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04 霞が関のコンビニで、深夜のバイトを始めました_07
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* *
「あのぉ、……。もしかしたら、大藪英子さんでしょうか?」
「はい。あっ、えぇーと。私です。大藪英子です!」
英子と後輩の前に、白のブラウスに灰色のスカート姿の女性が、おそるおそる訊ねてきた。
英子は相手の表情を見て、何だかもの凄くイヤ~な予感がしてきた。
「お手数ですが、事務局の方で、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
周りの人が、こちらのやり取りを不思議そうに見ている。
「ワカりました。私も伺います」
「では、こちらへ、……」
とりあえず、今回何故展示されていないのか、説明して頂けるのだろう。そう思って、英子はその女性の後に付いていった。
事務局に入室すると、初老の男性が面談席で待ち構えていた。
「あぁ、……。大藪英子さん。ご足労申しワケない!」
そう言って、その男性は傍のソファーから立ち上がって、こちらが席に着くのを促した。
お互いに相手の目を見ると、その男性はおもむろに話しかけてきた。
「ざっくばらんに申しますとね、……。大藪英子さん、あなたの作品は、当コンテストの規約に違反した表現があったため、選外とさせて頂きました!」
「えっ!? 規約って?」
英子は、ただ架空の街の風景を描いただけなのに、と思った。
「第〇〇条XX項、社会不安を惹起する表現、主に公序良俗に反する表現を厳に禁ずるものとする、……。あなたの作品は、この規約に違反したのです」
「そんな、バカな、……」
選外、……。つまり落選だ。
「作品は、現在奥のヤードに保管しています。会期中に展示されることはありません。そのままお持ち帰り頂きたい!」
さて、……と。参ったなぁ。
事務局を出て、奥のヤードにいくと、誰もひとっこひとりいない。
こういう場合、喫煙者ならタバコを一本でも吸って、気持ちを落ち着けるところなのだけどさ、……。
英子の描いた作品は、新聞紙で丁寧に巻き付けた後に、ビニールの梱包材でしっかりと包装されていた。
まるで、この作品の表現内容を絶対世に知らしめないよう、きっちりガードしている風にすら見えた。
とりあえず、搬入をお願いした業者に電話で連絡をしてみたのだが、……。何故か何度コールしても連絡が付かない。
「仕方ない、……か」
英子は涙が目じりに少し溜まったまま、自力で会場から抱えて運び出した。
すると、上野駅近くで、先ほどの事務局の男性が、タバコを咥えて立っていた。
英子は、コイツは私の「敵」だと思ったので、無視して横を通り過ぎようとすると、……。
「どことは申し上げられないが、あなたの作品に『待った』が入りました。我々は立場上、本コンテストを中止するワケにはいかない。なので、その要求を飲まざるを得なかった。あなたの創作活動にお役に立てず、誠に申しワケない!」と耳打ちされた。
そう告げると、男性はタバコを指で弾き飛ばし、そのまま会場の方に戻っていった。
「あのぉ、……。もしかしたら、大藪英子さんでしょうか?」
「はい。あっ、えぇーと。私です。大藪英子です!」
英子と後輩の前に、白のブラウスに灰色のスカート姿の女性が、おそるおそる訊ねてきた。
英子は相手の表情を見て、何だかもの凄くイヤ~な予感がしてきた。
「お手数ですが、事務局の方で、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
周りの人が、こちらのやり取りを不思議そうに見ている。
「ワカりました。私も伺います」
「では、こちらへ、……」
とりあえず、今回何故展示されていないのか、説明して頂けるのだろう。そう思って、英子はその女性の後に付いていった。
事務局に入室すると、初老の男性が面談席で待ち構えていた。
「あぁ、……。大藪英子さん。ご足労申しワケない!」
そう言って、その男性は傍のソファーから立ち上がって、こちらが席に着くのを促した。
お互いに相手の目を見ると、その男性はおもむろに話しかけてきた。
「ざっくばらんに申しますとね、……。大藪英子さん、あなたの作品は、当コンテストの規約に違反した表現があったため、選外とさせて頂きました!」
「えっ!? 規約って?」
英子は、ただ架空の街の風景を描いただけなのに、と思った。
「第〇〇条XX項、社会不安を惹起する表現、主に公序良俗に反する表現を厳に禁ずるものとする、……。あなたの作品は、この規約に違反したのです」
「そんな、バカな、……」
選外、……。つまり落選だ。
「作品は、現在奥のヤードに保管しています。会期中に展示されることはありません。そのままお持ち帰り頂きたい!」
さて、……と。参ったなぁ。
事務局を出て、奥のヤードにいくと、誰もひとっこひとりいない。
こういう場合、喫煙者ならタバコを一本でも吸って、気持ちを落ち着けるところなのだけどさ、……。
英子の描いた作品は、新聞紙で丁寧に巻き付けた後に、ビニールの梱包材でしっかりと包装されていた。
まるで、この作品の表現内容を絶対世に知らしめないよう、きっちりガードしている風にすら見えた。
とりあえず、搬入をお願いした業者に電話で連絡をしてみたのだが、……。何故か何度コールしても連絡が付かない。
「仕方ない、……か」
英子は涙が目じりに少し溜まったまま、自力で会場から抱えて運び出した。
すると、上野駅近くで、先ほどの事務局の男性が、タバコを咥えて立っていた。
英子は、コイツは私の「敵」だと思ったので、無視して横を通り過ぎようとすると、……。
「どことは申し上げられないが、あなたの作品に『待った』が入りました。我々は立場上、本コンテストを中止するワケにはいかない。なので、その要求を飲まざるを得なかった。あなたの創作活動にお役に立てず、誠に申しワケない!」と耳打ちされた。
そう告げると、男性はタバコを指で弾き飛ばし、そのまま会場の方に戻っていった。
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