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アプリ(8)
『――康介はさ。……私のこと、好きなの?』
幼馴染と二人、見つめ合って座る。
ベッドの白いシーツの上。
ここで、さっきまで友美の舌をちゅぱちゅぱ吸っていた。
結局のところ、味はよくわからなかった。
だけど、どうしてだか、最終的には「美味しかった」。
それを、彼女は、憶えている。
だから、彼女は、尋ねている。
――「キス」をする。
それはきっと恋人の証拠。
それはきっと恋愛の象徴。
だから彼女は問うのだろう。
僕が彼女に恋愛感情を抱いているのかと。
あの「キス」はそういう意味なのかと。
隣に住む幼馴染――七宮友美は僕にとって掛け替えのない存在だ。
僕が高校でボッチになった今でも変わらずに接してくれる、たった一人の異性。
だからこうやってX-BOOKのテストにも付き合ってもらっている。
そして性的な接触も試してみる気になったのだ。
だから、今、改めて、そういうことを総合して考えてみよう。
――僕は、七宮友美に、恋愛感情を抱いているのだろうか?
考えを巡らせる。
僕は、胸の奥に存在した答えに、たどり着いた。
「――ねえ、康介。どうなの? ……康介は私のこと好きなの? ――私と、付き合いたいと思っているの?」
僕を見上げる友美の目は、何かに縋っているようにさえ見えた。
僕の答えは決まっている。
「そんなわけないじゃん」
「――え?」
「僕らは幼馴染だしさ。僕と友美は恋愛関係とかそういうのからは一番遠い存在だって思っている。……それは友美が一番よく知っているんだろ?」
「あ――」
ショートカットの少女が口を半分開ける。
友美はゆっくりと視線を逸らす。
手は僕のシャツを離し、割座に座るスカートの上に降りていった。
「――じゃあ、どうして。どうしてキスなんてしたのよ? 幼馴染――友達って、キスする関係じゃないでしょ……? 普通」
「キスっていうか、さっきのは『舌を吸った』というのが正しいというか、なんというか」
「はぁ? そんなのどっちでも一緒でしょう? 普通にキスするよりも酷くない? イッちゃってない?」
「ちょっと友美。声がでかいよ。『キス』とか『イッちゃう』とか。――花乃さんに聞こえたらどうするのさ」
「どうもしないわよ。……ていうか、康介、いい加減、人のお母さんを下の名前で呼ぶのはやめてよね」
「あ、ああ……、まぁ、それは、まぁ」
そこについては言葉を濁す。
でも花乃さんことを「おばさん」って言うのは抵抗があるんだよなぁ。
小さな頃から花乃さんは「おばさん」というより「おねえさん」という感じだった。
それは今も変わらない。
むしろ今のほうがもっと「おねえさん」と呼びたいくらいだ。
この親子が「姉妹に見える」というのはご近所の定番ネタである。
「――それでどうなのよ?」
「だから恋愛感情は無いって。これっぽっちも」
「それはさっき聞いた!」
人差し指と親指の間に小さな間隔を作って「これっぽっち」を表現する。
その僕に右手を友美はカピバラのぬいぐるみをフルスイングして吹き飛ばした。
「おうっ!」
思わず声を漏らす。
――て、友美、いったい幾つのぬいぐるみに囲まれて寝てるんだよ。
打席後のバットは回収されカピバラくんは友美の膝の上。
カピバラくんさえも、追求する等な目で、僕を見上げる。
なんだか追求してくる相手が二人になったみたいだ。
被告人になった気分である。
「――だからどうして、私にキスをしたの? ……そこだけ教えて」
なんだか少しだけ弱々しい。
