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第六章 光り輝く犬が降る。
第八話 女の子とお菓子づくりの相談
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夕食前――毎週火曜日に放送される『だいふくねこ』を一冴は談話室で見ていた。梨恵と紅子も一緒だ。菊花も同席している――今日、蘭は朝美から用事を頼まれており、談話室に顔を出す可能性はない。
蘭の誕生会について、一冴は菊花に説明する。
「で――できれば、菊花ちゃんも誘ってほしいって言われたんだけどさ。」
「んなもん――行くわけないでしょ。」
「やっぱりね。」
梨恵が身をのりだす。
「それって、いちごちゃんは行くん?」
「うん。」
「けど、プレゼントは?」
一冴は考え込む。
「うーん。」
「どうせだけぇ、鈴宮先輩が喜びさぁなプレゼント持ってきゃええでないかな? せっかく誘われとるにぃ。」
「そうかも。」
しかし一冴は再び考え込んだ。
「けど――プレゼントなんて何を渡せば?」
「いや――鈴宮先輩が好きさぁなもん、いちごちゃんのほうが詳しいでないん?」
そう言われると詰まる。
菊花は意地悪な顔となった。
「まあ、蘭先輩はお嬢様だからね。欲しい物なんか、子供の頃からいくらでも買ってもらえてたんじゃないの? いちごちゃんのお小遣いで買える物で、はたして喜んでくれるかどうか。」
確かに――自分が買えるものなど限られている。好きでもない人物から、欲しくもない我楽多をもらったところで、蘭にとって迷惑ではないのか。
紅子が口を開く。
「あまり意地悪を言うでない、同志菊花! 物質的享楽などしょせん資本主義の産物でしかない! 大切なのは革命への情熱と祖国への心であるはずだ!」
「心――? 共産主義って唯物論じゃなかった?」
「いや、そもそも唯物論の定義というのはだな――」
マルクス主義について熱く語りだした。
ふっと一冴は気づく。
「蘭先輩が好きな物って――お菓子じゃなかったっけ?」
梨恵は目を瞬かせる。
「お菓子?」
「うん――なんか、女の子の手作りお菓子が好きだって前に言ってたと思うんだけど。寮にいたら、そういうのはなかなか食べられないって。」
「どんなのが好きなん?」
「いや――よくは分かんない。」
「けど、それだったら、ほしくない物をあげちゃう失敗も防げるかも。心を込めて作りゃあ喜びんさるで。」
「そう――かな?」
だが、一冴は戸惑う。
「けれど、私、お菓子なんて作ったことないんだけど――」
「任せて。」
梨恵はスマートフォンを取りだす。
そして何かを検索し、出てきたページを一冴へ見せた。
「ほら――プレゼントに喜ばれる手作りスイーツだって! こん中から、鈴宮先輩が喜んでくれさぁなもん作ってみりゃええでないかな? 何なら、うちも手伝うし。」
「本当?」
「うん。お菓子なら少しだけ作ったことあるにぃ。前にも言ったけど、『かわいい』のことなら任せて!」
「ありがとう。」
そして、じっくりとページを見る。アイスボックスクッキー、チーズケーキ、カップケーキ、どら焼き、ババロア――。正直なところ、どれを選べばいいか分からない。
紅子が画面を覗きこんだ。
「クッキーだったら、蘭先輩はいつも部室で食べてるし、作らないほうがいいんじゃないのか? それに、ケーキも誕生会で出るって言ってたし、重なると思うが。」
「あ――そうか。」
「あと、その日のうちに食べきれないこともあるし、ある程度は日持ちがするほうがいいだろう。」
「なるほど。」
梨恵が口を開く。
「じゃあ――このガトーショコラとか、小さなフルーツパイとか、苺のチョコレートプリンとかもよさげだな。苺を使えば、いちごちゃんが作ったってアピールにもなるかも。」
「そうだね。」
しかし、ふっと劣等感を覚えた。
蘭は――あくまでも「女の子」が作った菓子が好きなのだ。男である自分が作った菓子をプレゼントするなど、偽りの情報で相手を喜ばすことと変わりがないのではないか。
梨恵が尋ねる。
「ところで――鈴宮先輩のお誕生会って来週の月曜だんな?」
「うん。」
「だったら、土曜日にでも食材の買い出し行かんかえ? 失敗せんよう、土曜日にまず作って、日曜日に本番で作るだん。月曜なら、あんま日も空かんし、数日くらいなら食材も痛まんと思う。」
「そうだね。」
紅子が口を開く。
