伝説の強戦士(チート)異世界を駆ける ***時を越えた愛***

藤原サクラ

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【陰陽師:安倍晴明VS悪霊】

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さて、何かあった様な気がするが、それが何だったか思い出せない、晴明は、そんな感じで、少しの間、頭に?(はてな)マークを付けている放心状態だった。

人が経験するには余りにも大きな、超絶の恐怖体験を経験したのだから無理もない。
「さつき」の魔法を使った催眠術により、心のケア(care:手入れ、メンテナンス)をして貰い、トラウマを残さなかった事が、彼の生業(なりわい:職業)に取っては不幸中の幸いだったかも知れない。
彼は名前を安部晴明(あべのせいめい)という名の、帝(みかど:天皇)に仕える平安貴族だった。
竜馬たちが感じた晴明の印象は一般人にしても少し、小心者に思えたが、意外にも怨霊(おんりょう:悪霊)や妖怪退治をする陰陽師(おんみょうじ)、つまりゴーストバスターズ(Ghostbusters:幽霊退治)の様な仕事をしているとのことだった。
従って、恐怖に対して、心に大きな傷を持っていることは仕事をするうえで、致命傷だった。
その晴明から屋敷に向かう道すがら、彼の苦しい胸の内が明かされた。

『竜馬と「さつき」、それにカトレーヌ殿と言ったかな、聞いてくれないかい、実はここだけの話、「まろ」は悪霊や妖怪が怖くて、怖くてしょうがない。
物の怪を退治する陰陽師を家業としている家に生まれ、幼少の頃から「まろ」だけにしか見えない人の顔が見え、それで家業の陰陽師に向いているということになり、無理矢理、家督を相続させられた。
今までは何とか取り繕いながらやって来たが、それも今夜で最後になるかも知れない。
実は帝の屋敷に明日の夜、呼ばれていてね、悪霊退治を命じられている。
最近、この都に急に物の怪が、増えて、帝の屋敷にも夜な夜な現れて、帝を苦しめている。
「まろ」は多分、帝の前で醜態を晒(さら)すことになるだろうから、帝の怒りをかって、死を賜ることになるだろう。
怖くて、怖くて・・・考えた末に、醜態を晒して死を命じられる前に死のうと思って、歩いていたら、お主たちに出会ったという訳さ・・・ううぅぅ』

その言葉を言った後、晴明が泣き出したので、三人は見ていられなくなり慰めるはめになった。
怨霊・悪霊・妖怪が平安京に跋扈(ばっこ)する様になったのは、恐らく、悪魔ガニーの仕業だと考えた竜馬は、彼が哀れに思えたこともあり、妖怪退治を手助けしてあげる事にした。

晴明の屋敷は庶民の質素な木造家屋とは違い平安貴族の華やかさを感じさせる佇(たたず)まいの寝殿造りの屋敷だった。
安部家の家人は大男で屈強そうな竜馬と風変りに見える恰好をした「さつき」、それに初めて見る金髪の異人(カトレーヌ)に、戸惑い初めは警戒心をあらわにしていたが、晴明が妖怪退治手伝ってくれる食客だと告げると安心した様子だった。
その夜は酒と川魚、それに平安時代では貴族の家の食卓にしか上らなかった白米・汁物で、もてなしを受けることになった。
竜馬は酒に酔って、その夜はぐっすり眠っていたが、「さつき」の『キャー』という声と『バシッ』『痛てて』という晴明の声で目を覚ました。
何事かと思い、「さつき」とカトレーヌがいる寝間に、慌てて飛び込んだ。
すると晴明が蹲(うずくま)り頬を痛そうに押さえている姿が見えた。
『どうしたんだ』
事の成り行きを聞くと晴明が「さつき」に夜這(よばい)を掛けたらしかった。