照れているのだろうか。
腐れ縁の僕と彼女の関係で。
「じゃあ、友美はどうしてパンツを脱いだのさ? 僕がいる眼の前で」
「――えっ?」
友美は虚を突かれたように背筋を伸ばした。
突然投げかけられた反対尋問。
そして腰に手をやり、お尻に手をやり、「あっ」と小さな声を漏らした。
やってしまったことを思い出したかのように。
僕はベッドサイドに左手を下ろす。
床の上を探るように手を動かす。
目的のものはすぐに見つかった。
「ほらこれ。――友美がさっきまで穿いていたやつだろ?」
「ちょ、ちょっとぉ!」
フロントにリボンが付いた白いパンツ。
友美は慌ててて、僕の指先からぶら下がったそれを、ひったくった。
顔を真っ赤にして。
こういうのはなんか可愛いよね。
小動物的な意味においてだけれど。
「もうっ! 信じられない」
「――いや、いくら幼馴染だとはいえ、男が部屋に遊びに来ているのに、パンツを脱いで、見えるところに落とす方が信じられないよ」
「う……うううう。それは、……そうだけど」
若干、泣きそうなモードに入っている。
頭の中は混乱を極めているんだろう。
「……私、どうして、そんなことしたんだろう。寝ぼけてたのかなぁ……。知らない間に」
「ひとりで部屋にいる時、パンツ脱いでノーパンになる習慣とかあるの?」
「無いよぉ! 無い……無いと思うけれど。……わかんない」
「うーん。いつもの癖が出ちゃったとか、そういうことなのかなって思ったけれど」
「そ……そうなのかなぁ」
パンツを握りしめて、眉を寄せる友美。
それから「やっぱり穿くから、しばらくの間、向こう見てて」と言われたので、しばらく背中を向ける。
五秒ほどで「いいよ」と言われたので向き直った。
友美は元の姿勢で、カピバラくんを膝に抱えていた。
「おまたせ」
それでも、やっぱり無性に興奮してしまう。
制服のスカートの下に彼女が履いているパンツが、さっきまで自分が手にしていたパンツだと思うと。
「パンツのことは――ごめん」
「いやこっちこそ」
僕はベッドの上に落ちていたスマホを手繰り寄せる。
これでちょっと分かってきた。
X-BOOKの催眠にかかり起こした行動は、すべて記憶の中に残るみたいだ。
その上でそれらは、誰かに「誘導されたもの」や「強制されたもの」としてではなく、自分の意思で行ったもとのして、本人には理解されるらしい。
つまり催眠アプリの命令について「辻褄は勝手に合ってくれる」ようだ。
ある意味では、自動の「記憶改変」機能付きといった感じだろうか。
催眠術というと、眠りに落とすイメージで、記憶は残らないと思いこんでいたが。
「それにキスして欲しそうに――絡めて欲しそうに、舌……出してきたのも友美なんだぜ?」
「記憶改変」仮説が正しければ、友美の記憶上はそうなっているはずだ。
若干の賭けだったけれど、案の定、彼女は「ハッ」とした表情を浮かべた。
「そういえば……。――私、どうしちゃったんだろ? 疲れているのかな……」
「かもな。ま~、幼馴染として、久しぶりにスキンシップがあったのは、悪くなかったと思うよ。――ちょっと過激だったけどな」
「もー、康介は、調子に乗りすぎ~!」
そう言いうと、友美はまた巨大なカピバラのぬいぐるみをブルンと振ってきた。
――笑いながら。
どうにも話の落とし所がない。
だから笑って誤魔化すことにしたみたいだ。
僕も彼女も。――共犯者みたいに。
「そういえば――康介はさ、……その、好きな女の子って、いるんだっけ? 学校に」
恋愛の話題は断ち切るのかと思いきや、続けてきた。
――何故だろう?
