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第一部「ハルコン少年期」
37 研究所の長い一日_22
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* *
「なるほど、女盗賊さんもついに王都に進出ですか?」
「えぇ、そうでやす。王都は今、空前の開発ラッシュ? でやしてな。アタイば事務所にお声がけを頂きやして、……。領では、ここしばらくをば、手すき(仕事が減っていること)なものゆえ、応援をばきたところでやす。まんず、ば3次下請けってヤツばいな!」
なるほど。通常の工事の業者なら、申請書類で女盗賊さんが入所したとワカったはずだ。
でも、3次下請けだと、書類で通していなかったことも、「突発」ならあり得るか。
とりあえず、今度からはもう少し、提出された書類をちゃんと精査する必要があるかもなぁとハルコンは思った。
「そうでしたか。では、しばらくの間、王都にいらっしゃるのですか?」
「あぃ」
そう返事をして、女盗賊はメスの牙狼がニッコリと微笑むような、柔和な表情で頷いた。
ハルコンは彼女の変わらない笑顔に、久しぶりの再会に心穏やかな気持ちになった。
訊くと、今は丁度昼休憩の時間とのことなので、彼女を研究所の食堂まで連れてゆき、セイントーク領の話などをいろいろ聞くことができた。
どうやら、再開発も順調に進み、そろそろひと休みの頃合いに入ってきているように窺えた。
「それにつけても、ハルコン殿。大変出世をばなされたのやすな。この広い研究所の所長をされてると伺いやして、おったまげたでやす!」
「ははは、ありがとうございます。私なんてまだまだ子供ですから。あくまでお飾りだと思っていますよ!」
「そ、そんなことねぇでやす。ハルコン殿は、今や子爵の大貴族でやす! 以前頂いた貴重な仙薬A? でやしたか、……ウチの若い衆がへまをやりやして、大ケガをばしとったんだすが、あのお薬をば飲み申すて、息を吹き返したばい。げにまっこと、感謝申す上げるとでやす!」
「それはよかったです。あの薬は、もう直ぐ量産体制ができそうなんです。先行して、女盗賊さんのところにも、何ケースか後で送っておきますね!」
「誠に感謝でやす」
そう言って、女盗賊は深々と頭を下げた。
そのタイミングで、同席していたカルソン教授が、こちらにアイコンタクトをしてきた。
「失礼、ハルコン所長。こちらの女性の方は、お話を伺うと、今でも盗賊稼業をされてらっしゃるのですか?」
「いいえ、カルソン教授。この方は、今は従業員をたくさん抱えた、立派な実業家なんですよ。ですから女盗賊さんというよりも、元女盗賊さんの方がしっくりくるかもしれませんね」
「ふひひ、元でもどちらでも、よか方で構わんとだす!」
切れ長の大きな目を細め、笑顔で教授を見つめる女盗賊。
一見すると柔和なそれだが、鋭利なナイフのような凄みが、少しも隠しきれていない。
カルソン教授も笑顔のまま「ゴクリ」と唾を飲むと、その音がハルコンの耳にまで届いてきた。
あぁ、なるほど。見る人が見れば、女盗賊さんの凄みがちゃんとワカるんだね、とハルコンは思った。
「では、所長。この度の移動の件、こちらの元女盗賊さんに護衛の依頼をかけたら如何でしょう? 以前、赤ん坊の頃の所長を救出した話とかも伺っておりますし、とても信頼に足る人物とお見受けします」
「なるほど。女盗賊さん、今後の予定はどうなっておりますか?」
「ん~っ? アタイば、獣人の人足をば現場に届けたら、後はフリーだす。このままぶらぶらと王都観光をばせた後、セイントーク領に戻る予定でおりましたでやす」
「それならば、如何でしょう? 私は週明けにサスパニアまで出張に向かうのですが、護衛依頼をかけてもよろしいでしょうか?」
「ん~っ?」
そう言って、女盗賊は首を捻って、しばし考えた様子だ。
彼女は私が昔大変世話になった人だし、セイントーク領発展に大いに貢献した、今や地元の名士の一人だ。この話を引き受けてくれたら、ホンとありがたいんだけどなぁ、……と、ハルコンは思った。
