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第一部「ハルコン少年期」
43 サスパニア出張旅行 その6_10
* *
「『半次郎』さん。私(ハルコン)はね、人間がこうしてこの世に生を受けたことには、必ず理由があると思っています。そのことを、あなたもおワカりになりますか?」
「……」
私がそう訊ねても、その「半次郎」さんは微動だにしない。生きてはいるのだろう。だが、それは死んでいないだけだ。
おそらく、それは運命によって齎された深い絶望が、彼にそうさせているのだろう。
「私達の命は、とても尊いものです。それは、おワカりになりますか?」
「……」
そもそも「暗部」の者に、道徳を説いてもあまり意味がないのかもしれない。
でも、私が次にこう述べたら、「半次郎」さんの瞳に一瞬だけ揺らぎが見えた。
「私達はね、神様から命を借りて生きています。だから精一杯生きて、最後に珠玉となった命をお返しすることで、私達の魂は磨かれていきます」
「……」
「命はね、一度尽きてもまた次があるんですよ!」
「……」
すると、……「半次郎」さんは、私の言葉に何か思い当たることがあったのか、……。
「何しろ、私は女神様から7つの命を授かったのですよ。全部使い切るだけでも大変なのに、今の私はそれらを一度にまとめて使って生きているんです。だから、寝る間も惜しいくらい、今がとても充実しているんですよ!」
「……」
漸くその瞳に、……ホンの少しだけど、薄い膜のような光が宿ったように私には思えた。
そう思ったら、即断即決が私の信条だよ!
私は真っ直ぐに石原中佐さんに首を向けたら、相手は目を見開いて私の顔をじっと見た。
「さすがですな、ハルコン殿っ! 我々がこれまで何を言っても反応を示さなかった者が、今、こうして意識を取り戻そうとしている。誠に以て、驚くべきことだ!」
「石原中佐さん。彼は今生きようとしています。この場は、私に託して頂けませんか?」
「えぇ、ぜひっ! お願いいたします!」
「了解です! 任せて下さいっ!」
私はそう返事をするや、ハルコンAの小瓶を手に取って蓋を開けた。
ガラスの小瓶はキュポンと音を立て、そのまま原液を何ら薄めることなく半次郎さんの口元に流し込んだ。
すると、しばらくして包帯の隙間から白い湯気がもうもうと立ち込めてきた。
「ハルコン殿、……。これは、大丈夫なのだろうか?」
「えぇ、問題ありません。もの凄い勢いで、今、細胞レベルで新陳代謝が行われているんです。もうしばらくお待ち下さいね!」
「え、えぇ、……」
それから20分ほどの間、私と石原中佐さんは今後の両国の関係について、引き続き話し合った。
「……。では、我々も貰ってばかりでは申しワケありませんからな。ここはハルコン殿がお望みのものを用意できたらと思います。何か、お探しのものでもありませんか?」
「そうですねぇ、……。差し当たって必要なものは、こちらで大体用意できているんですよ。現在、我が国では『善隣外交』を推し進めておりますので、貴国サスパニアと先ずは公式の外交ルートを築かせて頂ければと思います!」
「ハルコン殿、国を代表して感謝申し上げる。今後、貴殿には足を向けて眠れませんな?」
「ふふっ、私も久しぶりに日本の人とこうして話ができて、とても楽しかったです。両国で協力して、お互いドンドン発展していきましょう!」
私が上機嫌でこう言ったところ、……。石原中佐さんは、「実はですな、ハルコン殿。その件について、折り入ってご相談がありましてな!」と、何やら提案をしてきたのだ。
「えぇ、伺いましょう! どういったご用件ですか?」
すると、車椅子の方から「うぅ~ん!」という若いかわいらしい女性の声と共に、腕を上方に伸ばす気配がした。
どうやら、「半次郎」さんがお目覚めのようだけど、……。
んっ!? 何だろう、……。若干の違和感がする。
その「半次郎」さんが車椅子から立ち上がると、……。全身を覆っていた包帯が、スルスルと音を立てて絨毯の上に落ちていった。
「おっ! やはり『半次郎』殿ば、『女』でやしたか!」
「えっ!?」
