天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

42 サスパニア出張旅行 その5_15

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   *          *

「ねぇ、どうしたでやすか?」

 元女盗賊さんは、私(ハルコン)をちらりと見た後にひとつ頷くと、……。とても親しげというか、気さくというか、そんな調子で、その元工兵の青年に話しかけていた。

 すると、青年はいつの間にか耳まで真っ赤にして、体を屈めながらプイッとそっぽを向いてしまったのだ。

「ねぇ、ねぇ、……どうしたでやすか? 女ば声かけちゅるに、そったらそっぽ向くば、ホンになかでやすよ!」

 なるほど。戦前の元日本人だ。現代人の私からしてみたら、女に免疫のない男など掃いて捨てるほどいるのだろう。

 その辺の男心の隙を突くように、元女盗賊さんは執拗に、……。揶揄い半分のような表情を浮かべながら、こっぴどく問い詰めているのだ。

 そう言えば、そんな女子って、……。私の周りには、あまり寄り付いてこなかったなぁ。

 まぁ、そんな子達と前世の私に接点がなかったのも、それはもしかすると、女神様の思し召しだったのかもしれないし、……。

 今更、前世に体験できなかった感覚を、これから取り戻そうと思っても、もう遅いのかもしれないんだけどさ。

 とにかく、今の私、ハルコン・セイントーク少年こそが、私の本当の姿。
 それは、仮初(かりそめ)の姿ではない。これから数10年先までず~っと続く、私にとってとても大切な本体なんだね。

 私は、ちらりと石原中佐さんの方を見た。
 すると、彼はこのタイミングを逃すべくもなく、……。小水戸中尉と、ひそひそと何か小声で話し合っている。

 おそらく、何らかの口裏合わせをしているつもりだろうが、あいにく私は見逃すほど愚かではないのだよ。

「石原中佐さん。あなた方がいつまでも『フラワーインフルエンザ』をばら撒かれたことを否定されるのなら、……こちらにも考えがあります!」

 私はそう言って、気持ちを落ち着かせながら、別の小瓶をひとつテーブルの上に置いた。

 それは、コトリという音がして、……。
 石原中佐と小水戸中尉の視線が、じっと注がれる。

「ハルコン殿。一体、……これは何なのですかね?」

「先日、サスパニアの隊商のメンバーの一人から抽出した、とある『病原体』が入っています。あなた方のばら撒かれた『フラワーインフルエンザ』に、その渡り鳥は二次感染していたのでしょう!」

「……」

「その体内で『鳥インフルエンザ』に変異し、更には人間にも被害を及ぼしていたんですね!」

「ハルコン殿、……冗談は止して頂けないか!」

「いいえ、石原中佐さん。私達は本気ですよ! これは脅しではない。私達に刃を向けたらどうなるか? その警告と捉えて貰って構いませんよ!」

 私はそう言って、じろりと石原中佐さんを睨んでいた。
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