【伝説の強戦士 異次元 抗魔執行官編:ゴスロリ死神娘の淡い恋】

藤原サクラ

文字の大きさ
30 / 67

【金鎧の女騎士】

しおりを挟む
「門を開けよ! 我に続け!」  「おおー」

金鎧の騎士は騎馬を数百騎、引き連れ魔族達がひしめく城外に打って出た。
城壁を守る近衛兵や守備兵は飛んでくる羽根蟲を槍で突き刺したり弓で射落とすが、それでもかなりの数の魔物が城内に侵入し城内はパニック状態になった。
蠅や蚊の様な蟲は飛びながらストローの様な口から唾液を吐き出し攻撃する。
唾液が掛かった者は悲鳴をあげながら地面を転げまわった。

凛太朗は、とんでもない事態に巻き込まれたと思いながらも、住民に襲い掛かる魔物に反応し胸のホルスターからどっしり重い軍用の拳銃を抜き取りトリガーを引いた。
「バン・バンバン」城内の泣き叫ぶ声をかき消す様な乾いた音が鳴り響いた。
体に弾丸が撃ち込まれた感覚はバットの素振りがガンとあたった感じだと言われるが、魔物の表情から痛みを感じる痛覚があるのかどうかは分からない。
9MMの弾丸は羽根蟲の頭部にヒット、即死に近い状態で次々と落下する。
だが、弾倉に装填していた弾丸は直ぐに空になった。

『外は魔物達で溢れている。何処にも逃げ口はない。
遅かれ早かれ身に降りかかるだろう。
こうなったら力で切り開くしかないか・・・』

トラブルを呼び寄せる原因はタイガーにあると思っていたが、案外、俺にあるのかも知れないと思った。
凛太朗は覚悟を決めた。
呼吸を整えながら闘気を高め胸あてに闘気を流した。胸当ては闘気を得て変形し持ちなれた村正に姿を変えた。
それから壁を乗り越えて来た数え切れない魔物を切り捨てた。
魔物のスキンカラー(Skin color:肌色)の返り血汁が着ていたスーツに血糊の様にべっとりと付いた頃、村正から鳴き声が聞こえた。
見ると刀身に人面瘡(じんめんそう)が憑りついていた。
悪霊の類なのか、「うひぃうひひひ・・・」それは狂っている様な声をあげた。
この時、凛太朗は妖刀になった村正の本性を見た気がした。

凛太朗はスナイパー用ライフルをイメージしながら城壁に駆け上がった。
村正はそれに応えバレット M82 アメリカで開発された大口径のセミオート式狙撃銃に姿を変えた。
場所を選びライフルを構えて、先ずは上空を飛んでいる羽根蟲を狙撃する。
幻想銃の死霊弾は一撃必殺だ。
時には意思を持っているかの様に弧を描きながらターゲットを確実に捉えた。

金鎧の騎士が引き連れる騎馬隊は勇猛果敢に戦った。
魔物達に長槍で突っ込み攻撃しては馬の脚を生かして下がる一撃離脱戦法を繰り返していた。
戦士と魔物の個々の戦闘能力の差と圧倒的な数の魔物達を相手に正攻法では勝てないとの判断から考えだした戦法だ。
凛太朗は2KMある狙撃銃の有効射程を生かして戦士達の援護射撃をした。
蟲形の大型魔物を次々倒す。
何度かの突撃を繰り返した騎馬隊は凛太朗の援護射撃により数を減らしながらも魔物達が少し引く間に城内に戻って来た。疲れを癒し次の攻撃に備えるためだ。

緒戦の戦いを終えて圧倒的な数の魔物達に対して善戦した様に思えるが、騎馬兵達はかなり消耗し手詰まり感は否めなかった。
凛太朗自身は幻想銃をもっと強力な武器にして戦う事は出来るが、大型の死霊弾を何発、発射できるか試した事がなく不安があった。

城内に帰って来た金色鎧の騎士が、馬を降りて従者と共に凛太朗に近づいてきた。

「貴敬なのか、我々を助けてくれたのは・・・」

凛太朗の歴史の知識では身分の高い者は誰とも分からない者の前では、わざわざ兜を脱ぐ事はなかったと解釈していたが、敬意を表すために違いない。
金色鎧の騎士は兜を脱ぎ顔を表した。

『やはりそうか・・・』

凛太朗は金鎧の騎士は薄々女性ではないかと思っていたが、あたっていた。
兜から流れ出た金髪の髪が、風にさらりと靡(なび)いた。
化粧はしていないが、凛太朗がドキッとする様な絶世の美女だった。

「私はブリテンの王、アーサーだ。
貴敬の我々への助勢に対して、心より礼を言う。
よもや二度と生きて城に戻れるとは思わなかった」

凛太朗は王族への礼や所作は知らなかったが、敬意を表すために胸に手をあて片膝を付いて接した。
「これはアーサー王、過分なるお言葉ありがとうございます。
私は結城凛太朗と言う東方の樹海から魔物を追って来た迷い人です。
王様には迷い人、故(ゆえ)に初めて拝謁させて頂きますが、私は魔物退治を生業とする異次元の抗魔執行官です。
ですから魔物を倒す事は自らの仕事と考え、最後までアーサー王にお力添えをさせて頂きますので、ご安心願います」

「何と、樹海から来た迷い人とは驚きだ。
ゆっくり話を聞きたいところだが、魔物が何時襲って来るか分からない。
もし、この戦いで生き残れたら、望みの褒美を取らす事にする。
共に生きようぞ・・・」

「皆の者、聞くがよい!
戦える者は女子供でも武器を取れ、これから我らは籠城戦をする。
陽が落ちれば再び蟲達は襲ってくる筈だ。
それまで体を休めるんだ!
おい、誰か、残っている食料を皆の者に配れ・・・」

凛太朗は彼女が絶世の美女だからではないが、彼女に運命の女神の加護を与えてあげる事にした。

「彼女に幸運を!
女神の加護、運の力UP 10倍 100倍 無限大!」
凛太朗は神魔晶石のブレスレットの鎖を引き千切り無限大の運を使う事にした。
彼女に生き続けて欲しかったからだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...