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第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
17:氷点下の絶望
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「もういい。ひとりで走れる」
イヅメの手を振りほどいて、私は鎮守府の正面入り口が見えるビルのピロティに身を隠した。イヅメが柱の陰に屈んで私に心配そうな目を向ける。
「すまない。其方がシリウスを助けたいという思いは理解しているが、儂は──」
「大丈夫。分かってる」
柱の陰から鎮守府の方に目をやる。鎮守府の戦闘部隊が警備に出ており、複数の装甲車と投光器で周囲は物々しい雰囲気だ。イヅメを見ると、さきほどの戦いの傷が痛むのか顔を歪めている。私が道を切り拓かなければ、鎮守府に入ることも叶わない。
さきほどのように空間の向こうへ手を伸ばす。手に触れた異形の剣を引きずり出した。
「力を自在にできるようになったのか?」
「分からない。でも、強く念じれば同じことができるような気がする」
鎮守府の方へ意識を向ける。建物の周囲を固める戦闘部隊……彼らを殺すことになるかもしれない。でも、あいつらは明良やあの地下の住人たちを傷つけたのだ。利用価値がないと分かれば、迷わず命を奪う連中なのかもしれない。
「藍綬」イヅメが苦痛に歪む顔をこちらへ向ける。「儂の仲間を助ける力を貸してくれ」
悲痛な眼差しだった。あの地下に辿り着いた多くの異世界人たちは行くあてもなく、死んでいった。今、私が奮い立たなければ、彼らの死は無駄になってしまう。
私は立ち上がって、異形の剣を鎮守府の方へ向けた。
口を開けた剣から滅線を放って、戦闘部隊の隊列と装甲車を薙ぎ払った。
イヅメが柱の陰から鎮守府の正面入口へ駆け出した。私もその後を追って、異形の剣で道を拓く。車両が爆発し、アスファルトの地面に穴が開く。戦闘部隊が銃で反撃してくるが、イヅメがその太刀で弾丸を斬り伏せる。
鎮守府の正面入口を滅線で切り崩し、瓦礫が降る中をイヅメと共に駆け抜けた。エントランスホールに入り、振り向きざまに入口へ手を振ると、衝撃波が正面入口を崩壊させて、瓦礫が追手を阻む壁となった。
「こっちだ!」
イヅメの後について鎮守府の地下階層へ急ぐ。姿を現す鎮守府の人間を片っ端から斬り捨てて猛進するその姿は鬼神のようであった。それを咎めることは私にはできなかった。
目的地となる最下層の入口へのエレベーターに乗り込んだ頃には、イヅメは返り血を浴びた赤い狼になっていた。箱の中に血のにおいが漂う。彼の激しい息遣いが苛烈さを物語る。
「ナズサは」イヅメが口を開く。「儂と共に育った。そして、共に悪を断つために旅をしていた。何者にも代えがたい存在だ」
エレベーターのドアが開き、イヅメが飛び出していく。悲鳴が上がり、白衣を着た研究者たちが逃げ惑う。イヅメはそのうちのひとりを捕まえて壁に叩きつけた。
「儂と同じような顔をした者を探している」
「し……知らない方がいい……!」
イヅメは躊躇なく相手の太ももに切っ先を突き刺した。苦悶に満ちた叫びが上がって、警報が鳴り響いた。
「どこにいる! 言え!」
研究者が奥まった場所にあるドアを指さした。警報が鳴り響く中、イヅメと共に進む。ドアの向こうはそれまでのフロアと違ってコンクリート打ちっぱなしの壁の階段室だった。薄暗い階段を勢いよく駆け下りていく。空気が淀んでいるような感覚が、何か薄気味悪い。
下まで辿り着き、観音開きのドアを開いた先の広い空間は芯から凍えるような冷気で満たされていたが、そんなこと気にならないような光景が広がっていた。
「なに……これ……」
乱雑に投げ出されたような無数の異形の者たち。霜に埋もれるようにして、ゴウンゴウンといううねるような機械音の中、死屍累々の世界がそこにはあった。
「ナズサ!」
一面の霜を、降り積もった雪を掻き分けるようにしてイヅメが狼の顔を掘り出していた。そこにはもはや息づくものは感じられない。
怒りと悲しみの咆哮がイヅメの口から吐き出される。遠くで聞こえる警報を掻き消すような足音が扉の向こうに雪崩れ込んでくるのが聞こえた。私はイヅメのそばに膝を突いて、その肩に手を置いた。
「儂は……何のために今まで……!」
