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第一部「ハルコン少年期」
37 研究所の長い一日_20
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* *
ハルコン達が再び王立研究所に戻ってくると、そろそろ正午を迎える頃になっていた。
季節は夏らしく、とても暑い。
だが、研究所内にはセイントーク領で開発した冷暖房設備が完備しているため、所内はひんやりと過ごし易かった。
「カルソン教授、そろそろ昼ですが、これから何か予定はありますかね?」
「えぇ、特には。何か用事でもありましたか?」
「なら、昼御飯を一緒に食べましょう! 週明けから、私はサスパニアに出張の用事がありますので、その打ち合わせを兼ねたいと思いまして、……」
こちらの言葉にカルソン教授は納得したのか、「ワカりました」といって、笑顔で頷いてくれた。
「なるほど。では、先ほどのサスパニアの隊商達の件と、タイミングが合いますね?」
「えぇ、そうなんです。できれば、隊商の人達がインフルエンザに感染したとされる沼地に向かい、現地調査もしたいところですね」
「ワカりました」
カルソン教授は、基本ハルコンの言葉に反論することはない。
細かいところで確認の意味で訊ね返すことはあっても、大体は「ワカりました」といって、同意することがほとんどだ。
「とりあえず、私の不在期間中の研究所の指揮を、カルソン教授、あなたにお願いしたいのですが、……。やって頂けますか?」
「はい。所長の長期不在は初めてですが、こちらで上手く対処しておきます。先日の各プロジェクト会議で、進捗具合も順調でしたから、そこはお任せ下さい!」
「ありがとうございます」
まぁ、快諾と言っていいのかな。これで、研究所の留守を安心して任せられるね。
こちらがニッコリと笑顔で伝えたら、普段気難しい様子のカルソン教授も、笑顔で話してくれる。
教授は私の直接的な部下ではないにも拘らず、実質的に運営の責任者を兼務して貰っているんだ。
私は王立研究所の所長を務めてはいるけれど、正式な身分は、まだ王立学校の学生のままなんだよね。
昼の間はクラスメイト達と学校で過ごし、夕方からは大人達に囲まれながら所長を務めている。
二足の草鞋を履くこんな生活が可能なのは、間違いなくカルソン教授のおかげだし、その采配の素晴らしさにあると思うんだ。
食堂に2人で入り、昼定食を載せたトレイを持って、窓際の席に向かった。
窓の外からは、現在着工中の建物が見え、多くの獣人達がその建設現場で汗を流しながら働いている様子が窺えた。
「最近、王都でも獣人の労働者の数が、目に見えて増えてきましたね?」
「そうですね、……。教授は、獣人の皆さんが苦手ですか?」
ハルコンは目を落としたまま、白パンの千切ったものをスープに浸けて訊ねた。
「いぇ、……ただ、王都ではこれまでヒューマンが主にする仕事にも、獣人が就くことも珍しくないようです。所内の新規の建設現場でも、監督官の中に獣人の者が数名いるようです」
「なるほど、……」
そう言えば、……とハルコンは思う。以前、セイントーク領内でも、獣人ネットワークを駆使して、新たに職業斡旋所を始めたんだよなぁ。
その代表を務めていたのが、NPCの元女盗賊さん。ここ最近は定例会議を開いていないけど、今頃どうしているのかなぁ、……とハルコンは思った。
すると、……。向こうで、身軽な服装をした妙齢の女性が、獣人の人足頭と立ち話をしているのが見えた。
あれっ? あの女性って、もしかして!?
向こうの女性の方もこちらに気付くと、直ぐさま窓際まで駆け寄ってきた。
ハルコン達が再び王立研究所に戻ってくると、そろそろ正午を迎える頃になっていた。
季節は夏らしく、とても暑い。
だが、研究所内にはセイントーク領で開発した冷暖房設備が完備しているため、所内はひんやりと過ごし易かった。
「カルソン教授、そろそろ昼ですが、これから何か予定はありますかね?」
「えぇ、特には。何か用事でもありましたか?」
「なら、昼御飯を一緒に食べましょう! 週明けから、私はサスパニアに出張の用事がありますので、その打ち合わせを兼ねたいと思いまして、……」
こちらの言葉にカルソン教授は納得したのか、「ワカりました」といって、笑顔で頷いてくれた。
「なるほど。では、先ほどのサスパニアの隊商達の件と、タイミングが合いますね?」
「えぇ、そうなんです。できれば、隊商の人達がインフルエンザに感染したとされる沼地に向かい、現地調査もしたいところですね」
「ワカりました」
カルソン教授は、基本ハルコンの言葉に反論することはない。
細かいところで確認の意味で訊ね返すことはあっても、大体は「ワカりました」といって、同意することがほとんどだ。
「とりあえず、私の不在期間中の研究所の指揮を、カルソン教授、あなたにお願いしたいのですが、……。やって頂けますか?」
「はい。所長の長期不在は初めてですが、こちらで上手く対処しておきます。先日の各プロジェクト会議で、進捗具合も順調でしたから、そこはお任せ下さい!」
「ありがとうございます」
まぁ、快諾と言っていいのかな。これで、研究所の留守を安心して任せられるね。
こちらがニッコリと笑顔で伝えたら、普段気難しい様子のカルソン教授も、笑顔で話してくれる。
教授は私の直接的な部下ではないにも拘らず、実質的に運営の責任者を兼務して貰っているんだ。
私は王立研究所の所長を務めてはいるけれど、正式な身分は、まだ王立学校の学生のままなんだよね。
昼の間はクラスメイト達と学校で過ごし、夕方からは大人達に囲まれながら所長を務めている。
二足の草鞋を履くこんな生活が可能なのは、間違いなくカルソン教授のおかげだし、その采配の素晴らしさにあると思うんだ。
食堂に2人で入り、昼定食を載せたトレイを持って、窓際の席に向かった。
窓の外からは、現在着工中の建物が見え、多くの獣人達がその建設現場で汗を流しながら働いている様子が窺えた。
「最近、王都でも獣人の労働者の数が、目に見えて増えてきましたね?」
「そうですね、……。教授は、獣人の皆さんが苦手ですか?」
ハルコンは目を落としたまま、白パンの千切ったものをスープに浸けて訊ねた。
「いぇ、……ただ、王都ではこれまでヒューマンが主にする仕事にも、獣人が就くことも珍しくないようです。所内の新規の建設現場でも、監督官の中に獣人の者が数名いるようです」
「なるほど、……」
そう言えば、……とハルコンは思う。以前、セイントーク領内でも、獣人ネットワークを駆使して、新たに職業斡旋所を始めたんだよなぁ。
その代表を務めていたのが、NPCの元女盗賊さん。ここ最近は定例会議を開いていないけど、今頃どうしているのかなぁ、……とハルコンは思った。
すると、……。向こうで、身軽な服装をした妙齢の女性が、獣人の人足頭と立ち話をしているのが見えた。
あれっ? あの女性って、もしかして!?
向こうの女性の方もこちらに気付くと、直ぐさま窓際まで駆け寄ってきた。
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