?」
色々と悩んでいたところでロウキに呼ばれ、
俺は少し離れた場所へと移動した。
ロウキも、何か思うところがあるのだろうか。
そう考えていると、
ロウキはいつになく真剣な声で、静かに口を開いた。
「助けるも見捨てるも、お前次第だ」
「……え」
「助けてくれてありがとうと言われて満足して終わり。
そんな都合のいい話にはならんぞ。
一度救えば、お前はもう“ただの異世界人”ではいられなくなる。
これまでは我らのように従魔となった。
それも我ら自身の意思でな。
だから、何も問題は起きなかった。
だが、今回は違う。
あの男は、ただの獣ではない。一国の政治を司っていた宰相だ。
そんな重要人物を“可哀想だから”という理由で救ったとしても、
それが誰かの耳に入れば、国は必ず動く。
ブルーメイドだけではない。
この国も、動かざるを得ない状況になるだろう。
救った命の責任を、お前は一生背負い続ける覚悟があるのか?
情に流されて中途半端に首を突っ込むのが、
一番この世界をややこしくするのだ」
「ロウキ……」
「我が言いたいのは、それだけだ。
どう決断するかはお前の自由。我らは、お前の判断に従うまでだ。
よく考えることだな」
「……分かった。」
ロウキの言葉を聞き終え、俺は思わず視線を落とした。
どれも正論で、反論の余地がない。
下手に手を出せば、俺が望んでいるこの静かで幸せな居場所が、
政治や権力という泥沼に飲み込まれてしまう可能性は高い。
だから、仕方がないことだってある。
見捨ててしまえばいい。
そう自分に言い聞かせても、
獣の姿で苦しむあの男の瞳が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
救うということは、その生き物の人生を背負うということ。
今回の状況で、その重さを痛いほど思い知らされ、
胸に重くのしかかってきていた。
「あっくん、ジャスターさんに伝えてくれる?
少し考える時間が欲しいって」
「分かったって! パーパの言葉は分かるんだよー!」
「そっか……
あの、ジャスターさん、すみません。
俺も色々と考えたくて。
申し訳ないのですが、少しだけ……時間を下さい」
「大丈夫だってー!
どんな決断をするにも、時間がかかる。分かっています、だって!」
「はは……さすが宰相だ……
すみません。ありがとうございます。
皆、俺ちょっと王都に行ってくるから、遊んでて」
どうやら、人間の言葉はまだ理解できるらしい。
俺が何を考えているのか察したうえで、
時間をくれたジャスターさん。
宰相ともなれば、頭の回転が良くなければ務まらないだろうし、
俺が何に迷い、何を恐れているのかくらい、
簡単に想像がつくのだろう。
……だったら、分かってくれるよな?
一般人の俺が抱えている不安も、
最悪の決断を下すかもしれないということも。
そう自分に言い聞かせながら、その場を離れ、
一人で王都へ向かうため、ゲートをくぐった。
ゲートを抜けると、作業机に座り、
山のような書類に囲まれたガーノスさんの姿があった。
「ん? ヨシヒロ、どうした。一人か?」
「ガーノスさん、今日はここにいたんですね」
「今日は机仕事よー。
で? 一人で来るなんて珍しいじゃねぇか。
従魔と喧嘩でもしたのか?」
「ロウキたちと喧嘩はしてないんですけど……」
何ともタイミングが良くて、正直ほっとした。
ここは相談してみるべきか。
そう思う反面、
ガーノスさんの答え次第で自分の決断を左右されるのは、
まるで責任を押しつけているようで、少し抵抗もあった。
それでも、ロウキの言葉があまりにも重く、
自分一人で結論を出す勇気が、どうしても持てなかった。
のんびり過ごしたいだけなのに、
こんな大事に巻き込まれるなんて、思いもしなかった。
だけど、もう事態は動き始めている。
俺の決断一つで、誰かの人生が、
そして――俺自身の未来が変わってしまうかもしれない。
その覚悟を胸に、俺はガーノスさんに、思い切って問いかけた――
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