天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
410 / 595
第一部「ハルコン少年期」

43 サスパニア出張旅行 その6_10

   *          *

「『半次郎』さん。私(ハルコン)はね、人間がこうしてこの世に生を受けたことには、必ず理由があると思っています。そのことを、あなたもおワカりになりますか?」

「……」

 私がそう訊ねても、その「半次郎」さんは微動だにしない。生きてはいるのだろう。だが、それは死んでいないだけだ。
 おそらく、それは運命によって齎された深い絶望が、彼にそうさせているのだろう。

「私達の命は、とても尊いものです。それは、おワカりになりますか?」

「……」

 そもそも「暗部」の者に、道徳を説いてもあまり意味がないのかもしれない。
 でも、私が次にこう述べたら、「半次郎」さんの瞳に一瞬だけ揺らぎが見えた。

「私達はね、神様から命を借りて生きています。だから精一杯生きて、最後に珠玉となった命をお返しすることで、私達の魂は磨かれていきます」

「……」

「命はね、一度尽きてもまた次があるんですよ!」

「……」

 すると、……「半次郎」さんは、私の言葉に何か思い当たることがあったのか、……。

「何しろ、私は女神様から7つの命を授かったのですよ。全部使い切るだけでも大変なのに、今の私はそれらを一度にまとめて使って生きているんです。だから、寝る間も惜しいくらい、今がとても充実しているんですよ!」

「……」

 漸くその瞳に、……ホンの少しだけど、薄い膜のような光が宿ったように私には思えた。

 そう思ったら、即断即決が私の信条だよ!
 私は真っ直ぐに石原中佐さんに首を向けたら、相手は目を見開いて私の顔をじっと見た。

「さすがですな、ハルコン殿っ! 我々がこれまで何を言っても反応を示さなかった者が、今、こうして意識を取り戻そうとしている。誠に以て、驚くべきことだ!」

「石原中佐さん。彼は今生きようとしています。この場は、私に託して頂けませんか?」

「えぇ、ぜひっ! お願いいたします!」

「了解です! 任せて下さいっ!」

 私はそう返事をするや、ハルコンAの小瓶を手に取って蓋を開けた。
 ガラスの小瓶はキュポンと音を立て、そのまま原液を何ら薄めることなく半次郎さんの口元に流し込んだ。

 すると、しばらくして包帯の隙間から白い湯気がもうもうと立ち込めてきた。

「ハルコン殿、……。これは、大丈夫なのだろうか?」

「えぇ、問題ありません。もの凄い勢いで、今、細胞レベルで新陳代謝が行われているんです。もうしばらくお待ち下さいね!」

「え、えぇ、……」

 それから20分ほどの間、私と石原中佐さんは今後の両国の関係について、引き続き話し合った。

「……。では、我々も貰ってばかりでは申しワケありませんからな。ここはハルコン殿がお望みのものを用意できたらと思います。何か、お探しのものでもありませんか?」

「そうですねぇ、……。差し当たって必要なものは、こちらで大体用意できているんですよ。現在、我が国では『善隣外交』を推し進めておりますので、貴国サスパニアと先ずは公式の外交ルートを築かせて頂ければと思います!」

「ハルコン殿、国を代表して感謝申し上げる。今後、貴殿には足を向けて眠れませんな?」

「ふふっ、私も久しぶりに日本の人とこうして話ができて、とても楽しかったです。両国で協力して、お互いドンドン発展していきましょう!」

 私が上機嫌でこう言ったところ、……。石原中佐さんは、「実はですな、ハルコン殿。その件について、折り入ってご相談がありましてな!」と、何やら提案をしてきたのだ。

「えぇ、伺いましょう! どういったご用件ですか?」

 すると、車椅子の方から「うぅ~ん!」という若いかわいらしい女性の声と共に、腕を上方に伸ばす気配がした。

 どうやら、「半次郎」さんがお目覚めのようだけど、……。
 んっ!? 何だろう、……。若干の違和感がする。

 その「半次郎」さんが車椅子から立ち上がると、……。全身を覆っていた包帯が、スルスルと音を立てて絨毯の上に落ちていった。

「おっ! やはり『半次郎』殿ば、『女』でやしたか!」

「えっ!?」

 元女盗賊さんの見立てのとおり、まさかのまさか、「半次郎」さんは「女」だった。
 それも若くて、飛び切りかわいい部類の、……。
感想 7

あなたにおすすめの小説

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』