378 / 508
第一部「ハルコン少年期」
41 サスパニア出張旅行 その4_15
しおりを挟む
* *
「ふひひ、ハルコン殿がものをば知らんとなら、アタイなんてゆぅまでもなかよ!」
そう言いながら、元女盗賊さんは「生」エールのジョッキに口を付けて、グビリグビリと数回喉を鳴らした。
とても美味そうに飲むその仕草に、何だろう、……ハルコンも思わずゴクリと喉を鳴らした。
「へぇーいっ、追加の料理お持ちしましたぁーっ!」
やったら威勢のいい声と共に、赤ら顔の青年の店員が室内に勢いよく入ってきた。
見ると、その両手にはそれぞれ料理の載った皿を数点ずつ持ち、次々とテーブルの上に音もなく並べていくのだ。
「うっほぉ、美味そうでやんすな! 兄さん、こりば鶏の唐揚げっちゃね?」
もろ手を叩きながら興味津々に訊ねる元女盗賊さんに、青年の店員はニコリと微笑む。
実際の話、まだファイルド国の王都では、鶏の唐揚げはそれほど普及していないと思う。
現代地球のようにブロイラーが普及していないこの世界では、鶏は卵を取るための、とても貴重な家畜だ。
身の肥えた野鳥などというものが、そもそも存在していないんだ。
だから、目の前の皿の上に載ったふくふくとした鳥肉は、おそらく農家の庭先で栄養たっぷりに育てた鶏のものなんだろうなぁと、ハルコンの目には映っていた。
「実はですね、ここだけの話なんですが、……。エドモンドの近郊では、国の管理の下、鶏の大規模飼育が進められているんです!」
「ほへぇ~っ!?」
「安価な鶏肉のおかげで、ここ首都エドモンドでは、皆安心して暮らしていけるんです!」
「そりは、よかでやんすな!」
そう言って、お互いにニッコリと笑い合う店員と元女盗賊さん。
だけど、……まさかなぁ。しかも、ここは小国サスパニアだよ。
まさか、こんなへき地でさ。カロリーベースでの食料自給率達成の話を聞かされるのなんて、全く予想すらしなかったよ。
ハルコンはそんなことを思いながら、ちらりと元女盗賊さんの顔色を窺ったところ、……。
すると、彼女もその辺は慣れたもんでさ。
こちらの表情にピンときたのか、ニコリと笑ってから、小さくひとつ頷いてみせたんだ。
「……、とにかくウチの店では、鶏料理がホンとお薦めなんですよ!」
「ふむふむ、そりはいいでやすな!」
熱心に語る店員を、笑顔だけど目は少しも笑うことなく見つめている元女盗賊さん。
さっそく、次のようにさりげなく話を促してくれた。
「ねぇ、……やっぱ、お偉いさん方がしっかりしてるば、民もよかでやんすな!」
「えぇ、全く。ホンとイッシャラー(石原寛斎のこと)様々ですよ!」
「げにまっこと、そうでやんすな!」
元女盗賊さんは笑顔でうんうんと頷きながら、その若い店員の為政者に対する熱量がどれほどのものなのか、……静かに探りを入れ始めていた。
「ふひひ、ハルコン殿がものをば知らんとなら、アタイなんてゆぅまでもなかよ!」
そう言いながら、元女盗賊さんは「生」エールのジョッキに口を付けて、グビリグビリと数回喉を鳴らした。
とても美味そうに飲むその仕草に、何だろう、……ハルコンも思わずゴクリと喉を鳴らした。
「へぇーいっ、追加の料理お持ちしましたぁーっ!」
やったら威勢のいい声と共に、赤ら顔の青年の店員が室内に勢いよく入ってきた。
見ると、その両手にはそれぞれ料理の載った皿を数点ずつ持ち、次々とテーブルの上に音もなく並べていくのだ。
「うっほぉ、美味そうでやんすな! 兄さん、こりば鶏の唐揚げっちゃね?」
もろ手を叩きながら興味津々に訊ねる元女盗賊さんに、青年の店員はニコリと微笑む。
実際の話、まだファイルド国の王都では、鶏の唐揚げはそれほど普及していないと思う。
現代地球のようにブロイラーが普及していないこの世界では、鶏は卵を取るための、とても貴重な家畜だ。
身の肥えた野鳥などというものが、そもそも存在していないんだ。
だから、目の前の皿の上に載ったふくふくとした鳥肉は、おそらく農家の庭先で栄養たっぷりに育てた鶏のものなんだろうなぁと、ハルコンの目には映っていた。
「実はですね、ここだけの話なんですが、……。エドモンドの近郊では、国の管理の下、鶏の大規模飼育が進められているんです!」
「ほへぇ~っ!?」
「安価な鶏肉のおかげで、ここ首都エドモンドでは、皆安心して暮らしていけるんです!」
「そりは、よかでやんすな!」
そう言って、お互いにニッコリと笑い合う店員と元女盗賊さん。
だけど、……まさかなぁ。しかも、ここは小国サスパニアだよ。
まさか、こんなへき地でさ。カロリーベースでの食料自給率達成の話を聞かされるのなんて、全く予想すらしなかったよ。
ハルコンはそんなことを思いながら、ちらりと元女盗賊さんの顔色を窺ったところ、……。
すると、彼女もその辺は慣れたもんでさ。
こちらの表情にピンときたのか、ニコリと笑ってから、小さくひとつ頷いてみせたんだ。
「……、とにかくウチの店では、鶏料理がホンとお薦めなんですよ!」
「ふむふむ、そりはいいでやすな!」
熱心に語る店員を、笑顔だけど目は少しも笑うことなく見つめている元女盗賊さん。
さっそく、次のようにさりげなく話を促してくれた。
「ねぇ、……やっぱ、お偉いさん方がしっかりしてるば、民もよかでやんすな!」
「えぇ、全く。ホンとイッシャラー(石原寛斎のこと)様々ですよ!」
「げにまっこと、そうでやんすな!」
元女盗賊さんは笑顔でうんうんと頷きながら、その若い店員の為政者に対する熱量がどれほどのものなのか、……静かに探りを入れ始めていた。
46
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる