天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

27 隣国の姫君の回復_01

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 しばらくの間、ハルコンは女エルフの視野を借りながら、隣国の姫君の様子を窺った。

 すると、姫君は自らの体内に沸き立つパワーに心が躍ったのか、ベッドから起き上がって、床に立ち上がった。

 そのまま数歩先まで歩くと、ふらりとしたところで父君の皇帝陛下に、しっかりと抱き締められている。
 本人だけでなく、皇帝陛下も傍に仕える侍従や侍女達も、皆、目に涙を浮かべている。

 そろそろ、……かな?
 ハルコンは、さっそく女エルフに念話を送った。

「女エルフさん、そちらの様子はどんな具合でしょうか?」

『はい。私の見たところ、お持ちした薬剤が姫様に大変効果があったように思われます』

「そうですね。それは良かった!」

『はい。さすがはハルコン様のお作りになられた薬剤です。我が目を疑う程の薬効に、驚かざるを得ません!』

「ハハハッ。買い被り過ぎですよ」

『いいえ。さすがは我らの崇拝する「神の御使い」ハルコン様です。今後とも、我ら人類にお慈悲を賜らんことを!』

「タハハ、……持ち上げ過ぎです!」

 どうやら、栄養剤と軽度の回復薬である「タイプB」だけで、今回のケースは上手くいったようだ。
 だが、今回の場合次第では、試したい施術があったとハルコンは考えている。

 おそらく、数日中に仙薬エリクサー「タイプA」が完成する。
 それは、……まさに命がけで生み出した奇跡の薬剤だ。

 以前なら、この仙薬エリクサー「タイプA」を「タイプB」と同様に飲み薬として開発しようとハルコンは計画していた。
 だが、今はもうスーパーチートスキル「マジックハンド」がある。

 このスキルで何が凄いかといえば、NPCが触れる物質を、こちらまで転送できることだ。
 その際、触れた物体に対し、「任意」で細部に至る物質を選択して、転送することが可能なのだ。

 例えば、NPCが癌患者の身体に触れると、私の脳内にはその患部の正確なイメージが伝わってくる。
 その際に患部のみを選択、摘出して転送させることが可能なんだよね。

 早朝、女エルフがニジマスを捕っているところを利用して、試しに臓物と血液をピンポイントで転送させることにも成功しているよ。

 地球の現在の科学レベルでは到達しようのない、……まさに神のみの為せる技だよね。

 今回の姫君の件では、手術が必要な場合も想定していた。

 女エルフの手を借りて、先ず姫君の症状を悪化させる患部の摘出。
 その後、完成したばかりの「タイプA」をこちらから転送して、患部を取り除いたポイントに直接塗布し続ける。

 前世の晴子の時代、私は研究の協力者だった医官達と雑談をよくしたものだ。
 その際に話題に上がったのは、こんな具合に切らない施術があったらいいのにねぇといったものだった。

 なるほどねぇ。今の私は、そんな神域にまで到達しつつあるんだなぁと、……ハルコンはしみじみ思った。
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