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本編
11 毎朝の日課 (ヒュー視点)
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今朝も縄を一本、寮の屋根から垂らして二階の窓にそっと触れる。
内側に張り巡らされた魔術防壁に干渉しないように、慎重に魔力を染みこませる。
日を追うごとに複雑になっていく防壁に、彼女の成長を感じて嬉しくもあり、巣立ちを見守る親鳥のように寂しくもある。
とはいっても、こちらも解呪に関しては既に本職並なので、ものの数秒で窓の鍵は音もせずに開いた。
リアお嬢様を起こす為に、寮の部屋まで顔を出すのが俺の日課だ。
その幸せそうな寝顔を、ゆっくりと堪能してから彼女を起こす。
大抵起床と同時に蹴りが飛んでくるので、起こす前に楽しんでおく。
今日は何故か様子が違った。
「ごめんねヒュー。今まで蹴飛ばして」
そう、目を覚ましたリアお嬢様に声を掛けられて、久しぶりに一秒以上その目を見つめる時間が与えられて、自然と口元が緩んでしまった。
「いえいえそんな」とか、「気にしておりませんよ」なんて、当たり障りのない従者らしい受け答えをしながらも、脳内では両拳を突き上げて歓喜していた。
何せ彼女と二言以上話すのは、実に数か月ぶりなのだ。
入学してひと月もしないうちに、彼女は憮然とし、そっけない態度になった。
彼女の兄であり、俺の親友でもあるシヴァーリには、環境が変わって癇癪を起してるだけだと言われたが、数ヵ月も続いている。
しかも俺に対してだけ。
もしかして屋敷から持ってきた枕を、ついうっかり自室に持って帰ったのがばれたのか! とびくびくしていたが、糾弾してこない所を見るとそうでもないらしい。
……枕の件は、故意じゃない、ついうっかりだ。一応。
この学園に通うようになって四年目。
それまで毎日一緒に居たリアお嬢様と会えなくなり、三年の歳の差を思い知った。
会えない日々は辛い。悪い虫でもつかないかと不安で、口約束が反故にされないかと気が気じゃなかった。
彼女にかかった呪いにまで、感謝をしてしまったくらいだ。
幼い頃は、決して膝上丈しか穿かないと強固な意志を与え、彼女が恥ずかしがる歳になると、毎年ドレスの裾が短くなる呪い。
ふざけた呪いもあったものだ。
そんな「ドレスの呪い」には、彼女の美しい脚が自分の以外の目に晒される度に苛立ちを感じる。けれども同時に、呪い付きの二つ名は彼女を邸に閉じ込めておける枷だと感じて、昏い喜びを覚えた。
シヴァーリと共に全寮制の学園へ入学し。俺が彼女の傍を離れ、初めて迎えた誕生日に発動したドレスの呪い。タイミングが良過ぎて、この呪いは無意識に俺がかけてしまったのではと思ったくらいだ。
実際シヴァーリやジークハイド侯爵、養父も疑ったらしく、随分厳重に審問を受けた。
彼女が男装を思いついてしまった時、もっと強固に反対すれば良かったと、今でも後悔している。
あっという間に剣技を身に付け、見習い騎士など足元にも及ばなくなってしまった。このままでは呪いがあっても、手の届かない場所へ飛び立ってしまうのではと、一日千秋の想いで彼女の入学を待った。
俺の必修リストに、主席卒業と共に、リアお嬢様の呪いの解呪が加わった。
拾われた時、明らかに堅気には見えない筋肉をしたバルタザールという執事に、自らの身分を素直に明かした。あそこで隠匿でもすれば、すぐさま侯爵家からは叩き出されていただろう。
魔族王家の傍流の出であること。母が家督争いに巻き込まれ、父母共に謀殺されたこと。
