天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

25 帝都に赴く女エルフ_02

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 ハルコンは光魔石の部屋の灯りを点けると、食事の載ったトレーを研究机の空いたスペースに、そっと置いた。

 それから、直ぐに部屋の隅々まで家探しを始めた。
 まぁ、……先日のノーマンの件もある。また中に誰か入っていたりしたら厄介だからな。

 とはいえ、ざっと探ってみたものの、人の気配はなかった。

「ふぅ、……」

 とりあえず、大丈夫そうだ。

「ヨシッ。では、さっそく、……」

 そう呟くと、興奮で両手をすり合わせながら、隣国に野営している女エルフに思念を同調させた。
 先程思念のタグ付けをしていたため、たちまち視覚野に向こうの景色が映ってきた。

「お待たせしました、女エルフさん。軽い食事を用意しましたので、さっそく受け取ってくれますか?」

『えっ!? えっ!? ホンとにそんなことができるのですか? さすが、ハルコン様!? 「神の御使い」なのは伊達ではありませんね!?』

「いやぁー、たははは。まぁ今回初めて試しますので、上手くいくかどうか、とりあえずやってみないことには、……」

『なっ、なるほど。では、そうですね、……蓋の付いた瓶など如何でしょうか?』

「瓶? というと? あぁなるほど、それだと、こぼしたりしないですもんね!」

『はい。できれば「酒」的なものがあると、なおいいのですが、……』

「なるほど。それなら、……」

 ハルコンは立ち上がると、部屋の隅の木箱から高級ブランデーを一本取り出した。
 これは贈答用に父カイルズから預かったもので、王立学校で懇意にしている講師らに配っていた分の残りだ。

「丁度いいのがありましたので、さっそく送りますね。両手を軽く前に翳して頂けますか?」

『こう、……ですか?』

 女エルフは言われたとおり、両方の掌を上向きにして、受け取る姿勢を取った。
 ハルコンは、女エルフの視覚を基に、向こうの状況を確認する。

「では、送りますよっ!」

『はいっ!!』

 次の瞬間、女エルフの両手に、ブランデーの酒瓶がすっぽり収まった。
 どうやら、実験は上手くいったようだ。

『すっ、凄いですっ!? ハルコン様っ!!』

 そう言って、女エルフはその場で酒瓶を持ったまま踊り出してしまった。

「ふふっ、上手くいったようで何よりです。では、次にそちらからこちらに物体を送ることができるか試したいので、河原の石を持っていただけますか?」

『はいっ!!』

 そう勢いよく返事をすると、女エルフは河原の小石を数個掴んで掲げた。

「では!」

 すると、タイムラグなく、ハルコンの手もとに数個の小石が届いた。

「ふぅ、……」

 これは、想定以上のスーパーチートスキルだと、……思わず両手が震えてきた。

「これからトレーに軽食を載せて送りますから。一応落とすとマズいので、座ったまま床に両手を突いて頂けますか?」

『了解です。こちらは、準備できました!!』

 ハルコンは女エルフの言葉を聞きながら、冷蔵庫でキンキンに冷えた果汁入りのミルクをコップに注ぐと、両手でトレーを掴んだ。

「それではっ!!」

『はいっ!!』

 ハルコンの言葉と共に、トレーはその場からスッと音もなく消えた。
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