「そういうことなら、私もお供しようではないか! 同志いちごの恋のために!」
一冴は苦笑する。
「あの――あんま大きな声では。」
菊花へと梨恵は顔を向ける。
「菊花ちゃんも、来る?」
「行かない。」
蘭の誕生会について、一冴は菊花に説明する。
「で――できれば、菊花ちゃんも誘ってほしいって言われたんだけどさ。」
「んなもん――行くわけないでしょ。」
「やっぱりね。」
梨恵が身をのりだす。
「それって、いちごちゃんは行くん?」
「うん。」
「けど、プレゼントは?」
一冴は考え込む。
「うーん。」
「どうせだけぇ、鈴宮先輩が喜びさぁなプレゼント持ってきゃええでないかな? せっかく誘われとるにぃ。」
「そうかも。」
しかし一冴は再び考え込んだ。
「けど――プレゼントなんて何を渡せば?」
「いや――鈴宮先輩が好きさぁなもん、いちごちゃんのほうが詳しいでないん?」
そう言われると詰まる。
菊花は意地悪な顔となった。
「まあ、蘭先輩はお嬢様だからね。欲しい物なんか、子供の頃からいくらでも買ってもらえてたんじゃないの? いちごちゃんのお小遣いで買える物で、はたして喜んでくれるかどうか。」
確かに――自分が買えるものなど限られている。好きでもない人物から、欲しくもない我楽多をもらったところで、蘭にとって迷惑ではないのか。
紅子が口を開く。
「あまり意地悪を言うでない、同志菊花! 物質的享楽などしょせん資本主義の産物でしかない! 大切なのは革命への情熱と祖国への心であるはずだ!」
「心――? 共産主義って唯物論じゃなかった?」
「いや、そもそも唯物論の定義というのはだな――」
マルクス主義について熱く語りだした。
ふっと一冴は気づく。
「蘭先輩が好きな物って――お菓子じゃなかったっけ?」
梨恵は目を瞬かせる。
「お菓子?」
「うん――なんか、女の子の手作りお菓子が好きだって前に言ってたと思うんだけど。寮にいたら、そういうのはなかなか食べられないって。」
「どんなのが好きなん?」
「いや――よくは分かんない。」
「けど、それだったら、ほしくない物をあげちゃう失敗も防げるかも。心を込めて作りゃあ喜びんさるで。」
「そう――かな?」
だが、一冴は戸惑う。
「けれど、私、お菓子なんて作ったことないんだけど――」
「任せて。」
梨恵はスマートフォンを取りだす。
そして何かを検索し、出てきたページを一冴へ見せた。
「ほら――プレゼントに喜ばれる手作りスイーツだって! こん中から、鈴宮先輩が喜んでくれさぁなもん作ってみりゃええでないかな? 何なら、うちも手伝うし。」
「本当?」
「うん。お菓子なら少しだけ作ったことあるにぃ。前にも言ったけど、『かわいい』のことなら任せて!」
「ありがとう。」
そして、じっくりとページを見る。アイスボックスクッキー、チーズケーキ、カップケーキ、どら焼き、ババロア――。正直なところ、どれを選べばいいか分からない。
紅子が画面を覗きこんだ。
「クッキーだったら、蘭先輩はいつも部室で食べてるし、作らないほうがいいんじゃないのか? それに、ケーキも誕生会で出るって言ってたし、重なると思うが。」
「あ――そうか。」
「あと、その日のうちに食べきれないこともあるし、ある程度は日持ちがするほうがいいだろう。」
「なるほど。」
梨恵が口を開く。
「じゃあ――このガトーショコラとか、小さなフルーツパイとか、苺のチョコレートプリンとかもよさげだな。苺を使えば、いちごちゃんが作ったってアピールにもなるかも。」
「そうだね。」
しかし、ふっと劣等感を覚えた。
蘭は――あくまでも「女の子」が作った菓子が好きなのだ。男である自分が作った菓子をプレゼントするなど、偽りの情報で相手を喜ばすことと変わりがないのではないか。
梨恵が尋ねる。
「ところで――鈴宮先輩のお誕生会って来週の月曜だんな?」
「うん。」
「だったら、土曜日にでも食材の買い出し行かんかえ? 失敗せんよう、土曜日にまず作って、日曜日に本番で作るだん。月曜なら、あんま日も空かんし、数日くらいなら食材も痛まんと思う。」
「そうだね。」
紅子が口を開く。
「そういうことなら、私もお供しようではないか! 同志いちごの恋のために!」
一冴は苦笑する。
「あの――あんま大きな声では。」
菊花へと梨恵は顔を向ける。
「菊花ちゃんも、来る?」
「行かない。」
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