「よかよ!」
元女盗賊の名士様は、事もなげにニッコリと快諾してくれた。
「なるほど、女盗賊さんもついに王都に進出ですか?」
「えぇ、そうでやす。王都は今、空前の開発ラッシュ? でやしてな。アタイば事務所にお声がけを頂きやして、……。領では、ここしばらくをば、手すき(仕事が減っていること)なものゆえ、応援をばきたところでやす。まんず、ば3次下請けってヤツばいな!」
なるほど。通常の工事の業者なら、申請書類で女盗賊さんが入所したとワカったはずだ。
でも、3次下請けだと、書類で通していなかったことも、「突発」ならあり得るか。
とりあえず、今度からはもう少し、提出された書類をちゃんと精査する必要があるかもなぁとハルコンは思った。
「そうでしたか。では、しばらくの間、王都にいらっしゃるのですか?」
「あぃ」
そう返事をして、女盗賊はメスの牙狼がニッコリと微笑むような、柔和な表情で頷いた。
ハルコンは彼女の変わらない笑顔に、久しぶりの再会に心穏やかな気持ちになった。
訊くと、今は丁度昼休憩の時間とのことなので、彼女を研究所の食堂まで連れてゆき、セイントーク領の話などをいろいろ聞くことができた。
どうやら、再開発も順調に進み、そろそろひと休みの頃合いに入ってきているように窺えた。
「それにつけても、ハルコン殿。大変出世をばなされたのやすな。この広い研究所の所長をされてると伺いやして、おったまげたでやす!」
「ははは、ありがとうございます。私なんてまだまだ子供ですから。あくまでお飾りだと思っていますよ!」
「そ、そんなことねぇでやす。ハルコン殿は、今や子爵の大貴族でやす! 以前頂いた貴重な仙薬A? でやしたか、……ウチの若い衆がへまをやりやして、大ケガをばしとったんだすが、あのお薬をば飲み申すて、息を吹き返したばい。げにまっこと、感謝申す上げるとでやす!」
「それはよかったです。あの薬は、もう直ぐ量産体制ができそうなんです。先行して、女盗賊さんのところにも、何ケースか後で送っておきますね!」
「誠に感謝でやす」
そう言って、女盗賊は深々と頭を下げた。
そのタイミングで、同席していたカルソン教授が、こちらにアイコンタクトをしてきた。
「失礼、ハルコン所長。こちらの女性の方は、お話を伺うと、今でも盗賊稼業をされてらっしゃるのですか?」
「いいえ、カルソン教授。この方は、今は従業員をたくさん抱えた、立派な実業家なんですよ。ですから女盗賊さんというよりも、元女盗賊さんの方がしっくりくるかもしれませんね」
「ふひひ、元でもどちらでも、よか方で構わんとだす!」
切れ長の大きな目を細め、笑顔で教授を見つめる女盗賊。
一見すると柔和なそれだが、鋭利なナイフのような凄みが、少しも隠しきれていない。
カルソン教授も笑顔のまま「ゴクリ」と唾を飲むと、その音がハルコンの耳にまで届いてきた。
あぁ、なるほど。見る人が見れば、女盗賊さんの凄みがちゃんとワカるんだね、とハルコンは思った。
「では、所長。この度の移動の件、こちらの元女盗賊さんに護衛の依頼をかけたら如何でしょう? 以前、赤ん坊の頃の所長を救出した話とかも伺っておりますし、とても信頼に足る人物とお見受けします」
「なるほど。女盗賊さん、今後の予定はどうなっておりますか?」
「ん~っ? アタイば、獣人の人足をば現場に届けたら、後はフリーだす。このままぶらぶらと王都観光をばせた後、セイントーク領に戻る予定でおりましたでやす」
「それならば、如何でしょう? 私は週明けにサスパニアまで出張に向かうのですが、護衛依頼をかけてもよろしいでしょうか?」
「ん~っ?」
そう言って、女盗賊は首を捻って、しばし考えた様子だ。
彼女は私が昔大変世話になった人だし、セイントーク領発展に大いに貢献した、今や地元の名士の一人だ。この話を引き受けてくれたら、ホンとありがたいんだけどなぁ、……と、ハルコンは思った。
「よかよ!」
元女盗賊の名士様は、事もなげにニッコリと快諾してくれた。
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