天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

35 王立学校祭 その2_09

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 正午間もなくということもあり、臨時の食事会場はほぼほぼ満席状態だった。
 利用者の多くが、最近王都で流行の「弁当」持参で、箱の中を様々に彩っている様子だ。

「ねぇ~っ、何だかかなり混んでいるねぇ!」

「そうですね、姉様。時間がバッティングしちゃったみたいですね」

 サリナ姉の言葉に、ハルコンが相槌を打つ。
 両殿下とミラは先程からず~っとフラワーアレンジメントの話で盛り上がっており、ステラ殿下が、「絶対国に帰ったら、向こうでも流行らせますから」と力説されているのが窺えた。

「……、どうしますかねぇ。混んでますから、時間を改めて後できますかねぇ?」

 ハルコンがそんな感じでサリナ姉の言葉に応じていると、「おぉ~いっ、こっち、こっちぃ~っ!」という声が、会場席の奥の方から聞こえてくる。
 見ると、立ち上がってこっちに向けて手を振ってくるケイザン兄がいた。

「ハルコン、奥の席が空いているみたい。皆さん、向こうまでいきましょ!」

 サリナ姉がそう言うと、両殿下とミラが揃って、「「「はぁ~い。サリナ姉様ぁ!」」」と、にこやかに微笑んだ。

「くっ!?」

 思わずひるんでしまった。

 だって、3人は普段私がサリナ姉様に接するのを真似して、返事しているんだからね。
 それも、声色、トーン、表情の具合、仕草に至るまで、そっくりそのまま真似してくるんだよ。

 すると、サリナ姉様も慣れたもんでさ。

「おほっ、ハルコンが一度に3人も増えたみたい! いいわよっ、ハルコン共! このサリナ姉様についてらっしゃい!」

 そんな感じで年の功なのか、いつもよりも3倍姉上っぽく気さくに応じている。

「「「はぁ~い!」」」

 姉の対応に、一瞬目を丸くされたシルファー先輩達だが、嬉しそうに皆ニッコリだ。
 ホンと、姉上はとてもいい意味で「お姉ちゃん」しているよなぁと、ハルコンは思った。

「おぉ~いっ、サリナァ。こっち、こっちぃ~っ!」

「ありがとう、ケイザン兄様。わざわざ私達のために席を取っておいてくれたの?」

 席に着きながらニコリと微笑むサリナ姉に、ケイザン兄はひとつ頷く。

「先程まで運営委員会の人達と、午後の演武大会の件で話し合っていたんだ。オマエんところも相当盛り上がっていたんだろ?」

「えぇ、……、まぁ」

 姉は、謙遜して曖昧に返事をしている。

「ボクらのサークルも注目されていてね。イメルダのサークルとの合同開催の話が、王宮に届いていたそうで、武芸に秀でていらっしゃる第一王子が、観覧されることが急遽決まったんだ!」

 そう誇らしげに語るケイザン兄様。
 しばらく前まで「弱者連合」と揶揄されていただけあり、今の状況を非常に満足しているのだろうと、ハルコンは思った。

 ちらりとシルファー先輩を見ると、同じタイミングで彼女もこちらをじっと見てきた。

「ハルコン。あなたは演武大会に参加しないの?」

「えっ!?」

「だって、あなたが創始者なんでしょ? セイントーク流合気術って」

「えぇ、まぁ」

 先輩はさも不思議そうに小首を傾げながら、こうお訊ねになられるので、こちらも曖昧に頷く。何やら、話が噛み合わない感じなのだが、気のせいか?

「兄上は、あなたのことを見に、先日帰国されているのよ。だから、あなたも午後の大会、必ず参加しなさい!」

 ロイヤルな、……有無を言わさぬ命令。先輩はとても優しくいいお方だが、たまにロイヤルな振る舞いを天然でされることがある。

 私は今や子爵の身。王族の命令には逆らえないし、またシルファー先輩の期待にこたえたいのも正直なところだ。

「ワカりました」

 そう言って笑うと、兄姉様やステラ殿下もニッコリ笑った。
 ミラだけは、こちらのことを思ったか、少し冴えない表情を浮かべて乳飲料を飲んでいた。
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