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第四章 いちごちゃんは告りたい!

第十一話 悪魔が囁く。

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寮へと帰った。

一〇五号室へ這入り、私服へと着替える。

部室で起きたことを気にかけていた。

女性である以上、男性が好きなのは当然だ。なので、そう思われること自体は仕方がない。だが、片思いの男子がいると思われている――しかも蘭から。

着替え終え、ベッドに坐る。

菊花に近寄るな――ということなのだ。

お前には好きな男がいるだろう――と。

――違う。

自分が好きなのは、見知らぬ男でも菊花でもない。

それなのに、ぎりぎりと肩を掴まれ、遠回しに脅された。あの痛みは、まだ肩に残っている。

ドアが開き、梨恵が現れた。

「いちごちゃん、ただいまー。」

「お帰り。」

梨恵が着替え始めたので、一冴は目をそらす。

やがて、クローゼットを閉める音が聞こえた。

ねえ――と一冴は尋ねる。

「一つ、訊いていい?」

「ん? なにぃ?」

「片思いの彼が私にいるって、蘭先輩に言ったの?」

「え?」

梨恵は視線を向ける。そして、不安そうな顔をしている一冴に気づいたようだ。

「あ――うん。」

「いつ?」

「えっと、今日のお昼――」

それから、昼休憩の出来事について梨恵は語った。

いちごちゃんのこと心配しとったみたいだで――と梨恵は言った。しかし、蘭に心配されることなど一冴には一つもない。蘭もまた、菊花のことしか眼中にないのだ。

落胆が表情に現れたのか、梨恵は不安そうに尋ねる。

「えっと――ゆーたらいけんことだった?」

「あ――いや。」

――どうしよう。

こんな複雑な事情、梨恵には説明できない。

――けれど。

性別を偽り、自分は女だと言い、蘭を騙してつきあうという危険な真似をしたくないのなら――このままでも何も問題はないではないか。どうせ、自分は男で、蘭は女性しか愛せないのだ。

だが――本当はそうしたくはない。

三年間、秘めてきた思いを口にしたい。

もし天使の言う通り、陰ながら蘭を想うだけでいいのなら――こんな気持ちにはならない。
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