ゲイ卒したいのに、何故かスパダリセフレに溺愛&求婚されてます!

有村千代

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おまけSS アロハな新婚旅行

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「にしても、侑人がお揃いのアロハ着てくれるとはな」

 高山が嬉しそうに声を弾ませる。

 というのも現在の二人は、ハワイ挙式後の新婚旅行中。ビーチパークに繰り出し、のんびりと散策していたのだが、途中立ち寄ったショップでアロハシャツを購入したのである。

 アロハシャツは自然な風合いで、色鮮やかなハイビスカスがあしらわれたデザインだ。
 日差しの降り注ぐビーチにぴったりなそれを身に纏い、手を繋いで歩いていく二人。そのさまは周囲にも仲睦まじく映るのだろう――すれ違う人々が、微笑ましそうに視線を向けてくるのがわかる。

「悪いかよ」
「いんや? ただお前って、遊園地のカチューシャとか嫌がりそうだと思って」
「なんだよ、その例え。べつにいいだろ?」

 侑人は気恥ずかしげに視線を逸らしたあと、ぼそぼそと呟いた。

「――だって、せっかくの新婚旅行なんだから」

 言ってしまったあとで、やはり耐えられなくなって、胸ポケットからサングラスを取り出してかける。それでも高山が黙っているものだから、言い訳でもするかのように言葉を付け加えた。

「そっ……それに、こっちじゃゲイなんて珍しいもんでもないし! もう来ないような場所だしっ?」

 すると、高山は軽く吹き出して笑った。こちらのサングラスを取り上げると、そのまま自分の頭にかけてしまう。

「そいつはわからないぞ? またいつか来てさ、『新婚旅行でここ歩いたよなあ』とかって、思い出話に花を咲かせるのもよくね?」

 にんまりと微笑む高山は、ビーチの眩しさにも負けないほどに輝いて見えた。ましてや、アロハシャツやサングラスがやけに似合っていて、つい見惚れてしまいそうになる。

「まあ、この旅行もそろそろ終わりだと思うと嫌っつーか……なんか寂しいとは思うし。また来られたらいいなとは」

 どぎまぎしながら答えると、高山の目がすうっと細められるのがわかった。

「……この時間が、いつまでも続いてほしい?」
「んなこと言うかよ、高山さんじゃないんだから」
「けど、思ってはいる?」

 意地悪な低い声色で尋ねられ、侑人は言葉に詰まる。向けられる眼差しも、いつの間にか熱っぽいものになっていて、まるで心の内側を覗かれているような錯覚に陥った。

「そりゃあ、思う……だろ。高山さんとこうしていられるの、その……すっげえ幸せ――」

 やっとのことで口にするも、それ以上は言葉にならず、代わりに高山の肩へ寄り添う。

 高山は表情を和らげたのち、慈しむように頭を擦りつけてきた。それから耳元で「俺も」と囁くと、キスでもしたくなったのか、顔を覗き込んでくる。

「ちょ、ちょっと」
「頬へのキスくらい、挨拶としちゃ普通だろ。それともここは、ハワイらしく《ホニ》にしとくか?」
「っ、バカ。まるで、新婚で浮かれてる夫婦みたいじゃん」
「『みたい』じゃなくて、俺は間違いなく浮かれてる」
「………………」

 きっとお互い様なのだろう。自然と止まった足に、我ながら呆れてしまう。
 高山はこちらの頬に手を添えると、そっと鼻先同士を合わせた。

「また来ような、絶対に」

 そう誓うように言って、柔らかく抱きしめてくる。

 侑人は熱い体温を感じながら、静かに身を委ねた。シャツ越しに伝わってくる鼓動――それはいつもより少し速くて、自分と同じくらいドキドキしてくれているのだと思うと、なんだか嬉しくなってくる。

「……そのときは、さ」
「うん?」
「そのときは――高山さんが言ってくれたようなこと、たくさん話したい」

 ぽつりと口をついて出たのは、相手と同じ気持ち。素直な言葉。

 二人で刻んでいく思い出は、きっと何年経っても色褪せることはないだろう――。
 そんな思いとともに顔を上げれば、驚くべきことに、すぐさま高山に唇を奪われてしまった。が、たしなめる気は起きず、はにかみながらも侑人は微笑んでみせたのだった。
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