呪い付き令嬢ヒステリア

アルカ

文字の大きさ
1 / 18
本編

1 ドレスの丈 前編

しおりを挟む
 

 私が正気に返ったのは十二歳の誕生日の朝だった。

 目の前にはピンクのレースと薔薇のコサージュをふんだんに使ったドレス。両親が誕生日パーティーの為に拵えたドレスを侍女が掲げた瞬間、自分でも驚くほどの早さでツッコミを入れていた。

「なんでミニスカートッ!?」

 この世界、女性は長いドレスが当たり前。風でなびいて足首が見えようものなら、パンチラくらいの恥ずかしさに分類していい。
 足首イコールパンチラ、これ重要。
 なのにミニスカートドレス。膝上二十センチはありそうな短さ。しかもクリノリンで膨らませているから、これじゃあ歩いただけで中が見える。下穿きが丸見え。
 この世界に換算すると、全裸で街を闊歩くらいの衝撃がある。
 私にヌーディストの趣味や思想は無い。

「ですがお嬢様、この丈以外はお召にはならないとおっしゃって……」

 戸惑った感じの侍女に言われて、寝間着姿の自分の足元に視線を下げると――太腿が出ていた。
 十二歳のお肌はつるつるすべすべ、O脚でもないすんなり伸びた脚。
 やったね! ……て、そうじゃない。
 寝間着まで膝小僧が見えている。
 どうりでよく風邪を引くわけだ。
 おろおろする侍女を放置して、震える手で衣装部屋の扉を開け放つと、そこには見渡す限りの膝上ドレス。部屋着も外出着も、みんなみんな丈が短い。

「どういうことおおおっー!」

 私は、屋敷の外まで響くような悲鳴を上げた。
 うちのセコムこと愛犬マルロイとゾルホイが怯え、遠吠えを始めるほどの叫び声だった。


 ・・・・・・・・・・


 どうやらここは、私が前世でプレイしたことのある乙女ゲームそっくりの世界、らしい。

 魔族王家の傍流に生まれた主人公が、魔法の才能に恵まれた人々や、貴族、王族が通う魔法学園に成り行きで入学して、めきめきと頭角を現し、将来の伴侶を見つけて魔王まで登りつめちゃうゲームだった。
 王子よりも何よりも、実は主人公が最強というとんでも設定。
 だがそこが良い。
 前世の私はそう思ってた。

 こんな立場にならなければ……。

 攻略相手は数十人。クラスメイト全員(女性除く)と、教師に上級生、果ては学園に棲みつく神獣まで。「どんなニーズにもお答えします!」そんな開発者のコメントを記事で読んだ気がする。
 今生きる現実に当てはめてみると恐ろしい魅了力。そして守備範囲の広さ。人外設定とはいえ、ほんと主人公最強だね!
 このゲーム、攻略相手ごとにそれぞれライバル兼お邪魔キャラが設定されていた。
 その意欲は買おう。毎回同じライバルが出てきたら、その子も主人公並のジゴロだし。
 ただ数が多かったせいか髪の色と服装で判別を付けようにも追いつかず、メーカーは途中で投げた。
 姉妹なら見た目ほぼ一緒でもよくない? この際縁戚関係は色で括って相関図を分かりやすくしてみようか! とでも言わんばかりの手抜きキャラ造形が横行した。
 攻略キャラの絵姿を手抜きした訳じゃないから、まあ、みんなそんなに気にならないっていう、上手い所を突いてきた。


 突然ですが、私には容姿がそっくりの従姉妹がいます。
 この国の王女ササミラ姫。メイン攻略相手の一人である第一王子の時に出てくる、ブラコンお邪魔キャラ。
 ――もうお分かりでしょう。

 手抜きで生まれたライバルキャラ、膝上丈ドレスしか着ない侯爵令嬢ヒステリア・ジークハイド、それが今の私。
 第一王子の学友である兄、シヴァーリ・ジークハイドを攻略する時に現れるブラコンキャラ。
 目の色髪の色、顔の造りだけじゃなく、ブラコン設定も立ち姿もササミラ姫とほぼ一緒。違うのはドレスの丈の長さのみ。
 つまり膝出しが私の個性。

 ……泣いても、いいですか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きだけど、一緒にはなれません!! 転生した悪役令嬢は逃げたいけれど、溺愛してくる辺境伯令息は束縛して逃がしてくれそうにありません。

みゅー
恋愛
辺境伯の屋敷でメイドをしているアメリ。地枯れという呪術により、その土地から離れられない運命を背負っていた。 ある日、ずっと好きだった雇い主の令息であるシメオンを体を張って守ったことで、アメリは大怪我をする。 そして、怪我の治療で臥せっているあいだにアメリは自分の前世を思い出す。そして、目覚めた時にハッキリと自覚した。 私は乙女ゲームの中に転生している!! しかも自分はとある伯爵の娘であり、後に現れるゲームのヒロインをいじめるライバル悪役令嬢であった。 そして、もしもヒロインがシメオンルートに入ると自分が断罪されると気づく。 アメリは断罪を避けるべく、ヒロインが現れたら潔く身を引くことを決意する。 そんな中、ついにヒロインが現れシメオンに興味をもつようになり…… だが、シメオンは何故かアメリに執着しアメリに対する好意を隠そうともしない。そんなシメオンにアメリは困惑するのだった。 アメリは断罪を避け呪術から解放され幸せになれるのか?! 運命に抗う悪役令嬢のラブストーリー。 ※只今工事中

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...