魁!断筆姉さん!!

西洋司

文字の大きさ
46 / 128

08 ウエルカム トゥー ヤムント国!_05

しおりを挟む
   *          *

 斎木の運転するパジェロは、ボルツ原野をひたすら進んでいく。
 英子がこちらの現地時刻に合わせた腕時計を見ると、そろそろ正午を過ぎる頃になっていた。

 なるほど、……。
 東京とこのヤムントの現地で、時差があるからワカらなかったけど、……。かれこれ、もう2時間ほど車で移動してきたのかと英子は思った。

「斎木さん、この辺りはボルツ原野とのことでしたが、ず~っとバルディ男爵の領地ということですね?」

「そうですな。まだまだ、もうしばらく原野を進むことになりますな!」

「男爵領とのことでしたから、もう少し狭いエリアを治めているイメージでしたが、……。結構な広さですね?」

「えぇ。元々このヤムント国では、王権神授説に基づいて運営がなされていて、貴族達もそれほど多くはありません。むしろ、先の大戦で功績を上げ、新たに貴族となった平民もいます」

「なるほど」

「こちらの男爵も、元々は平民の出です。我々日本の過去に存在した庄屋に当たる家柄の者が、功績を上げて、そのまま男爵を務めて貰っています」

「そうでしたか、……」

「……」

 ここで話題が途切れたため、英子は再び車窓を眺め始めた。
 途中野牛の群れを見たり、野鳥の集まる湖畔もあった。

 へぇーっ、意外だなぁ。
 英子の眼には、たまに見かける動物や辺りに繁茂する野草が、これまでいた地球のそれと大差なく見えた。

 斎木から、「実は、ここが東ヨーロッパの田舎なんですよ!」なとと言われたとしても、……。
 こちらも「あっ、やっぱりそうでしたか!」といって、そのまま信じてしまいそうに英子には思えた。

 でも、これだけ長い車での移動中、一度たりとも空を飛ぶ飛行機を見ることがなかったし、電線も自動車も見ることはなかった。

「えっ!?」

 英子は、思わず我が目を疑った。何と、遠くの空に翼竜が単独で飛んでいたのだ。

「斎木さん、あれっ!?」

「えぇ。翼竜ですな!」

 事もなげに言う斎木に、英子は目をまん丸くする。
 なるほど、私は異世界にきてしまったんだなぁと、英子は改めて深く理解した。

「あの翼竜は、いわゆる赤龍ですな。現地でもなかなか目撃例がなくて、大変珍しいんですよ!」

「はぁ」

「これは、幸先(さいさき)いいですな!」

 斎木はそう言って、ニコリと笑った。

 英子は、なおもその赤龍とやらが飛行するのを見つめ続けた。
 その雄大な大きさから、もし捕まったら、軽く一飲みされてしまうんだろうなぁと、思わずゾッとした。

 夕方頃、だんだんと暗くなってきた辺りで、斎木はパジェロの前照灯を点けた。

「そろそろ、最初の中継地に到着します。先ほどもお伝えしたとおり、バルディ男爵邸で、本日は休ませて貰うとしましょう!」

 斎木はそう言うと、ほどほどに大きい屋敷の庭に、車を進入(しんにゅう)させていった。

   *          *

 異世界のヤムント国に入った初日から、英子は痛い洗礼を受けました。
 このまま、英子が異世界をイヤにならなければいいのですが、……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...