天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

26 隣国の姫君の容態_08

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 寮長は仙薬エリクサー「タイプB」の入った小さなグラスを受け取ると、そのまま一息に飲み干してしまった。
 おそらく寮長にとって、ハルコンの差し出した薬剤が毒なのか薬なのかは考えるまでもないのだ。

 数日の徹夜の会議の結果、「とりあえず、飲んでこいっ!」と命令されていたのだろう。
 ハルコンは、強い覚悟でグラスの薬剤を飲み干す寮長を、やや冷ややかな目で見つめていた。

「ぷはぁーっ。とりあえず、飲んだぞっ、ハルコン!」

「飲みましたね。うふふふっ!」

 ハルコンが笑顔を浮かべると、シルファー先輩はギョッとした表情を浮かべた。

「まさか、……ハルコン!?」

 少しだけ心配そうに、こちらを見てくるシルファー先輩。

「シルファー先輩も、お飲みになります? この『タイプB』は、私の普段の飲み用に麦芽糖と果物の果汁を入れてますから。結構イケますよ!」

「えっ!?」

 ハルコンの言葉に、半信半疑な表情をするシルファー先輩。

「ハルコンッ! この飲み薬は、とても美味いなっ!」

「でしょう!」

 明るい笑顔で、寮長が話しかけてくる。
 その顔色は先程までの青白さがどこかに消え、目の下のクマもなくなって、血色のいい健康さに溢れている。

「えっ!?」

「殿下、これは大変素晴らしいものですな。私は連日の会議で胃が弱って痛み出していたのですが、それもきれいさっぱり収まりましたぞ!」

 突然の寮長の体質改善に、シルファー先輩は大いに戸惑っている感じ。

 まぁそうだろう、そうだろう。
 私もこれを初めて体験して以来、常備薬として毎日欠かさず飲んでいたからね、とハルコンは思う。

 前世の研究者時代、私は一日28時間働いて、2時間だけ寝たら、この「タイプB」にお世話になっていたんだ。

 その結果、気力体力共にスッキリ。
 とにかく、そんな生活を数年間続けたおかげで、私は「タイプA」の開発にまで漕ぎ着けたんだ。

 だから、ホンと「タイプB」にはお世話になりっ放しだよ、とハルコンは心の中でニッコリと笑う。

「ハルコン、私も飲みます! 用意して貰えますか?」

「はいっ!」

 ふふっ、計画どおり。
 これでこちらの世界でも、「タイプB」信者、2名の出来上がりだね。
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