魁!断筆姉さん!!

西洋司

文字の大きさ
50 / 128

09 バルディ男爵邸にて_04

しおりを挟む
   *          *

「マギー、……。あなた、随分とお綺麗になったこと」

「はっ、はいっ、奥方様っ!」

 先ほどより、バルディ家の女子陣は、私(英子)が化粧を施した女中のマギーを取り囲むと、執拗にその顔を見つめ、……いや凝視していた。

「ふぅ~っ、ホンと見ていてため息が出てくるわ。どうして、こうも美しくなっちゃったのかしらねぇ?」

 そう奥方は仰って、こちらを笑顔でじっと見つめなさった。

 うん。結構、興味を持たれて下さったみたい。
 やはり異世界でも、女性は美というものを、とことん追求するところは同じなんだね。

 だから、私の知る範囲の化粧技術なら、いくらかお伝えしても構わないだろうと英子は思った。

「そうですねぇ、……。私が化粧をする場合、その顔(フェース)をひとつの素材と見て、如何に立体的に造形が奥深くなるように仕上げるのかが、コツですね!」

「なるほど。だから頬の辺りに影色を着けて、表情を立体的に見せているのね」

「えぇ、仰るとおりです、奥方様!」

 こちらもそう言って、ニッコリとスマイルを作る。

「エイコ嬢。あなたのお化粧も、とてもお上手ねぇ!」

「はい。私は絵描きですからっ!」

「絵描き?」

 奥方様はそう仰って、不思議そうな顔をされた。

「あっ、はいっ。こちらでは絵師っていうんですね」

「ふふふっ、ホンとお上手よぉ、……。あなたがそんなにお美しいのも、何だかワカる気がするわ」

 奥方様とお嬢様は、うっとりするような表情を浮かべられ、こちらの顔をじっと見つめなさった。

「母上! 姉上共々、エイコ嬢にその化粧をお願いしてはどうでしょうか?」

 すると、先ほどより黙って話を聞いていたご子息が、明るい顔でそう仰った。

「えぇ、こちらこそよろしければ。何人か側仕えの女中の方にも同席させ、軽い化粧程度なら、どなたでもできるようにするのは如何でしょうか?」

 こちらのその言葉に、お嬢様はパァ~ッと明るい表情を浮かべられ、……。

「私にも、できるでしょうか?」

「えぇ、もちろんですよ!」

 スマイルを作って頷くと、女中達まで皆笑顔になった。

「では、エイコ様。直ぐに始めましょう! 別室にご案内いたしますわ!」

 お嬢様はこちらの手を取り、別室への移動を促されなさった。
 思わずその握力の強さに頷くと、グイグイと女性達が別室に引っ張っていく。

 食堂を出る際に、ちらりと男性陣の方を見た。

「我が妻が無理を言って申しワケない。気の済むまで相手をしてやって下さらんか?」

「はい。こちらも楽しいですから」

「それはありがたい、……」

 バルディ男爵はそう仰って、少々困ったようにお笑いになる。

 その男爵の顔には、深く大きな傷跡がある。
 前に何かあったのかなぁと、……。英子は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...