「いるよ? 好きな人なら」
「――え、そうなの? 私以外、……だよね?」
「当たり前じゃん」
「――誰?」
彼女の眉が寄せられ、目は細められた。
視力が悪いわけでもなかろうに。
「――綾瀬みはる」
友美は頬を釣り上げて、前のめりに体を倒してきた。
僕が出したその名前に脊髄反射するみたいに。
視界の中で大写しになった幼馴染――七宮友美は苛立ちを隠さずに言う。
「は? ――あんた、まだあの女のことが好きなの?」
両手を押し付けられ、彼女の体重を思いっきりかけられたぬいぐるみ。
カピバラの顔は、友美の膝の上で、グチャグチャに潰れていた。
幼馴染と二人、見つめ合って座る。
ベッドの白いシーツの上。
ここで、さっきまで友美の舌をちゅぱちゅぱ吸っていた。
結局のところ、味はよくわからなかった。
だけど、どうしてだか、最終的には「美味しかった」。
それを、彼女は、憶えている。
だから、彼女は、尋ねている。
――「キス」をする。
それはきっと恋人の証拠。
それはきっと恋愛の象徴。
だから彼女は問うのだろう。
僕が彼女に恋愛感情を抱いているのかと。
あの「キス」はそういう意味なのかと。
隣に住む幼馴染――七宮友美は僕にとって掛け替えのない存在だ。
僕が高校でボッチになった今でも変わらずに接してくれる、たった一人の異性。
だからこうやってX-BOOKのテストにも付き合ってもらっている。
そして性的な接触も試してみる気になったのだ。
だから、今、改めて、そういうことを総合して考えてみよう。
――僕は、七宮友美に、恋愛感情を抱いているのだろうか?
考えを巡らせる。
僕は、胸の奥に存在した答えに、たどり着いた。
「――ねえ、康介。どうなの? ……康介は私のこと好きなの? ――私と、付き合いたいと思っているの?」
僕を見上げる友美の目は、何かに縋っているようにさえ見えた。
僕の答えは決まっている。
「そんなわけないじゃん」
「――え?」
「僕らは幼馴染だしさ。僕と友美は恋愛関係とかそういうのからは一番遠い存在だって思っている。……それは友美が一番よく知っているんだろ?」
「あ――」
ショートカットの少女が口を半分開ける。
友美はゆっくりと視線を逸らす。
手は僕のシャツを離し、割座に座るスカートの上に降りていった。
「――じゃあ、どうして。どうしてキスなんてしたのよ? 幼馴染――友達って、キスする関係じゃないでしょ……? 普通」
「キスっていうか、さっきのは『舌を吸った』というのが正しいというか、なんというか」
「はぁ? そんなのどっちでも一緒でしょう? 普通にキスするよりも酷くない? イッちゃってない?」
「ちょっと友美。声がでかいよ。『キス』とか『イッちゃう』とか。――花乃さんに聞こえたらどうするのさ」
「どうもしないわよ。……ていうか、康介、いい加減、人のお母さんを下の名前で呼ぶのはやめてよね」
「あ、ああ……、まぁ、それは、まぁ」
そこについては言葉を濁す。
でも花乃さんことを「おばさん」って言うのは抵抗があるんだよなぁ。
小さな頃から花乃さんは「おばさん」というより「おねえさん」という感じだった。
それは今も変わらない。
むしろ今のほうがもっと「おねえさん」と呼びたいくらいだ。
この親子が「姉妹に見える」というのはご近所の定番ネタである。
「――それでどうなのよ?」
「だから恋愛感情は無いって。これっぽっちも」
「それはさっき聞いた!」
人差し指と親指の間に小さな間隔を作って「これっぽっち」を表現する。
その僕に右手を友美はカピバラのぬいぐるみをフルスイングして吹き飛ばした。
「おうっ!」
思わず声を漏らす。
――て、友美、いったい幾つのぬいぐるみに囲まれて寝てるんだよ。
打席後のバットは回収されカピバラくんは友美の膝の上。
カピバラくんさえも、追求する等な目で、僕を見上げる。
なんだか追求してくる相手が二人になったみたいだ。
被告人になった気分である。
「――だからどうして、私にキスをしたの? ……そこだけ教えて」
なんだか少しだけ弱々しい。
照れているのだろうか。
腐れ縁の僕と彼女の関係で。
「じゃあ、友美はどうしてパンツを脱いだのさ? 僕がいる眼の前で」