大陸が違うとはいえ、人の国と魔の国は、海で繋がっている。
血の気の多い魔の国の情勢は、人の国にとっても頭の痛い問題だったらしい。
未だ混乱する魔国の内紛への保険として、ジークハイド侯爵は俺を保護した。
政治的に利用したいのなら、俺を存分に利用してくれて構わない。
衣食住と教育を与えられ、何より彼女と引き離されなかったことに感謝しているのだから。
リアお嬢様とシヴァーリ、そして養父のバルタザール。彼らに出会えていなかったならば、きっと俺は生きてはいないだろう。
もし運よく生き長らえたとしても、魔王候補になど興味を示しはしなかった筈だ。
この学園への入学が決まった時期、国を通じて魔族側から接触があった。
家督争いで人が死に過ぎて、魔国内は酷い有様だった。現魔王を引きずり降ろし、他の候補を立てようとする魔族たちが出てくるのも、無理からぬ事情だ。
『学園で頭角を現し、魔王候補へと名を連ねて欲しい。あとはこちらで後押しをする』
魔族社会は実力主義とはいえ、元人の従者が魔王になる。その道が険しくない筈はない。
それでも俺は飛びついた。
ジークハイド侯爵にその場で約束を取り付けた。
魔王となった暁には、リアお嬢様を妃に、と。
今のままでは決して手に入らない、身分違いの彼女が正当に手に入れられるのだ。
主席でも何でも取ってみせよう。敵対勢力は返り討ちにしてみせる。
まだこの約束は有効だ。
その為に彼女は十五歳になっても、誰とも婚約をしていない。
あと少しで卒業。
既に地ならしは済んでいる。必要な伝手と実力も、この学園で手に入れた。
あと少しなんだ。
だから彼女の言葉に凍りついた。
「今までありがとう。もう起こしに来なくて大丈夫だから」
それは誰にとっての『大丈夫』なのか。
貴女に会えるこのほんの一時が、俺にとっての毎日の癒しなのに。
唯でさえ狙われてしまう位置にいるリアお嬢様が、敵対勢力に目を付けられてしまわないように。学園内では無闇に近づくなと、シヴァーリに釘を刺されている。
「え? あれっ。何で泣くのヒュー!?」
耐える隙間もなく、一粒涙が零れてしまった。
彼女の言葉は、幼い彼女とその家族が作り上げてくれた心の中心部分に、まっすぐ届いてしまうから。そこは柔らかい肉が出来上がったばかりで、鎧を纏えていない部分だから。
確かにシヴァーリの言う通り、ここを狙われたら俺はおしまいだ。
慌てた彼女は拭く物を探して右往左往し、結局ベッドのシーツで俺の目元を拭う。
取り乱す姿と、久しぶりの剣ダコのある指の感触に、自然と心が緩む。
「そんな事をおっしゃらないでください。それに私が毎朝伺いませんと、全てを遮断する魔術防壁の中で、寝坊したお嬢様を一体誰が起こすのです?」
「……ヒューが来なければ張らないもの」
彼女は少し憮然としている。
「そんなの駄目に決まっているでしょう」
「なぜよ」
「私が安眠できません」
「だから何でよっ」
今こそ本当の気持ちを伝えて、その手を取って腕の中に閉じ込めてしまいたい。だがまだ、俺はただの従者なんだ。
シヴァーリとの約束が過る。
リアお嬢様を妃にと願い出た晩、久々に本気の殴り合いをした。
こういうのは、普通父親の役目じゃないのか? いつもはリアお嬢様をからかってばかりの癖に、肝心な時だけ本気でくる。
俺の正体をその時初めて知ったにも関わらず、シヴァーリは変わらずいい男だった。
『正体を明かす瞬間まで、けじめと立場は忘れるなよ。魔王になれそうだからって、みなしで手を出すとか、許さないからな』
『もちろん』
『あと今のお前じゃ、リアは怯えて二度と近寄らない。鏡見てみろ。……あいつの中身も手に入れたいならちゃんと隠せ』
この時俺はどんな目の色をしていたのか。本気の殴り合いと、彼女を手に出来るかもしれない興奮で、素が出ていたのかもしれない。
『わかってる』
欲しいのは、彼女の全てだ。
『……もし途中で失敗なんてしたら、次は本気で殴るからな』
『今も本気で殴って勝てなかったくせに』
口の中が切れて痛い。草の上に仰向けで倒れるシヴァーリはもっと痛いだろう。
俺も隣に寝転がった。本当は足にきてて、立っているのがやっとだった。
『うるさい。お前に魔王候補になれなんていう父上も、調子よく声かけてくる魔族も、ついでに嬉々としてリアを手に入れようとするお前も、みんな嫌いだ』
そう言ってシヴァーリは背を向けてしまった。
やっぱり俺の親友は、いい男だ。
だから、まだ想いを口には出来ない。
「お嬢様は命の恩人で、とても大切な方ですから。毎日一度はご様子を確認しませんと」
これが、今言葉に出来る限界。
「じゃあ夜にすれば? 寝起きの寝ぼけ顔見られるのは微妙なんだけど」
「それはちょっと……」
寝起きだって結構ぐらぐらくるのに、夜の寝室はさすがにまずい。
シヴァーリだって、朝のように黙認はしてくれないだろう。
「何だか、こっちばかり折れてる気がする」
溜息を吐く彼女は諦め顔だ。
「申し訳ありません」
「いいよ。じゃあ代わりに私の小言も聞いてね。好きな人はちゃんと一人に絞ること! 複数の子にいい顔してると後で刺されるよ。そんなヒューなんて、見たくないから」
「俺は十年前から貴女一筋です!」と、喉の奥まで出かかった。
そんなつもりは全く無かったが、彼女の目には俺が浮気性に映っているらしい。
兄代わりとして扱われるのをこれ幸いと、彼女に触れる隠れ蓑にしていたのが仇となったようだ。
――とりあえず他の女性には、距離を一歩も二歩も引いて接しようと、固く誓った。
内側に張り巡らされた魔術防壁に干渉しないように、慎重に魔力を染みこませる。
日を追うごとに複雑になっていく防壁に、彼女の成長を感じて嬉しくもあり、巣立ちを見守る親鳥のように寂しくもある。
とはいっても、こちらも解呪に関しては既に本職並なので、ものの数秒で窓の鍵は音もせずに開いた。
リアお嬢様を起こす為に、寮の部屋まで顔を出すのが俺の日課だ。
その幸せそうな寝顔を、ゆっくりと堪能してから彼女を起こす。
大抵起床と同時に蹴りが飛んでくるので、起こす前に楽しんでおく。
今日は何故か様子が違った。
「ごめんねヒュー。今まで蹴飛ばして」
そう、目を覚ましたリアお嬢様に声を掛けられて、久しぶりに一秒以上その目を見つめる時間が与えられて、自然と口元が緩んでしまった。
「いえいえそんな」とか、「気にしておりませんよ」なんて、当たり障りのない従者らしい受け答えをしながらも、脳内では両拳を突き上げて歓喜していた。
何せ彼女と二言以上話すのは、実に数か月ぶりなのだ。
入学してひと月もしないうちに、彼女は憮然とし、そっけない態度になった。
彼女の兄であり、俺の親友でもあるシヴァーリには、環境が変わって癇癪を起してるだけだと言われたが、数ヵ月も続いている。
しかも俺に対してだけ。
もしかして屋敷から持ってきた枕を、ついうっかり自室に持って帰ったのがばれたのか! とびくびくしていたが、糾弾してこない所を見るとそうでもないらしい。
……枕の件は、故意じゃない、ついうっかりだ。一応。
この学園に通うようになって四年目。
それまで毎日一緒に居たリアお嬢様と会えなくなり、三年の歳の差を思い知った。
会えない日々は辛い。悪い虫でもつかないかと不安で、口約束が反故にされないかと気が気じゃなかった。
彼女にかかった呪いにまで、感謝をしてしまったくらいだ。
幼い頃は、決して膝上丈しか穿かないと強固な意志を与え、彼女が恥ずかしがる歳になると、毎年ドレスの裾が短くなる呪い。
ふざけた呪いもあったものだ。
そんな「ドレスの呪い」には、彼女の美しい脚が自分の以外の目に晒される度に苛立ちを感じる。けれども同時に、呪い付きの二つ名は彼女を邸に閉じ込めておける枷だと感じて、昏い喜びを覚えた。
シヴァーリと共に全寮制の学園へ入学し。俺が彼女の傍を離れ、初めて迎えた誕生日に発動したドレスの呪い。タイミングが良過ぎて、この呪いは無意識に俺がかけてしまったのではと思ったくらいだ。
実際シヴァーリやジークハイド侯爵、養父も疑ったらしく、随分厳重に審問を受けた。
彼女が男装を思いついてしまった時、もっと強固に反対すれば良かったと、今でも後悔している。
あっという間に剣技を身に付け、見習い騎士など足元にも及ばなくなってしまった。このままでは呪いがあっても、手の届かない場所へ飛び立ってしまうのではと、一日千秋の想いで彼女の入学を待った。
俺の必修リストに、主席卒業と共に、リアお嬢様の呪いの解呪が加わった。
拾われた時、明らかに堅気には見えない筋肉をしたバルタザールという執事に、自らの身分を素直に明かした。あそこで隠匿でもすれば、すぐさま侯爵家からは叩き出されていただろう。
魔族王家の傍流の出であること。母が家督争いに巻き込まれ、父母共に謀殺されたこと。
大陸が違うとはいえ、人の国と魔の国は、海で繋がっている。
血の気の多い魔の国の情勢は、人の国にとっても頭の痛い問題だったらしい。
未だ混乱する魔国の内紛への保険として、ジークハイド侯爵は俺を保護した。
政治的に利用したいのなら、俺を存分に利用してくれて構わない。
衣食住と教育を与えられ、何より彼女と引き離されなかったことに感謝しているのだから。
リアお嬢様とシヴァーリ、そして養父のバルタザール。彼らに出会えていなかったならば、きっと俺は生きてはいないだろう。
もし運よく生き長らえたとしても、魔王候補になど興味を示しはしなかった筈だ。
この学園への入学が決まった時期、国を通じて魔族側から接触があった。
家督争いで人が死に過ぎて、魔国内は酷い有様だった。現魔王を引きずり降ろし、他の候補を立てようとする魔族たちが出てくるのも、無理からぬ事情だ。
『学園で頭角を現し、魔王候補へと名を連ねて欲しい。あとはこちらで後押しをする』
魔族社会は実力主義とはいえ、元人の従者が魔王になる。その道が険しくない筈はない。
それでも俺は飛びついた。
ジークハイド侯爵にその場で約束を取り付けた。
魔王となった暁には、リアお嬢様を妃に、と。
今のままでは決して手に入らない、身分違いの彼女が正当に手に入れられるのだ。
主席でも何でも取ってみせよう。敵対勢力は返り討ちにしてみせる。
まだこの約束は有効だ。
その為に彼女は十五歳になっても、誰とも婚約をしていない。
あと少しで卒業。
既に地ならしは済んでいる。必要な伝手と実力も、この学園で手に入れた。
あと少しなんだ。
だから彼女の言葉に凍りついた。
「今までありがとう。もう起こしに来なくて大丈夫だから」
それは誰にとっての『大丈夫』なのか。
貴女に会えるこのほんの一時が、俺にとっての毎日の癒しなのに。
唯でさえ狙われてしまう位置にいるリアお嬢様が、敵対勢力に目を付けられてしまわないように。学園内では無闇に近づくなと、シヴァーリに釘を刺されている。
