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ヘタレ主人公
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「 いつも水汲みで歩いて居た山道だが、こうも暗いと歩きにくいな。」
少し息を切らしながら独り言を呟く。そして転ばないように地面を見ながら歩くが、蔦に脚を取られそうになるマサキ。
「っぶねっ!」
ヒヤッ!として体勢を立て直し、また歩き出す。
(やっべぇ!コケるかと思った……)
「大丈夫?」と先を行くティナが声を掛けてきた。
「うん。大丈夫。」
ティナも、自分の担いでいる桶より一回り小さい物を担いで登って居るのだが、まだ水が入ってないとは云え、とてもしっかりした足取りだ。
「長年の慣れなんかねぇ…この小さい身体で良くもまぁ……」とティナの後ろ姿を見ながら思う。
すると、その時何かを感じ取ったのかティナが立ち止まった。
急に立ち止まったので追突しそうになるが寸でで止まった為、桶がぶつかる音が森にこだまする。
「どした?」
マサキはティナに小声で問い掛ける。
「何か居る。」
(何かってなんでしょうか?ティナさん……(ガクブル)
マサキは担いでいた桶を地面に降ろし、ホックを外しマチェットを引き抜いた。
「さっき、攻撃する時は躊躇しないでって言ったけど、今はまだ行きだから、出来るだけやり過ごしたい。」
ティナはそう静かに言って、暗がりの殆ど見えない先をジッと見ている。
「襲われたら仕方が無いんだよな?(小声)」
マサキがそう言うと
「そうなんだけど、帰りにまた此処を通るでしょ?そんな所に血の匂いがしてれば他の魔獣や獣が集まって来るからね……」
こちらを見ずにティナはそう言った。
「なるほど……」
(確かに血の匂いで他の動物が集まるってのは前世でも聞いた事あるな……)
魔除けのヴーンという音と葉の揺らぐ音が森を駆け巡り一層緊張感を増す。
(そう言えば、前逃げれた時のアレなんだったんだろうなぁ……)
マサキはふとそんな事を思い出す。
暫く膠着状態が続いたが突然緊張感の糸が切れ、それを察してか警戒を解いた。
「行きましょ。」そう言ってティナは歩き出した。
マサキは構えていたマチェットを鞘にしまい、桶を再び担いでティナの後をついて行く。
(今の感覚なんだったんだ?まさか!コレがニ○ータ○プって奴か?全然俺には見えなかったけどさ……)
周囲が完全に闇になる頃、漸く湧き水が出ている池に着いた。
「ふぅ~っ!」とため息を一つ吐き、腕時計を傾け時刻を確認すると十九時過ぎであった。
「大分掛かっちゃったな……」息切れをしながらそう言うと「仕方が無いよ。時間が時間だし。」と相変わらずローテンションで答える。
(どうしたもんだかなぁ………)
黙々ととティナは桶に水を汲んでいる。
「まだ帰りも有るんだから気を抜かないでね!」
マサキの緊張感の無さを察してか、そう言って釘を刺した。
「解ってるよ!」
(一応緊張はしてるつもりなんだけど……)
ティナの桶がいっぱいになった所で交代するが、暗闇で手元が良く見えない。
「ティナ!手元、見えないんだけど灯りとか無いの?」
「無いよ!」
「魔法とかも?ほら、良くあるじゃん光が出て周りを照らしたりするの!」
「有るけど、今は使いたくない……かな。」
「なんで?」
「だってこっちの位置バレるでしょ?」
「だれに?」
「魔物とか獣とか。」
「なるほど。」
「それに魔力を消費しながら歩いてて魔獣に会ったらどうするつもり?」
「あ、そっか!」
「うん。そゆこと。」
「じゃ、松明とかじゃ駄目なの?」
「手ぶらならそれでも良いけどね。」
「納得です……」
(文明の利器が恋しい……)
確かに空荷の時は片手で担げるが、桶に水が入ればそうも行かない。
暫くして水を溜めるのにかなり時間を要したが、漸くいっぱいになり帰路に着く為立ち上がる。
今日はいつもより一回り大きい桶なのだが、思っていた以上に重量が増して足元がおぼつかない。
ヨタヨタとティナの後を付いて行くマサキ。
「大丈夫?ヨタヨタしてるけど、あんま水零さないでよ~!」
「う、うん。」
(とは言え、足元暗い上に重さでバランス取りにくくて、それどころじゃ無いわ!)
