153 / 484
第一部「ハルコン少年期」
23 王都の森_05
しおりを挟む
* *
ハルコンが「聖地」に入って最初に気付いたことは、この土地が日本の神社や祠のある土地と大変よく似ていることだった。
森の中に突如現れた開かれた土地。陽光が燦燦と輝き、凛とした空気に、思わず身震いする。
「わぁ~っ、凄いなぁ!?」
ミラが感激した表情で、辺りの風景を見渡していた。
すると、この土地の北辺のところに、小さな祠があった。
ハルコン達は祠の方に歩いていくと、10メートル程離れたところにある訪問者用の石のテーブルに、荷物を置いた。
「ハルコン、ミラ。ワシらは『聖地』に入ったんだ。先ずはお供えをして、お参りしよう!」
「「はいっ」」
ギルマスの言葉に、ハルコンとミラは笑顔で返事をする。
ここは異世界ファルコニアだ。日本とは違って、「聖地」には鳥居もなければしめ縄もない。だけど、この土地で祀らわれているのは女神であり、このファイルド国周辺で崇敬されている存在だ。
ミラがお供え物の弁当をミルコ女史に渡すと、女史は恭しく受け取り、祠の前にあるお供え台の上に静かに置いた。
ミルコ女史が2歩下がってギルマスの脇に立つと、4人横一列に並んで、揃ってペコリとお辞儀をした。
「よしっ、これで『聖地』入場の許可を頂いた。ならハルコン、オマエさんの言っていたサンプルの採取をこれから始めるぞ!」
どうやら、手伝ってくれるらしい。道案内だけだとハルコンは思っていたので、正直意外だった。
「よろしいんですか? お手を煩わせてしまって!」
「あぁ、構わんよ。どうせワシもミルコ女史も、ここにいてやることがない。むしろ、この王都でも最先端の技術を持つ、オマエさんの手伝いをさせて貰えないかね?」
「ありがとうございますっ! よろしくお願いしますっ!」
ハルコンが頭を下げると、ミラも続いて頭を下げた。
「ハルコン君、『回生の木』はこちらよ! 私もキミの研究にとても興味があるから、ぜひ手伝わせて下さいねっ!」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
ミルコ女史に案内されて見た「回生の木」は、ちょうど季節だったのか、その花が満開を迎えていた。
無数に咲く青紫色の花々。その形は、地球世界の紫陽花によく似ていた。
「この花を、キミも知っているかしら?」
「そうですねぇ、……。私の知っているそれよりも、いささか小ぶりですね。それに、葉の形は、大きさ共に私の探していたものと大変よく似ていると思います」
紫陽花によく似た花の咲く夾竹桃。全く違う種類の植物が合わさった不思議な植物、「回生の木」。
気付いたら、ハルコンは夢中になって、その花の仕組みを探っていた。
ハルコンが「聖地」に入って最初に気付いたことは、この土地が日本の神社や祠のある土地と大変よく似ていることだった。
森の中に突如現れた開かれた土地。陽光が燦燦と輝き、凛とした空気に、思わず身震いする。
「わぁ~っ、凄いなぁ!?」
ミラが感激した表情で、辺りの風景を見渡していた。
すると、この土地の北辺のところに、小さな祠があった。
ハルコン達は祠の方に歩いていくと、10メートル程離れたところにある訪問者用の石のテーブルに、荷物を置いた。
「ハルコン、ミラ。ワシらは『聖地』に入ったんだ。先ずはお供えをして、お参りしよう!」
「「はいっ」」
ギルマスの言葉に、ハルコンとミラは笑顔で返事をする。
ここは異世界ファルコニアだ。日本とは違って、「聖地」には鳥居もなければしめ縄もない。だけど、この土地で祀らわれているのは女神であり、このファイルド国周辺で崇敬されている存在だ。
ミラがお供え物の弁当をミルコ女史に渡すと、女史は恭しく受け取り、祠の前にあるお供え台の上に静かに置いた。
ミルコ女史が2歩下がってギルマスの脇に立つと、4人横一列に並んで、揃ってペコリとお辞儀をした。
「よしっ、これで『聖地』入場の許可を頂いた。ならハルコン、オマエさんの言っていたサンプルの採取をこれから始めるぞ!」
どうやら、手伝ってくれるらしい。道案内だけだとハルコンは思っていたので、正直意外だった。
「よろしいんですか? お手を煩わせてしまって!」
「あぁ、構わんよ。どうせワシもミルコ女史も、ここにいてやることがない。むしろ、この王都でも最先端の技術を持つ、オマエさんの手伝いをさせて貰えないかね?」
「ありがとうございますっ! よろしくお願いしますっ!」
ハルコンが頭を下げると、ミラも続いて頭を下げた。
「ハルコン君、『回生の木』はこちらよ! 私もキミの研究にとても興味があるから、ぜひ手伝わせて下さいねっ!」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
ミルコ女史に案内されて見た「回生の木」は、ちょうど季節だったのか、その花が満開を迎えていた。
無数に咲く青紫色の花々。その形は、地球世界の紫陽花によく似ていた。
「この花を、キミも知っているかしら?」
「そうですねぇ、……。私の知っているそれよりも、いささか小ぶりですね。それに、葉の形は、大きさ共に私の探していたものと大変よく似ていると思います」
紫陽花によく似た花の咲く夾竹桃。全く違う種類の植物が合わさった不思議な植物、「回生の木」。
気付いたら、ハルコンは夢中になって、その花の仕組みを探っていた。
170
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる