ファザー・マーキュリー|15才で孤児院長の奮闘記

サトノハ

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それぞれの才能

恵みの森

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 僕がこの家に来てから、数日が経った。夜中に泣いてしまう子もまだまだ多いが、光の精霊の力を借りつつ、昼間にしっかりと休息を入れるようになって、大分みんなの表情が明るくなって来ている。

 さて、孤児院から西の草原を十数分ほど歩いて抜けると、広大な森がある。

 その森は、村人から恵みの森と呼ばれている。春、夏、秋、冬と見せる表情は変化に富み、雪に覆われる冬以外は、それぞれに恵みをもたらしてくれる。

 春。雪解けを待ちわびた山菜が一斉に芽吹き、冬眠から覚めた獣たちが歓喜に躍る。命の精霊が最も活発な季節。

 夏。青々とした草花が隆盛を誇り、山を旅した水が泉に満ちる。水と火の精霊が最も活発な季節。

 秋。暑さを耐え忍んだ果実がたわわに実り、色とりどりに木々がめかし込む。風と土の精霊が最も活発な季節。

 冬。真っ白な雪が生命に安息を与える。精霊も眠りに就く季節。

 廻る季節と共にその表情が移ろう森は、時に厳しく、時に優しく昔からただそこにある。

 さあ、精霊に感謝なさい。森の恵みに感謝なさい。

 この村では、そんな寝物語が、代々伝えられているそうだ。

 今は夏。僕の本職でもある、薬師にとって、この季節が一番忙しい。

 繁茂する薬草の種類が最も多くなるからだ。

 それはそれとして、僕らも、そんな森の恵みを享受すべく、朝食を食べ、洗濯を済ますと、まだ1から2才の5人とそのお世話をしてくれるイルマという引っ込み思案な少女を残して、皆で連れ立って、森に向かう。

 そこで、プラムやベリーといった果実、この時期にしか採れない葉物や薬草を採取し、少しでも充実した食生活を送ろうという魂胆だ。

 しかし、森には、恵みを齎してくれる優しい一面もあれば、丸腰では、到底敵わない獣に遭遇する等といった厳しい一面もある。また、好奇心の赴くままに、1人で奥に行って逸れてしまえば、迷うこともあるだろう。

 一般的に、5才になると付き添いありで森に入る事を許される。そのくらいからなら、ある程度は、勝手な行動をしないし、労働力としても見込めるようになるからだ。

 しかし、僕は、危険を承知の上で、3才以上の子は全員連れて行くことにした。

 これには、幾つか理由があるけど、一番大きな理由は、その子たちの『行きたい』という意欲だ。

「お兄さん、お姉さんの言うことを守れなければ、5才になるまで、2度と連れては行かないよ」

 僕の言葉にしっかりと頷き、それでも連れて行って欲しいと、約束をした。

 初日は、サリーやドリー、ニーナ。トマスやゴンズといった、成人間近の子たちをリーダーに、その直ぐ下の世代の子たちをサブリーダーにして、5つの班に分け、僕らは連れ立って、初めての採取に出掛けた。
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