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本編
3 ドレスの丈 後編
しおりを挟む「なんでまたドレス膝上なの!」
衣裳部屋の中の服は全部普通の丈の長さに作り替えた。
寝間着だって長くなったから、あれ以来風邪だって引かなくなったし、お腹も壊さなかった。非常に穏やかな令嬢ライフを満喫してました。
一年後、十三歳の誕生日の朝、侍女が用意したドレスが膝上丈で登場するまでは。
空色のドレスは、母と一緒に生地から選んだ特注品。
昨年の誕生日パーティー不発を取り戻すために、母お気に入りの仕立て屋が腕によりをかけた一品。光沢のある絹を使った刺繍には、お針子の本気が感じられる素晴らしい出来だった。
その刺繍の施された裾のラインが、そっくりそのまま膝上に魔改造されている。
え? 刺繍は残しつつ膝上に丈を上げるって、どんな神業? ……いや、実際神業なんでしょうけども。説明のつかない感じで奇跡おこさないで欲しいな。
あの素敵ふんわりラインを返して。お針子達がこれを見たら卒倒するからっ。
衣裳部屋のドレスもみんなミニスカートドレスに変わっている。それもただナイフや鋏で切り取られたという風じゃない。みんな綺麗に仕立て直されてる。
まるで最初から膝上でしたといわんばかりに、整然と並ぶドレスたち。
ほんの少しだけ伸びた身長で、自分の姿を見下ろせば……前の晩までくるぶしを覆っていたはずの寝間着から見える膝小僧。
腿を撫でる朝の風は、初夏だというのに爽やかだ。ああ、私の誕生日冬じゃなくて良かった。冬だったら確実にお腹壊してるよね。
「……て、ちがーう!!」
私の苛立ちを含んだ一人ツッコミは、また犬たちを怯えさせた。
ゲーム怖いよ、どんな縛りだよ。
ドレスの丈だけ物理的にリセットとか、ホラーだからやめて。
侯爵家の威信をかけた犯人探しが始まったものの、もちろん犯人は見つからず。
わかってる、犯人はいわば世界そのもの。
だからと言ってそれを素直に周りに打ち明ける訳にもいかない。
前世のゲームが~とか打ち明けたら最後、両親は泣き、兄には残念な目で見られ、ヒューが怪しげな独り言をつぶやき、バルタザールは全力で背骨を折りにくる未来しか見えない。
私は口をつぐんだ。どっかにいる、はた迷惑な何かが諦めてくれないかなって祈りながら。
前世の記憶を取り戻した所で、十三歳の小娘に何が出来ると言うのか。
また一年後の十四歳の朝、同じ悲劇が起こった。
「もういい加減にしろやー!」
私のあげた声は、悲鳴と言うより怒号だった。
この年、私に「呪いのドレス」と云う二つ名が付けられた。
勇者で言うなら名声レベルアップかもだけど、令嬢でこれはいかん。
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