前世の記憶そのままのオッサンが転生したら

ぬっこさん。

文字の大きさ
2 / 127

第2話 俺氏!現世から解き放たれる

しおりを挟む
 意識すると、真っ暗闇な無音の空間で、寝ているのか起きているのかも解らない状態であった。
 上も下も左右も無く、肌の何処にも圧力を感じないのであ。

「後何時間寝れるんだろう?……今日はあそこまで仕事を進めないと明後日には出荷出来ないよなぁ……」

 目を閉じたまま、そんな事をぼんやりと思いながら、細い光の糸を手繰るように、意識を覚醒させようとするが、マサキは未だ夢なのか寝ぼけてるのか分からなかったのであった。
 
「仕事めんどくさいなぁ……」

 途切れそうな意識の中でそんな事を思う。

 嫌な現実から逃れる様に、浮遊する意識を拡散させ、光の糸を手放したと同時に自我が消えた。

「あれ?俺って何なんだ?」

 「…………さん」

 「…………さん!」

 「…………なさん!わかりますか?」

 「クラタナさん!」

 何か声が聞こえて目覚める。
 音として聞こえたのとは違うのである。
 脳に直接声が届いた感覚がして、不意に意識を覚醒させる。
(え?なんで?俺、今寝てるよね?)

 独り暮らし生活をしているのに、何故自分が呼ばれたのか全く理解出来ず、クラタナは咄嗟に頭をフル回転で起動させたのであった。
 果たして本当に呼ばれたのか……呼ばれた気はするが、身体全体がヴェールに包まれてる様な感覚で居心地が悪いのである。
 感覚的には「もっさり感」が適当である。 
 考えても解らない……
 理解が及ばない事本能的に恐怖を感じるのである。
 (何かヤバいのかな……まさか心霊現象?)

 「こんにちは。蔵棚さん」

 姿形は全く見えないが、音が姿になって目の前に存在しているのであった。
 目を開いて居ないのに、目の前にソレが居るのは理解出来るのだが、何故自分がそれを認識しているのか解らなかったのであるが、何処か懐かしい感じが湧き上がってきたのである。
 
 「なんだ?この感覚?昔どこかで……」

 しかし、何故かこの非常識な状況を当然の様に、クラタナは受け容れられた。

 その音の形が話を続けた。

 「蔵棚さんは残念ながら、現世での仕事は終わりました。」

 微睡みの中で会話をしている様で「はぁ……」と間抜けな返事しか出来なかったのである。
 (仕事?俺まだ仕事残ってんだけど……)
 
 実際、音として口には出さず、想う事だけで会話が出来ていたのであった。

 「本来なら、現世の記憶を持ったままココには来れないんですが、ある人の願いでこうなりました。それで、貴方はどうしたいですか?」

 蔵棚は突然の出来事に思考をフル回転させて考えた。
(え?コレ夢?どうしたい?て何だ?てか今俺どうなったんだ?)

 考えると同時に声が答えたのである。

 「貴方は現世ではお亡くなりになりました。原因は地震による家屋倒壊、及びそれに伴う圧死です。」

 (マジっすか?俺死んだん?マジで?儚い人生だ……墓無い人生だわ……)

「おじさん駄洒落を言ってる場合では無いんです。
 それで希望を聞いてるのですが、直ぐ現世に転生しますか?それとも暫く落ち着いてクラタナさんのタイミングで、にしますか?」

 「ちょっ!ちょっとまって!何が何やらさっぱり分からん。直ぐに現世に転生てさ、地震?災害の後でしょ?被害状況はどうなん?てか、親とか妹はどうなった?」

 実際には声に出しては居ない。
 勿論既に死んでるからである。
 意識で会話をしてるのだ。

 「貴方の御家族も残念ながら……今回は大規模な選別だったので……」

 「選別ってなんなん?誰の選別よ?アルマゲドンとかそんな感じか?
 と言うか……そっか……二度と会えないんだな……色々迷惑掛けたし……お詫びとお礼を言いたかったな。」
(前に見たアニメとかだと、こういう場面て悲しんだりしないけど、やっぱ意識あるまま今生の別れ……いや、俺も死んでるけど、ケジメがなく二度と会えないのは辛いなぁ……)

「で、どうします?余り時間が無いのですが……」

「今、結構これでも混乱してるのに、何故焦らすかな?
 先ず、何故俺は意識あるの?夢の中みたいな感じだけどさ。それと、選択ってそれしかないの?」
と素直に疑問を意識の中で問いかけたのであった。

「それは、誰とは言えませんがその人からの願いです。」
「選択は他にも有りますが、貴方の願いはなんですか?」

(願いと言われてもなぁ……もう死んでるし……てか、かなりせっかちな神様か仏様だな……)

 う~ん……と、寝惚けてる頭を使い、色々と良い案を考えては見るが、急に言われても出てくる訳ないのである。
 結構、クラタナにとっては、究極の選択を短時間でしてる様なものである。
 一般的なのは、チート能力で転生とか、ハーレム展開とか……うむむ……なんか引っ掛かるんだよな。

 後悔がある……としたら……
 
 そうだ!

 「俺の願いは、家族に会ってちゃんと別れとお礼を言いたい!」

 「解りました。その場所に転生させますが直ぐには見つからないと思います。何せ現世から、大量選別で沢山の人がコチラに来てますから……」

 (だから、大量選別って誰がしてんだよ?要は俺は落選って事なのか?)

 「最期にコレを。」

 (コチラってどちらよ!)

小さな光が蔵棚の方に向かって吸い込まれたのである。
(コレってなによ?説明無いと全くわからん!もう少しチュートリアル長くても良くね?説明足りんて!)

 「貴方は現世の記憶を持ったまま、別の世界に転生をします。
 他の方が記憶を持っているかは分かりません。
 ただ、忘れないで下さい、貴方には既に力がある事を……」

(……力てなんよ?力?解り易いチート能力キボンヌ!そして苦労の無い転生を所望する!)

「では、二度目の再開でしたが、お元気で。あ、そう言えば今回はお亡くなりになられてるんでしたね(笑)ご武運を!の方が良いかもですね。でわ!」

 (おい!笑!じゃねぇわ、バカヤロウ………)

(と言うか説明それだけ??まぁ夢とか場面すぐ変わるもんなぁ…てか、痛みを感じずに逝けたのは良かったのか、死んだ事は悪かったけど。マジでこれで終わりなのか?信じられないんだけど……マジで俺、これからどうなんの?)


 蔵棚正貴、享年46歳

 そして転生人生が始まるのであった。



 (そう言えば何処に転生するのか、どんな場所なのかも教えてくれなかったよね。そこでまた死んだらリトライって有るのかな?てか、どっかで会った気するんだよな?何時、どこでだ?)


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...