「え? あれっ。何で泣くのヒュー!?」
耐える隙間もなく、一粒涙が零れてしまった。
彼女の言葉は、幼い彼女とその家族が作り上げてくれた心の中心部分に、まっすぐ届いてしまうから。そこは柔らかい肉が出来上がったばかりで、鎧を纏えていない部分だから。
確かにシヴァーリの言う通り、ここを狙われたら俺はおしまいだ。
慌てた彼女は拭く物を探して右往左往し、結局ベッドのシーツで俺の目元を拭う。
取り乱す姿と、久しぶりの剣ダコのある指の感触に、自然と心が緩む。
「そんな事をおっしゃらないでください。それに私が毎朝伺いませんと、全てを遮断する魔術防壁の中で、寝坊したお嬢様を一体誰が起こすのです?」
「……ヒューが来なければ張らないもの」
彼女は少し憮然としている。
「そんなの駄目に決まっているでしょう」
「なぜよ」
「私が安眠できません」
「だから何でよっ」
今こそ本当の気持ちを伝えて、その手を取って腕の中に閉じ込めてしまいたい。だがまだ、俺はただの従者なんだ。
シヴァーリとの約束が過る。
リアお嬢様を妃にと願い出た晩、久々に本気の殴り合いをした。
こういうのは、普通父親の役目じゃないのか? いつもはリアお嬢様をからかってばかりの癖に、肝心な時だけ本気でくる。
俺の正体をその時初めて知ったにも関わらず、シヴァーリは変わらずいい男だった。
『正体を明かす瞬間まで、けじめと立場は忘れるなよ。魔王になれそうだからって、みなしで手を出すとか、許さないからな』
『もちろん』
『あと今のお前じゃ、リアは怯えて二度と近寄らない。鏡見てみろ。……あいつの中身も手に入れたいならちゃんと隠せ』
この時俺はどんな目の色をしていたのか。本気の殴り合いと、彼女を手に出来るかもしれない興奮で、素が出ていたのかもしれない。
『わかってる』
欲しいのは、彼女の全てだ。
『……もし途中で失敗なんてしたら、次は本気で殴るからな』
『今も本気で殴って勝てなかったくせに』
口の中が切れて痛い。草の上に仰向けで倒れるシヴァーリはもっと痛いだろう。
俺も隣に寝転がった。本当は足にきてて、立っているのがやっとだった。
『うるさい。お前に魔王候補になれなんていう父上も、調子よく声かけてくる魔族も、ついでに嬉々としてリアを手に入れようとするお前も、みんな嫌いだ』
そう言ってシヴァーリは背を向けてしまった。
やっぱり俺の親友は、いい男だ。
だから、まだ想いを口には出来ない。
「お嬢様は命の恩人で、とても大切な方ですから。毎日一度はご様子を確認しませんと」
これが、今言葉に出来る限界。
「じゃあ夜にすれば? 寝起きの寝ぼけ顔見られるのは微妙なんだけど」
「それはちょっと……」
寝起きだって結構ぐらぐらくるのに、夜の寝室はさすがにまずい。
シヴァーリだって、朝のように黙認はしてくれないだろう。
「何だか、こっちばかり折れてる気がする」
溜息を吐く彼女は諦め顔だ。
「申し訳ありません」
「いいよ。じゃあ代わりに私の小言も聞いてね。好きな人はちゃんと一人に絞ること! 複数の子にいい顔してると後で刺されるよ。そんなヒューなんて、見たくないから」
「俺は十年前から貴女一筋です!」と、喉の奥まで出かかった。
そんなつもりは全く無かったが、彼女の目には俺が浮気性に映っているらしい。
兄代わりとして扱われるのをこれ幸いと、彼女に触れる隠れ蓑にしていたのが仇となったようだ。
――とりあえず他の女性には、距離を一歩も二歩も引いて接しようと、固く誓った。
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