元女盗賊さんの見立てのとおり、まさかのまさか、「半次郎」さんは「女」だった。
それも若くて、飛び切りかわいい部類の、……。
「『半次郎』さん。私(ハルコン)はね、人間がこうしてこの世に生を受けたことには、必ず理由があると思っています。そのことを、あなたもおワカりになりますか?」
「……」
私がそう訊ねても、その「半次郎」さんは微動だにしない。生きてはいるのだろう。だが、それは死んでいないだけだ。
おそらく、それは運命によって齎された深い絶望が、彼にそうさせているのだろう。
「私達の命は、とても尊いものです。それは、おワカりになりますか?」
「……」
そもそも「暗部」の者に、道徳を説いてもあまり意味がないのかもしれない。
でも、私が次にこう述べたら、「半次郎」さんの瞳に一瞬だけ揺らぎが見えた。
「私達はね、神様から命を借りて生きています。だから精一杯生きて、最後に珠玉となった命をお返しすることで、私達の魂は磨かれていきます」
「……」
「命はね、一度尽きてもまた次があるんですよ!」
「……」
すると、……「半次郎」さんは、私の言葉に何か思い当たることがあったのか、……。
「何しろ、私は女神様から7つの命を授かったのですよ。全部使い切るだけでも大変なのに、今の私はそれらを一度にまとめて使って生きているんです。だから、寝る間も惜しいくらい、今がとても充実しているんですよ!」
「……」
漸くその瞳に、……ホンの少しだけど、薄い膜のような光が宿ったように私には思えた。
そう思ったら、即断即決が私の信条だよ!
私は真っ直ぐに石原中佐さんに首を向けたら、相手は目を見開いて私の顔をじっと見た。
「さすがですな、ハルコン殿っ! 我々がこれまで何を言っても反応を示さなかった者が、今、こうして意識を取り戻そうとしている。誠に以て、驚くべきことだ!」
「石原中佐さん。彼は今生きようとしています。この場は、私に託して頂けませんか?」
「えぇ、ぜひっ! お願いいたします!」
「了解です! 任せて下さいっ!」
私はそう返事をするや、ハルコンAの小瓶を手に取って蓋を開けた。
ガラスの小瓶はキュポンと音を立て、そのまま原液を何ら薄めることなく半次郎さんの口元に流し込んだ。
すると、しばらくして包帯の隙間から白い湯気がもうもうと立ち込めてきた。
「ハルコン殿、……。これは、大丈夫なのだろうか?」
「えぇ、問題ありません。もの凄い勢いで、今、細胞レベルで新陳代謝が行われているんです。もうしばらくお待ち下さいね!」
「え、えぇ、……」
それから20分ほどの間、私と石原中佐さんは今後の両国の関係について、引き続き話し合った。
「……。では、我々も貰ってばかりでは申しワケありませんからな。ここはハルコン殿がお望みのものを用意できたらと思います。何か、お探しのものでもありませんか?」
「そうですねぇ、……。差し当たって必要なものは、こちらで大体用意できているんですよ。現在、我が国では『善隣外交』を推し進めておりますので、貴国サスパニアと先ずは公式の外交ルートを築かせて頂ければと思います!」
「ハルコン殿、国を代表して感謝申し上げる。今後、貴殿には足を向けて眠れませんな?」
「ふふっ、私も久しぶりに日本の人とこうして話ができて、とても楽しかったです。両国で協力して、お互いドンドン発展していきましょう!」
私が上機嫌でこう言ったところ、……。石原中佐さんは、「実はですな、ハルコン殿。その件について、折り入ってご相談がありましてな!」と、何やら提案をしてきたのだ。
「えぇ、伺いましょう! どういったご用件ですか?」
すると、車椅子の方から「うぅ~ん!」という若いかわいらしい女性の声と共に、腕を上方に伸ばす気配がした。
どうやら、「半次郎」さんがお目覚めのようだけど、……。
んっ!? 何だろう、……。若干の違和感がする。
その「半次郎」さんが車椅子から立ち上がると、……。全身を覆っていた包帯が、スルスルと音を立てて絨毯の上に落ちていった。
「おっ! やはり『半次郎』殿ば、『女』でやしたか!」
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