「ほんと大丈夫?」
「ちょ、俺、余裕ナッスィング!」
慣性の法則に従ってバタバタと歩く。
「ちょっと休む?」
「いや、良い!」
(今止まったら絶対動きたくなくなる!)
「じゃ森出たらちょっと休むから。」
「了解。」
はぁはぁと息切れをしながら山道をバタバタ下る。
(うぅ~重っ!今は魔獣とか獣とか関係ねぇー!もし今出たらコロス!マジコロス!早く休みてぇ~!)
下りなので必然的に歩く速度が上がり、足の指先に力が入る。
(何この苦行……てか桶重っ!)
前を歩くティナはいつも通りに歩いており、結んでいる髪がテンポよく右に左にと揺れる。
(何だかメトロノームみたいだな。)
帰りは重さの事もあって、周りを一切気にせずティナの揺れる髪を見ながら歩いていたので、来る時とは裏腹に早く森を抜けた。
どうにか森を抜け、桶を置いて草原に大の字に寝転ぶと息切れをしてる為心臓の音が耳元で聴こえて来る。
「はぁ~……疲れた……」
ポケットからゴソゴソと煙草を取り出し、魔法で火を付けて一服。
サァーっと草原に風が吹き抜けて灰が顔に落ちそうになり起き上がるマサキ。
「疲れた……(ボソ)」
「お疲れ様、っても後少しだから頑張って!」
ティナはそう言い魔除けをしまう。
「そうだな、後ひと踏ん張り!」と言って吸殻をポケットに入れて、立ち上がり桶を担ぐ。
「あ、ちょっと待って!」
ティナが正面に回り込み、マサキの胸の辺りに手をかざす。
すると掌から蛍火の様な光の玉が現れてマサキの中に消えて行った。
「いま、回復掛けたから頑張ってね!」
戦闘行為も全く行わず、ただ水汲みで山に登っただけで回復魔法をして貰ったマサキであった。
少し息を切らしながら独り言を呟く。そして転ばないように地面を見ながら歩くが、蔦に脚を取られそうになるマサキ。
「っぶねっ!」
ヒヤッ!として体勢を立て直し、また歩き出す。
(やっべぇ!コケるかと思った……)
「大丈夫?」と先を行くティナが声を掛けてきた。
「うん。大丈夫。」
ティナも、自分の担いでいる桶より一回り小さい物を担いで登って居るのだが、まだ水が入ってないとは云え、とてもしっかりした足取りだ。
「長年の慣れなんかねぇ…この小さい身体で良くもまぁ……」とティナの後ろ姿を見ながら思う。
すると、その時何かを感じ取ったのかティナが立ち止まった。
急に立ち止まったので追突しそうになるが寸でで止まった為、桶がぶつかる音が森にこだまする。
「どした?」
マサキはティナに小声で問い掛ける。
「何か居る。」
(何かってなんでしょうか?ティナさん……(ガクブル)
マサキは担いでいた桶を地面に降ろし、ホックを外しマチェットを引き抜いた。
「さっき、攻撃する時は躊躇しないでって言ったけど、今はまだ行きだから、出来るだけやり過ごしたい。」
ティナはそう静かに言って、暗がりの殆ど見えない先をジッと見ている。
「襲われたら仕方が無いんだよな?(小声)」
マサキがそう言うと
「そうなんだけど、帰りにまた此処を通るでしょ?そんな所に血の匂いがしてれば他の魔獣や獣が集まって来るからね……」
こちらを見ずにティナはそう言った。
「なるほど……」
(確かに血の匂いで他の動物が集まるってのは前世でも聞いた事あるな……)
魔除けのヴーンという音と葉の揺らぐ音が森を駆け巡り一層緊張感を増す。
(そう言えば、前逃げれた時のアレなんだったんだろうなぁ……)
マサキはふとそんな事を思い出す。
暫く膠着状態が続いたが突然緊張感の糸が切れ、それを察してか警戒を解いた。
「行きましょ。」そう言ってティナは歩き出した。
マサキは構えていたマチェットを鞘にしまい、桶を再び担いでティナの後をついて行く。
