上 下
22 / 67

【抗魔官チェリーと使い魔アンナ】

しおりを挟む
真空の宇宙空間では派手な爆発音は聞こえない。
チェリーが放った精霊魔法は太陽エネルギーの受け、円城寺室長を光点に赤い風船が巨大に膨らみ破裂する様に大爆発を起こした。
銀河レベルの超新星の爆発とは比べようがないが、もし地球上で起こっていたら、大陸が吹き飛んだのではないかと思える様な規模だ。

「カトリーヌ、円城寺室長は大丈夫なのか・・・」凛太朗は円城寺室長が心配だった。

「ふふふ、五月は、あの程度の爆発エネルギーでは、どうにもならない。もし、彼女が爆発で命を落としていたなら、私達がいま入っているこの球体は無くなって、もう宇宙空間に投げ出されている筈、それに彼女は一瞬で宇宙を消せる程の力を持っている上位神だから、恐らく、あの程度の爆風では風に吹かれた程にしか感じてないでしょうね・・・」

「え、何で、スーパーノバが全然効かない・・・」チェリーは驚いた顔をしている。
この時、彼女の超越者としての自信が崩壊した。

カトレーヌが言う通り円城寺室長は何も無かった様な平気な顔をして、爆発が収まった後に姿を現した。
極大の精霊魔法が通じ無かった事で、自信を砕かれ落ち込んでいるチェリーに対し、五月の下した評価は彼女に取って予想外のものだった。

「チェリー、なかなか良かったよ!
精霊魔法の使い手の弱点はマナが枯渇すると力を思う様に発揮出来ない点、私はエネルギーが満ちた状態で、あなたが、どの程度の力を発揮出来るか知りたかったの・・・。
今の攻撃で、あなたにはエネルギーさえあれば力を引き出せる能力があるという事が分かったわ、だから、カトリーヌの推薦もあるし抗魔官として働いて貰う事にする。
もし、場所を選ばず今の攻撃が出来たなら魔将軍や、もしかしたら魔王だって倒せるかもよ!そうね、精霊使いの弱い所を補うため、待って、あなたにこれをあげる」五月がそう言い何も無い空間から何かを取り出した。
彼女が異空間から取り出しチェリーに渡したのは一つの指輪だった。

「これは・・・」

「それは神魔晶石の指輪、普通のムーンストーンの指輪ではないわ・・・。
宝石に何か光る物が見えない?その宝石の中には原始の太陽と地球が閉じ込めてあるの、あなたなら、その神魔晶石に秘められたエネルギーを引き出せる能力がある。
もし、あなたに危機が迫ったら、きっと、その指輪が力を貸してくれる筈、じゃ、約束通り、チェリーに三次元の現実世界に行ける体をあげる。
元のエルフの体でいいわね・・・」五月の言葉にチェリーの体が反応し光に包まれた。
すると青白かったチェリーの肌に、ほんのり赤い色彩が戻る。
そこには男心を虜にする可愛いエルフの姿があった。
チェリーが嬉しそうにおっぱいを持ち上げ体の感触を確かめている。
この動作に五月やカトリーヌの顔が引き摺った。

「チェリー、生き返る事が出来て浮かれる気持ちは分かるけどほどほどに・・・じゃあ、抗魔執行官としての掟と言うか、心構えを言って置くね・・・。
昔の言葉を引用するわ、一つ『死して屍拾うものなし』・・・ハハハ、二つ目もやっぱり『死して屍拾うものなし』になるのかな・・・。
抗魔執行官は悪魔の魔の手から命を賭して生きている者達を守るのが使命、でも、そこに決して見返りを求めちゃ駄目、あくまで執行官は厳しい様だけど影に徹する事、それと異次元から抜け出せなくなって、永遠に彷徨い続け二度と元の次元に帰れなくなる事もあるから、厳しいけど、覚悟して肝に銘じて置く事、分かった・・・?
さあ、これでチェリーの抗魔官適格試験は終わり、黄泉の世界に戻るわよ・・・」再び円城寺室長の言葉で目の前は一変し凛太朗達は暗闇の世界に戻った。

「カトリーヌ、この後、経験値を積む教育プログラムの一環として、凛太朗のメンタル強化のため最後に難題の竜鬼の肝を貰いに行くんだったわね・・・。
一緒に行くつもりで出て来たけど、また、ダークエネルギーの増大が気になるし魔族が悪さをしたという知らせが入ったから対応するため一足先にデルフィーヌと帰る事にする。
魔族は人間の欲望や嫌悪・怒り・嫉妬といった負の感情がある限り不滅、雨後の筍の様に現れる。困ったことだわ、抗魔官の仕事は終わる事はないのかもね・・・。
あ、そうだ。そこに丁度いい素材があるから、諜報活動なんかに利用出来る使い魔を作ってあげる」円城寺室長は、そう言うと凛太朗に頭を打ち抜かれてゾンビに成り掛けている悪魔に神通力で光を与えた。すると、大きく開いた弾丸後は元に戻り悪魔が驚く事に目を醒ました。死者蘇生の神力を使ったのだ。

「あれ?僕はどうしてたんだっけ・・・?
そうだ、確か流刑星で・・・あ、お前達は僕の世界へ招待した者達、すると僕の暗黒魔術は敗れたのか・・・」

「悪魔さん、お目覚めの様ね。覚えている?あなたの魔術式は、ここにいる抗魔執行官に敗れたのよ。このまま放置すれば、急所の頭を打ち抜かれていたあなたは人間達と同じ様に、ここではドンビとなって徘徊していた筈だ。
そこを私が助けてあげた。この事は分かるわね・・・。
だから、あなたには、あなたの意思に関係なく、抗魔執行官の諜報活動を助ける使い魔になって貰うわ・・・。
さあ、これを受け取りなさい。」

「わーあああああ、痛い、え、これは何だ」

「ははは気に入った・・・その首筋の印は隷属の証、これから抗魔執行官に逆らえぬ様にする物、少しでも裏切れば死ぬより辛い苦痛が襲い、最後には命を落とす事になるから気を付けて、分かった?ところであなた名前は?」

「僕は人形使いのアンナだよ」

この悪魔、もしかし雌なのか・・・と凛太朗が思った時だった。
「・・・えええー」タイガーとチェリーが同時に声を挙げた。
二人が驚いたのも無理はない。彼女にはあるべきところに膨らみが無かったからだ。
洗濯板?大きな声をあげたのはタイガーだった。そこまでは良かったが、ターガーはカトリーヌ、五月、デルフィーヌ、チェリーの胸元に視線を走らせて比べてしまったからさあ大変、この後、タイガー的には願っても無い事だったかも知れないが、女性陣にボコボコにされ血を見る羽目になった。

しおりを挟む

処理中です...