彼の身体の震えが手から伝わってくる。その震動が私の胸の奥に怒りの炎を点す。
私にはこの状況を打破する作戦があった。建御名方のコックピットを思い浮かべ、意識を集中した。
イヅメの手を振りほどいて、私は鎮守府の正面入り口が見えるビルのピロティに身を隠した。イヅメが柱の陰に屈んで私に心配そうな目を向ける。
「すまない。其方がシリウスを助けたいという思いは理解しているが、儂は──」
「大丈夫。分かってる」
柱の陰から鎮守府の方に目をやる。鎮守府の戦闘部隊が警備に出ており、複数の装甲車と投光器で周囲は物々しい雰囲気だ。イヅメを見ると、さきほどの戦いの傷が痛むのか顔を歪めている。私が道を切り拓かなければ、鎮守府に入ることも叶わない。
さきほどのように空間の向こうへ手を伸ばす。手に触れた異形の剣を引きずり出した。
「力を自在にできるようになったのか?」
「分からない。でも、強く念じれば同じことができるような気がする」
鎮守府の方へ意識を向ける。建物の周囲を固める戦闘部隊……彼らを殺すことになるかもしれない。でも、あいつらは明良やあの地下の住人たちを傷つけたのだ。利用価値がないと分かれば、迷わず命を奪う連中なのかもしれない。
「藍綬」イヅメが苦痛に歪む顔をこちらへ向ける。「儂の仲間を助ける力を貸してくれ」
悲痛な眼差しだった。あの地下に辿り着いた多くの異世界人たちは行くあてもなく、死んでいった。今、私が奮い立たなければ、彼らの死は無駄になってしまう。
私は立ち上がって、異形の剣を鎮守府の方へ向けた。
口を開けた剣から滅線を放って、戦闘部隊の隊列と装甲車を薙ぎ払った。
イヅメが柱の陰から鎮守府の正面入口へ駆け出した。私もその後を追って、異形の剣で道を拓く。車両が爆発し、アスファルトの地面に穴が開く。戦闘部隊が銃で反撃してくるが、イヅメがその太刀で弾丸を斬り伏せる。
鎮守府の正面入口を滅線で切り崩し、瓦礫が降る中をイヅメと共に駆け抜けた。エントランスホールに入り、振り向きざまに入口へ手を振ると、衝撃波が正面入口を崩壊させて、瓦礫が追手を阻む壁となった。
「こっちだ!」
イヅメの後について鎮守府の地下階層へ急ぐ。姿を現す鎮守府の人間を片っ端から斬り捨てて猛進するその姿は鬼神のようであった。それを咎めることは私にはできなかった。
目的地となる最下層の入口へのエレベーターに乗り込んだ頃には、イヅメは返り血を浴びた赤い狼になっていた。箱の中に血のにおいが漂う。彼の激しい息遣いが苛烈さを物語る。
「ナズサは」イヅメが口を開く。「儂と共に育った。そして、共に悪を断つために旅をしていた。何者にも代えがたい存在だ」
エレベーターのドアが開き、イヅメが飛び出していく。悲鳴が上がり、白衣を着た研究者たちが逃げ惑う。イヅメはそのうちのひとりを捕まえて壁に叩きつけた。
「儂と同じような顔をした者を探している」
「し……知らない方がいい……!」
イヅメは躊躇なく相手の太ももに切っ先を突き刺した。苦悶に満ちた叫びが上がって、警報が鳴り響いた。
「どこにいる! 言え!」
研究者が奥まった場所にあるドアを指さした。警報が鳴り響く中、イヅメと共に進む。ドアの向こうはそれまでのフロアと違ってコンクリート打ちっぱなしの壁の階段室だった。薄暗い階段を勢いよく駆け下りていく。空気が淀んでいるような感覚が、何か薄気味悪い。
下まで辿り着き、観音開きのドアを開いた先の広い空間は芯から凍えるような冷気で満たされていたが、そんなこと気にならないような光景が広がっていた。
「なに……これ……」
乱雑に投げ出されたような無数の異形の者たち。霜に埋もれるようにして、ゴウンゴウンといううねるような機械音の中、死屍累々の世界がそこにはあった。
「ナズサ!」
一面の霜を、降り積もった雪を掻き分けるようにしてイヅメが狼の顔を掘り出していた。そこにはもはや息づくものは感じられない。
怒りと悲しみの咆哮がイヅメの口から吐き出される。遠くで聞こえる警報を掻き消すような足音が扉の向こうに雪崩れ込んでくるのが聞こえた。私はイヅメのそばに膝を突いて、その肩に手を置いた。
「儂は……何のために今まで……!」
彼の身体の震えが手から伝わってくる。その震動が私の胸の奥に怒りの炎を点す。
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