「――えっ?」
友美は虚を突かれたように背筋を伸ばした。
突然投げかけられた反対尋問。
そして腰に手をやり、お尻に手をやり、「あっ」と小さな声を漏らした。
やってしまったことを思い出したかのように。
僕はベッドサイドに左手を下ろす。
床の上を探るように手を動かす。
目的のものはすぐに見つかった。
「ほらこれ。――友美がさっきまで穿いていたやつだろ?」
「ちょ、ちょっとぉ!」
フロントにリボンが付いた白いパンツ。
友美は慌ててて、僕の指先からぶら下がったそれを、ひったくった。
顔を真っ赤にして。
こういうのはなんか可愛いよね。
小動物的な意味においてだけれど。
「もうっ! 信じられない」
「――いや、いくら幼馴染だとはいえ、男が部屋に遊びに来ているのに、パンツを脱いで、見えるところに落とす方が信じられないよ」
「う……うううう。それは、……そうだけど」
若干、泣きそうなモードに入っている。
頭の中は混乱を極めているんだろう。
「……私、どうして、そんなことしたんだろう。寝ぼけてたのかなぁ……。知らない間に」
「ひとりで部屋にいる時、パンツ脱いでノーパンになる習慣とかあるの?」
「無いよぉ! 無い……無いと思うけれど。……わかんない」
「うーん。いつもの癖が出ちゃったとか、そういうことなのかなって思ったけれど」
「そ……そうなのかなぁ」
パンツを握りしめて、眉を寄せる友美。
それから「やっぱり穿くから、しばらくの間、向こう見てて」と言われたので、しばらく背中を向ける。
五秒ほどで「いいよ」と言われたので向き直った。
友美は元の姿勢で、カピバラくんを膝に抱えていた。
「おまたせ」
それでも、やっぱり無性に興奮してしまう。
制服のスカートの下に彼女が履いているパンツが、さっきまで自分が手にしていたパンツだと思うと。
「パンツのことは――ごめん」
「いやこっちこそ」
僕はベッドの上に落ちていたスマホを手繰り寄せる。
これでちょっと分かってきた。
X-BOOKの催眠にかかり起こした行動は、すべて記憶の中に残るみたいだ。
その上でそれらは、誰かに「誘導されたもの」や「強制されたもの」としてではなく、自分の意思で行ったもとのして、本人には理解されるらしい。
つまり催眠アプリの命令について「辻褄は勝手に合ってくれる」ようだ。
ある意味では、自動の「記憶改変」機能付きといった感じだろうか。
催眠術というと、眠りに落とすイメージで、記憶は残らないと思いこんでいたが。
「それにキスして欲しそうに――絡めて欲しそうに、舌……出してきたのも友美なんだぜ?」
「記憶改変」仮説が正しければ、友美の記憶上はそうなっているはずだ。
若干の賭けだったけれど、案の定、彼女は「ハッ」とした表情を浮かべた。
「そういえば……。――私、どうしちゃったんだろ? 疲れているのかな……」
「かもな。ま~、幼馴染として、久しぶりにスキンシップがあったのは、悪くなかったと思うよ。――ちょっと過激だったけどな」
「もー、康介は、調子に乗りすぎ~!」
そう言いうと、友美はまた巨大なカピバラのぬいぐるみをブルンと振ってきた。
――笑いながら。
どうにも話の落とし所がない。
だから笑って誤魔化すことにしたみたいだ。
僕も彼女も。――共犯者みたいに。
「そういえば――康介はさ、……その、好きな女の子って、いるんだっけ? 学校に」
恋愛の話題は断ち切るのかと思いきや、続けてきた。
――何故だろう?
「いるよ? 好きな人なら」
「――え、そうなの? 私以外、……だよね?」
「当たり前じゃん」
「――誰?」
彼女の眉が寄せられ、目は細められた。
視力が悪いわけでもなかろうに。
「――綾瀬みはる」
友美は頬を釣り上げて、前のめりに体を倒してきた。
僕が出したその名前に脊髄反射するみたいに。
視界の中で大写しになった幼馴染――七宮友美は苛立ちを隠さずに言う。
「は? ――あんた、まだあの女のことが好きなの?」
両手を押し付けられ、彼女の体重を思いっきりかけられたぬいぐるみ。
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