(今の感覚なんだったんだ?まさか!コレがニ○ータ○プって奴か?全然俺には見えなかったけどさ……)
周囲が完全に闇になる頃、漸く湧き水が出ている池に着いた。
「ふぅ~っ!」とため息を一つ吐き、腕時計を傾け時刻を確認すると十九時過ぎであった。
「大分掛かっちゃったな……」息切れをしながらそう言うと「仕方が無いよ。時間が時間だし。」と相変わらずローテンションで答える。
(どうしたもんだかなぁ………)
黙々ととティナは桶に水を汲んでいる。
「まだ帰りも有るんだから気を抜かないでね!」
マサキの緊張感の無さを察してか、そう言って釘を刺した。
「解ってるよ!」
(一応緊張はしてるつもりなんだけど……)
ティナの桶がいっぱいになった所で交代するが、暗闇で手元が良く見えない。
「ティナ!手元、見えないんだけど灯りとか無いの?」
「無いよ!」
「魔法とかも?ほら、良くあるじゃん光が出て周りを照らしたりするの!」
「有るけど、今は使いたくない……かな。」
「なんで?」
「だってこっちの位置バレるでしょ?」
「だれに?」
「魔物とか獣とか。」
「なるほど。」
「それに魔力を消費しながら歩いてて魔獣に会ったらどうするつもり?」
「あ、そっか!」
「うん。そゆこと。」
「じゃ、松明とかじゃ駄目なの?」
「手ぶらならそれでも良いけどね。」
「納得です……」
(文明の利器が恋しい……)
確かに空荷の時は片手で担げるが、桶に水が入ればそうも行かない。
暫くして水を溜めるのにかなり時間を要したが、漸くいっぱいになり帰路に着く為立ち上がる。
今日はいつもより一回り大きい桶なのだが、思っていた以上に重量が増して足元がおぼつかない。
ヨタヨタとティナの後を付いて行くマサキ。
「大丈夫?ヨタヨタしてるけど、あんま水零さないでよ~!」
「う、うん。」
(とは言え、足元暗い上に重さでバランス取りにくくて、それどころじゃ無いわ!)
「ほんと大丈夫?」
「ちょ、俺、余裕ナッスィング!」
慣性の法則に従ってバタバタと歩く。
「ちょっと休む?」
「いや、良い!」
(今止まったら絶対動きたくなくなる!)
「じゃ森出たらちょっと休むから。」
「了解。」
はぁはぁと息切れをしながら山道をバタバタ下る。
(うぅ~重っ!今は魔獣とか獣とか関係ねぇー!もし今出たらコロス!マジコロス!早く休みてぇ~!)
下りなので必然的に歩く速度が上がり、足の指先に力が入る。
(何この苦行……てか桶重っ!)
前を歩くティナはいつも通りに歩いており、結んでいる髪がテンポよく右に左にと揺れる。
(何だかメトロノームみたいだな。)
帰りは重さの事もあって、周りを一切気にせずティナの揺れる髪を見ながら歩いていたので、来る時とは裏腹に早く森を抜けた。
どうにか森を抜け、桶を置いて草原に大の字に寝転ぶと息切れをしてる為心臓の音が耳元で聴こえて来る。
「はぁ~……疲れた……」
ポケットからゴソゴソと煙草を取り出し、魔法で火を付けて一服。
サァーっと草原に風が吹き抜けて灰が顔に落ちそうになり起き上がるマサキ。
「疲れた……(ボソ)」
「お疲れ様、っても後少しだから頑張って!」
ティナはそう言い魔除けをしまう。
「そうだな、後ひと踏ん張り!」と言って吸殻をポケットに入れて、立ち上がり桶を担ぐ。
「あ、ちょっと待って!」
ティナが正面に回り込み、マサキの胸の辺りに手をかざす。
すると掌から蛍火の様な光の玉が現れてマサキの中に消えて行った。
「いま、回復掛けたから頑張ってね!」
戦闘行為も全く行わず、ただ水汲みで山に登っただけで回復魔法をして貰ったマサキであった。
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