伝説の強戦士(チート)異世界を駆ける ***時を越えた愛***

藤原サクラ

文字の大きさ
88 / 106

【「さつき」の覚醒:時間の逆戻し】

しおりを挟む
突然、閃光が走り、追って『ドドドーーーーン』という爆発音があった。
それは戦場になっている異空間を揺るがす大爆発だった。
「さつき」は、その時、精霊の火を身に纏っていたので、バリヤー(barrier:障壁)代わりになったこと、加えて、爆発地点から離れて戦っていた事などが幸いして、辛うじて難を逃れたが、多くの戦士達を一瞬にして飲み込む規模の爆発だった。
戦況は魔王が率いる悪魔軍が、ほぼ勝利を手中におさめようとしていたが、一瞬にして逆転し、壊滅する憂き目に合った。
神が率いた天戦士たちも、多くが爆発に巻き込まれて、生き残ったのは、僅かに数千の兵を残すだけになっていた。
何が起こったのか理解できないまま、多くの兵が命を落としたすことになったが、原因が、人間が作った水素爆弾という兵器だったと知ったら、恐らく驚いたに違いない。

神から見れば、人間は弱く救済する対象であり、悪魔から見れば取るに足らない虐げる存在なのだから・・・。
人間は神から知恵を与えられたことで、何時の間にか、神や悪魔を超える存在になっていたのである。

両軍ともに予想していない展開になり、余りにも大きな代償を負うことになった。
戦いはアレース神と魔王ベルゼブブの両方が倒れて、勝者なき戦いに終わった。
「さつき」は竜馬からのテレパシーとエルからの交信が途絶えたことが気がかりだった。
何度もエルの分身を通じて、竜馬本体との連絡を取ろうとしたが、交信をすることが出来なかった。
どう考えても爆発に巻き込まれたとしか考えようがなかったが、それでも一縷(いちる)の望みを残こして、累々と死体が横たわった後を「竜馬」を探し、探して、疲れるまで、探し回った。
だが、竜馬やエル本体の欠片(かけら)すら見つけることが出来なかった。
「さつき」は戦いの後処理が終わって、天戦士たちが撤退を開始した後も、一人残って戦いの後を眺めていた。
竜馬と出遭いから、過ぎ去ったことが脳裏に浮かび、流れてくる涙を抑えることが出来ないでいた。
すべての状況が竜馬の死を示していたが、「さつき」は心の中で必死に、その事を否定していた。

『何故なの?なぜ・・・竜馬が死ななきゃならないの?何処に行ったの?答えて・・・こんなの嫌だ!嫌だ!嫌だーーー』心の中で、叫んだ。

悲しみの感情が、頂点に達した時、頭の中にフラッシュ(flash:閃光)が走り、そして、思いも依らない現象が起こった。
周りが急に静かに、やがて、何も動くものが無くなり、まるで時間が止まったようになった。
先程、撤退した筈の天戦士たちが、テープが巻き戻しされているような不自然な動きで、戦場に再び戻ってきた。
爆発が済んだ後、流れて行った生暖かい風が吹き戻り、異空間を覆う光と爆風になって、やがて一点に戻り、散乱し形を失っていたものは全てが元の姿に戻っていった。

