ゲイ卒したいのに、何故かスパダリセフレに溺愛&求婚されてます!

有村千代

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おまけSS はじめて、そして二回目(第4.5話)(1)★

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 高山先輩は、どうして連絡先なんか訊いてきたんだろう――。

 その夜、侑人はベッドの上でぼんやりと考えに耽っていた。
 スマートフォンの画面には、「高山健二」と登録名が表示されている。つい先日、声をかけられて連絡先を交換したのだが、特にやり取りは交わされてはいない。高山の考えていることがますますわからなくなる。

 また侑人の方も、自分から連絡をしようとは考えていなかった。なんとなく登録してみただけで、特に他意はないつもりだったのだが、

(……なんか、無性にヌきたくなってきた)

 体を重ねてからというもの、どうにも高山のことが気になって仕方がない。
 まさか自分があんなふうに乱れるだなんて。思い返すと頭を抱えたくなるが、その一方で、再びあの感覚を味わいたいという欲求が湧き上がってくるようだった。

「――……」

 そわそわとしながらスマートフォンを操作し、日常的に利用しているアダルト動画サイトにアクセスする。適当な動画を開くと、静かに下着の中から己の欲望を取り出した。
 動画内で繰り広げられる、男同士の濃厚な絡み――そんなものを眺めながら自身を慰めていれば、だんだんと気分が高まってくる。

(うわ、気持ちよさそう……)

 侑人の喉がごくりと鳴る。
 後孔に赤黒いものを咥え込み、恍惚とした表情を浮かべる男優の姿にすっかり釘付けになっていた。
 そのうち我慢ならなくなって下衣を脱ぎ捨て、ベッド脇に置いてあったワセリンを手に取る。指にたっぷり塗りつけると、そっと自身の窄まりへ挿入してみせた。

「ん、ぅ」

 異物感に眉を寄せるも、すぐに快感へと変わってしまう。浅いところを擦ったり、ぐるりと円を描くように動かしたりして、徐々に体内を押し広げていく。

『指、結構すんなり入るな。よく自分でイジってるのか?』

 ――不意に高山の言葉が浮かび、思わず手が止まる。
 あの日の光景が頭をよぎって、侑人は恥ずかしくなった。しかし、思い出してしまえば、もう止まらない。

(確か、このあたり――)

 記憶を頼りにして、腹部側にあるしこりのようなものを探り当てる。途端に、ぞくりとした快感が背筋を走り抜けていった。

「はっ、ぁ……」

 指の腹で擦ったり、トントンと叩いたりと、高山の指使いを一つ一つ真似てみる。
 気がつけば、動画になど目もくれず自慰に耽る侑人がいた。スマートフォンを放って、前も一緒に扱き上げれば、あっという間に絶頂へと上り詰めていく。

「っ、く」

 想像上の高山が容赦なく責め立てた瞬間、侑人はあっさりと限界を迎えた。手の中に熱いものが放たれ、遅れてティッシュペーパーを何枚か引き抜く。

「くそ、何やってんだよ……」

 一体、何を考えていたというのか。
 我に返って自己嫌悪に陥るも、一度覚えてしまった快楽をそう簡単に忘れることなどできない。今もどこか、熱がくすぶっている感覚を覚えていた。

(……なんか、全然物足りない)

 そんなふうに感じてしまうのが悔しい。けれど、この熱を鎮めるすべなど持ち合わせていなかった。


    ◇


 数日後のとある昼休み。三年生の教室を訪れる侑人の姿があった。
 廊下から順番に覗いていって、高山の姿が見受けられたところで呼び出してもらう。高山はこちらに気づくと、すぐに廊下まで出てきた。

「よお。わざわざどうしたんだ?」

 少し驚いたような顔をしてみせる高山。侑人は挨拶もそこそこに、本題を切り出そうとする。

「あの、高山先輩」
「ん?」
「えっと――今日の放課後、空いてたりしますか? ちょうど部活休みなんですけど……それで、その」

 口ごもりながらも、勇気を振り絞って口にしてみせる。
 高山の返答は予想外のものだった。

「……余所行きの顔されると、やっぱ変な感じするな」
「なっ!」

 面と向かって指摘され、いささか恥ずかしくなる。が、高山は気にすることもなく続けた。

「ああ、悪い悪い。放課後なら空いてるよ。でも、LINE教えたんだから、そっちで言ってくれりゃいいのに」
「それは……なんて言えばいいか、わからなかったし」

 その答えに、高山は何かを察したように目を細めた。軽く笑みを浮かべて、侑人の耳元へと唇を寄せてくる。

「もしかして――またシたくなった?」
「っ……」

 低く掠れた声が鼓膜を震わせた。
 高山がニヤリと口角を上げる。こちらの反応を楽しむかのように、顔を覗き込んでくるものだから、いっそうタチが悪い。

「お、赤くなったな。やらしいヤツ」
「うっ、うるさい!」

 そう、侑人はやり場のない熱をどうにかしたくて、こうして高山に声をかけていたのだった。図星を指されて動揺したあまり、つい声が大きくなってしまう。
 あっと思ったときにはもう遅く、ちらほらと向けられる周囲の視線――そして、その中に見知った顔があることに気づいてギクリとした。

「あれ、瀬名じゃん。こんなところでどうした、何か用?」

 やって来たのは本城だ。
 あれから本城は、何事もなかったかのように接してくれている。ここで妙に意識するわけにもいかない。
 侑人は気まずさを感じながらも、平静を取り繕おうとする。

「本城先輩、こんにちは。用ってほどでもないんですけど……」

 そう返したところで、高山が肩をぐいっと引き寄せてきた。

「お前じゃなくて、俺に用があって来たんだよ」

(……は?)

 間違いではないのだが、何故わざわざ突っかかるような言い方をするのか。
 案の定、本城が不思議そうにこちらを見つめてくる。何とも言えぬ視線を受け止めながら、侑人は人知れず冷や汗を流した。

「ふうん、お前らって仲良かったっけ?」
「最近仲良くなったんだ。意外と話が合ってさ――な、瀬名」

 言うと、高山は「そういうことだから」とそのまま歩き出してしまう。
 侑人が戸惑いの声を上げるも、聞き入れてもらえるはずもなく。ずるずると引きずられるがままついていくしかなかった。
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