三人は知らなかったが、エルが言うには平安時代には「夜這い」の文化があり、気に入った女子がいたら、夜に寝床に忍ぶ行為が平然と行われており、結果として目当ての女性が妊娠したら結婚する「できちゃった婚」が一般的だったとのことだった。
「さつき」が時折、晴明に見せた笑顔を勘違いして、気があると思ったらしい。
晴明がもし、「さつき」の本当の姿、最強の精霊魔法を使い、神に近づきつつある力の持ち主だということを知れば、怖くて夜這を掛ける気すら無くしたことだろう。
可愛い姿形とは違う別の顔を持っていようとは、予想だにしないことだった。
竜馬は「さつき」の強烈な平手打ちで、頬を腫らしている晴明が滑稽にも思えたこと、それにエルに平安京の風俗について説明を受けて、晴明が決して悪い心で襲ったのではないと知って、これ以上、晴明が「さつき」の暴力を受けない様にかばってあげた。
この時、竜馬の内心は、この時代の男子が羨ましくも思えたが、口に出さなかった。
迂闊に本心を漏らすと「さつき」の怒りは尋常じゃなかったから、怒りのビンタが次に竜馬に向けられるのが怖かったからである。
この時、竜馬はもう一人の女子、死神娘が心を見透かし氷付く様な軽蔑の眼差しを向けていたのに気付かなかった。
彼女の名前、カトレーヌには「純潔」の意味があり、死神として転生したが、生前は純潔を通した、いわば聖女だったから、竜馬の不純な心が赦せなかった。
竜馬は死神娘の突然の怒りに触れ、強烈なビンタを喰らうことになった。
晴明をかばい『羨(うらや)ましいと思った』竜馬は、今度は思わぬ方向から何故なのか?分からないまま軽蔑され、理不尽な暴力を受けたのである。

天皇の屋敷は塀で囲まれた長い廊下のある平屋の建物で、広い庭を備えた帝の住まいに相応しい建て構えをしていた。
屋敷では家礼(けれい:家来)により警備が厳重に敷かれていた。
家人の話によれば夜な夜な悪霊が現れて、上(うえ:帝)を苦しめて、帝は病床に付かれているという。
身分が高そうな治安維持にあたる武官(貴族)からは『安部殿、よくきなされた、帝のお命が危なくなって来ております故(ゆえ)、魑魅魍魎(ちみもうりょう)退治の陰陽師としての、お力を存分に発揮されるがよかろう』晴明の気持ちを知ってか知らずか声を掛けた。

『まろが来たからには、一歩も帝には近づけぬから安心されるが良い』

『これは、これは心強い、皆の者、陰陽師の安倍晴明殿が、こられたからには、もう一安心だ』

『おおー、助かったぞ』とあちらこちらから家来たちの喜びの声が上がった。

この時、晴明への期待があまりにも大きいことで、つい余計なことを言ってしまったのではないか?と気付がついた。『しまった』と後悔したが後の祭りだった。
額から冷汗が流れるように落ち、逃げ出したい気持ちになった。
竜馬・「さつき」・死神娘の三人は晴明の従者として、帝の屋敷で警備をすることにした。
そして、夜がふけてゆき、古(いにしえ)の時代より、現世と冥界が近づく時間帯とされ、人ならざるものが現れる丑の刻(うしのこく:午前1時から午前3時ごろ)になる頃、靄(もや)が流れて、「それ」が現れた。
現れたのは実体を持たない半透明の苦しみに歪む顔の女性の霊だった。
帝に、どの様な恨みがあり、呪い殺そうとしているのかは分からないが、察するに哀れにも悲恋の末に命を落とした女性の霊に違いない。
家来たちが弓や刀で、この悪霊を退治しようとするが、実体がないので、一向に怯む様子が無かった。
屋敷には事前に対霊に強い死神少女に作って貰った護符(ごふ)をあちらこちらに貼っていたため、怨霊は入れないで庭の中を飛び回った。だが、いっこうに諦める様子はなかった。
武官から、ここぞとばかりに晴明に助太刀の声が掛かったので、足を震わせながらも、竜馬たちに作って貰った対霊用の金剛鈴(こんごうれい:密教法具)を必死で振りまわした。
だが、からきし、型になっていないのだから、打撃があたる様子もない。
それでも悪霊は竜馬たちに追われて、苦し紛れに晴明に近づいた時に、驚いて振り回した金剛鈴が、奇跡的に、あたり、これが霊を祓うことになった。

この時、警備をしている武士たちには、晴明の神通力が悪霊を退治したと勘違いしてしまったことで、口伝えで京の町家に広まり、晴明の陰陽師としての地位を確かなものにしていった。


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