「さつき」は何が目の前で起こっているのかを、初めは理解できなかったが、それは神の食べ物である「桃の実」を食べたことにより、創造主の力が現れたものだった。

先程からの不思議な逆転現象が止まった時、漸く、過ぎた時間が巻き戻されたことを「さつき」は知った。
時間が戻った先はラファエルの隊列に従い、戦場となる魔界の入り口に向かう途中だった。
「さつき」はすぐに、竜馬が死んでしまうという最悪の結末を迎えないように、戦いのやり直しをするために行動を起こした。
大天使ラファエルを通して、アレース神に、この戦いの初めから終わりまでの顛末を、全ては大天使ルシファーの取った戦場での逃亡が、戦況を大きく左右する結果になるとの話をした。
アレース神は俄(にわ)かには信じることが出来ない様だったが、「さつき」の必死に訴える姿に感じるものがあり、戦場に於ける陣形を変える承諾を得たのである。
「さつき」の進言により、ラファエルが率いる人の英霊が中心になった大隊はルシファーと入れ替わりに前衛に位置することになった。
戦いは時間が戻る前と同じ様に、火炎弾や光弾の打ち合いから始まり、凄まじい落雷が鳴り響いた。
序盤の戦いは一進一退で推移していったが、突如として、痺れを切らしたベルゼブブが悪魔軍の主力を率いて、中央の突破を図ってきた。
このベルゼブブの攻撃で驚いたルシファーが戦わずに敵前逃亡したことが、天界軍が崩れるきっかけとなったのである。
今回はラファエルが率いる英霊たちが、迎え撃ち、突進してくるルシファーの勢いを止めて、激しい戦いが繰り広げられた。
それでも魔王ベルゼブブが、単独ではあるが、ラファエルの隊から中央を突き破り、結果的には今回もアレース神と大将同士の戦いになったが、戦況を決定付ける様な事態にはならなかった。
神と悪魔の戦いは極大魔法と超神通力による火炎弾や光球の打ち合いから始まり、そして、魔剣と神剣と剣戟の戦いになった。
魔王ベルゼブブと荒ぶる神アレースとの戦いは剣を交えるごとに、衝撃音が鳴り響き、大気が震える凄まじい戦闘が繰り広げられた。
荒ぶる神という異名を持つアレース神にとって、魔王であろうと敵でないように思えた。
だが、ベルゼブブの顔には薄笑いが浮かんでいた。
ベルゼブブは手を高々と掲げて、異空間から槍を召喚した。
アレース神はベルゼブブが手にしている槍が、ロンギヌスの槍であることを知り驚愕した。
それも、その筈、ロンギヌスの槍は神を貫くことができる唯一の武器だったからである。
魔王がロンギヌスの槍に魔力を流すと妖しい光が辺りを包み込み、アレース神は動けなくなった。
それは神の力を封じるものだった。
そして、再び、ロンギヌスの槍がアレース神を貫こうとした。
だが、その時、神の危機を救ったのは竜馬だった。
ロンギヌスの槍を、竜馬はバトルアーマーのレーザーブレードで見事に跳ね返したのである。

『何にー猪口才(ちょこざい)な人間めが・・・』

魔王はトドメの一撃が防がれて、怒り狂った。
決して防ぐことができない必殺の突きを、人間が操る人形が跳ね返したからである。
竜馬は戸惑いを見せていた魔王の隙をついて、返す剣で見事に深手を負わした。
魔王を倒すことは叶わなかったが、深手を負わすことで、魔王軍は総崩れになった。
だが、逃げる悪魔たちを追って、神は魔界への侵攻をすることはなかった。
それは神と悪魔は敵対していたが、神は悪魔を滅ぼそうとは思っていなかったからである。
光と闇は表裏一体で成り立っているものだという神の理屈によるものだった。
神の食べ物である「桃の実」を食べた「さつき」に、この戦いで「時間の逆戻し」という上位神である創造主のみが持つ力が覚醒した。
竜馬は「さつき」の様な力は覚醒はなかったが、それは別の形で表れることになる。
エル本体とのシンクロナイズ( synchronize :同期する)が高まり、やがて、隠された能力を極限までに引き出すことができるようになる。
それは竜馬が、魔王と対等に戦える力を求めたからである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり
ファンタジー
渡会 霧(わたらい きり)。36歳。オタク。親ガチャハズレの悲惨な生い立ち。 幸薄き彼女が手にした、一冊の辞典。 それは異世界への、特別招待状。 それは推しと一緒にいられる、ミラクルな魔法アイテム。 それは世界を救済する力を秘めた、最強の武器。 本棚を抜けた先は、物語の中の世界――そこからすべてが、始まる。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...