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ポーラさんと情緒不安定

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 マサキはポーラに、所謂〖品定め〗をされていた(笑)

「いやぁ~……そのまま思った事を言った迄ですよ!」
(これもハーブティーのお陰なんだろうか?頭が凄くクリアなった感じがする……)

「それが難しいのよ!人ってどうしても他人から良く思われようとするから相手の機嫌を取ったり、変な見栄を張ったりするでしょ?」
(アレ?この人なんか最初の印象と変わって来たぞ?)

「はぁ……まぁ、でも、それは仕方が無いんじゃ無いですかねぇ?」

「そうね、本音と建前があるからね。それでも貴方は素直に感想を言ってくれたわ。」

(そ、そんなに大層な事を俺は言ったつもり無いんだが……?)

「ごめんなさいね、最初に変な事を聞いて、貴方を試す様な真似をしてしまって。」
とポーラは自ら頭を下げた。

(なるほど、何か違和感があったのはそう云う事だったのか。)

「いえ、自分は何とも思って無いので頭を上げて下さい!」
(今まで頭を下げる事は有っても、下げられる事は殆ど無かったから苦手だわぁ~……)

「ゴメンね!」
ティナもこっちを見て照れ臭そうに謝罪をする。

「大丈夫!別に、こういう事は仕方が無いから。」

 普通、得体の知れない、見ず知らずの年の離れた男女が数ヶ月も一緒に暮らしていれば、こういった心配をする人が出て来るのも不思議では無かった。

「で、この先貴方はどうするの?」

(どうするのと聞かれても、ポーラさんがどこまで俺の事を知ってるか解らないから話しようがないぞ!)

 チョイチョイとティナに服を引っ張られ、ウインク&サムアップしている。

(え?全部話しちゃったの?!そりゃ口止めはしなかったけどさぁ~……)

 言葉煮詰まり言い淀んでいると、こちらの気持ちを察してか「大丈夫よ!口外はしないし、どうこうするつもりは無いから!」
とポーラさんが口を開いた。

「ポーラさんが、どこまで自分の情報をご存知か解り兼ねますが……」と前置きして
「いづれは、この世界に来た目的を果たそうと思って居ます。」とハッキリとした口調でマサキは告げた。

ポーラは「そう……なのね。」と言ってティナを見る。

(なんか不味い事言ったか?でもここで変な事言ってもダメだしなぁ……)

ティナははにかむ様な顔でこっちを見た。
(え?なんだなんだ?)

「まぁ良いわ!どっちにしろ直ぐでは無いだろうしねぇ!そうそう、貴方井戸掘るんですって?もし水が出たならウチもお願いするわね!」

(まぁ、解り易い話の逸らせ方だけど、取り敢えずそれに乗っておこう……)

「あ、解りました!っても余り期待はしないで下さいね!」

「ええ、解ってるわよ!」

 そんな感じでポーラさんとの話も終わりハーヴィーを後にした。

 そして帰宅途中なうだがティナは終始無言。

(気まずい……原因の解らない無言はマジ気まずい……)

「あ、帰ったら水汲みいくんだよな!(汗)」
(少し不自然すぎたか?)

「うん。」

 ジャリっジャリっと、二人の地面を歩く音が良く聴こえる。

「荷物、クロスビーさんが手配してくれて助かったよな!」

「うん。」

(ふぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!こういうのマジ苦手!どうすりゃ良いんだ!)

 青空には雀が飛んでいる。

(い、胃が痛い……)

「水汲み何回位行けるかなぁ……」

 わざとおどけたように、空を見ながらマサキが話す。

「う~ん……どうだろ?」

(ホッ……やっと「うん。」以外話してくれた。)

 そんな事を思っていると突然
「ゴメンね。」
とティナが口を開いた。

 余りの突然の謝罪に「何が?」と思ったが、それについて肯定も否定も出来ずマサキは言葉を失った。
 
 そんな状態が暫く続いたが、ティナは何かを吹っ切ったかのように「水汲み回数行くの嫌でしょ?」と聞いて来た。

(感情の振り幅広過ぎだろ!)

「うん。まぁなぁ~」

「なら今日はちょっと大きい桶で汲みに行こ!」

「う、うん……」
(なんつーか、ティナさん情緒不安定?ハッ!まさか!)そう思い直ぐに「ティナは無理しなくても良いぞ!俺一人で行っても良いし。」と伝えた。

「え?なんで?私も行くよ。」

 一瞬、ムッとした表情になったが感情を立て直して「大丈夫!なんでもないから!」とティナは言った。



 言葉少なく家に着くと、既に旅の荷物が置いたあった。

「先越されたなぁ!(苦笑)」

「そうね、歩いてる時、誰も私達の事追い越さなかったからかなり前に持って来てくれたのかもね。」

( なんつーか……やりづれぇ………)

 ティナはそう言って、表に置いてある荷物を家の中に移動し始めた。

「俺も持って行くから何処に置くか言って!」
(気を遣うの……めんどくせぇ~……)

「解った!取り敢えずは、荷物全部中に入れちゃって。まだ水汲みも有るから、それが終わってから夜に片付けよ。」

「了解。」

 荷物を部屋に入れる時も、必要以外の言葉は喋らず、黙々と運び込んだ。

 水汲みに行く最低限の装備を整えて草原に向かった。

 時折風が吹き、サラサラと葉の音が重なり合い、辺りを支配している。

「なんだかんだで夕方になっちゃったな…」と声を掛けると「うん、暗くなるなる前に帰りたいから急ご。」
と言いティナは魔除けを起動する。

「解った!」

 森の中は日中でも薄暗いのに、夕暮れ時になり更に暗くなっている。

「大分暗いな……」

 水汲みは今まで午前中の間に終わらせて居たので、この時間に森に来る事は初めてだった。その為、思いの外暗くなっている事にマサキは戸惑いを隠せなかった。

「気を付けてね。それと、魔物でも獣でも攻撃する時は躊躇しないで。」

 思わずゴクリと唾を飲んだ。
(なに、このフラグの立て方は……)

「じゃ、余り離れないで着いてきてね。」

「解った。」
(何も出て来なきゃ良いけど……)


こうして、二人は警戒しながら森に入った。
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