硝子の大瓶

しゃんゆぅ

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冬のこと

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ふと思い出す 冬のこと

目の前に揚げたひれ肉があって
私は祖父の膝の上
私が食べたいと強請ると
嬉しそうに食べさせてくれた祖父
真っ青なこたつ布団に衣が落ちる

ふと思い出す 冬のこと

灰色の空 田んぼに
申し訳程度に残ったわら草
凧をあげようと必死に走っても
チラシと割りばしの
それは引きづられるままで

ふと思い出す 冬のこと

いや あれは冬だったのか
酷く寒かったことは確かだけれど
毛布に包まれて叔母に抱かれる私
母も父も居なくて心細かった私
大丈夫、大丈夫と
水疱瘡の私を撫でさする叔母

覚えている、覚えている
ある冬のこと
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