【異端ノ魔導師と血ノ奴隷】

嵩都 靖一朗

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第六章◆精霊王ノ瞳

精霊王ノ瞳~Ⅶ

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あついくもつらぬいたのは、月灯つきあかりみちび秋風しゅうふう

竜巻たつまき対現象ついげんしょうたる下降気流かこうきりゅうは、晴夜せいやを切りひらき。
移動中いどうちゅうだった人々の多くが、強風きょうふう屋内おくないへとんだ。

山岳さんがくみねあつまるくもはやがて、国境こっきょうに雪をらせるだろう。

かたみやこいしずえとなる岩盤層がんばんそう直下ちょっかにて。
戦線せんせんるアイゼリアの兵士達へいしたち捕捉ほそくしたのは、どす黒く肉々しい何か。

全貌ぜんぼうとらえきれず、実態じったいこそ不明確ふめいかくだが。
石塔せきとうに根をる巨大樹のこずえに見えかくれするそれは、
ズルズル と部分的ぶぶんてきしずみをかえす。

触手しょくしゅのよう。

何処どこからともなく聞こえてくる息吹いぶきうなり声にもて。
とある兵士は大気質たいきしつ検知けんちこころみた。

そして挙手きょしゅ
彼は一言で結果を周知しゅうちする。

沼気メタンです」

発生源は言うまでもない。
対象たいしょう見張みはる兵士の一人が言った。

「となると ... 迂闊うかつ火器かきは使えんな」

可燃性瓦斯ガス単体に爆発性は無い。
注意すべきは燃焼範囲ねんしょうはんい火源かげんのほう。

ようするに、酸素をはらんだ当周辺とうしゅうへんこそ危機的ききてきという事だが。
みやこに吹く風は、彼等かれら味方みかたしている。

先頃さきごろ損害そんがいし引いても。
人命被害にいたってはいないだけ、い風にすくわれている気分だ。

そんな彼等かれらのもとへと。

き下ろす気流をまとめあげ、送り込んでいたのはノ魔導師である。
たずさえたつえり下ろし、
うでかたじくまたした等身とうしんからめ取るように、左から右へ。

また、同時にえがかれる大小様々な魔法陣は、あおき光を宿やどいんによりつむがれた。

いで前方をしめすと。
波打つ大気が暴風ぼうふうとなって、城下街を、人々の背後を押し通る。

大人の体が浮きかける風圧ふうあつ
中には前のめりに吹き飛ばされ、人々の足元を転がる子供もいた。
しかし誰かしらが受け止め、とも避難ひなんしている様子。

そんな状況じょうきょうにあっても。
期待のかんなぎを見上げる若者のひとみあこがれにちて、キラキラ とかがやいているのだから。

見届みとどやくとしては複雑ふくざつ心境しんきょうである。
若者から視線をらすヴォルトの表情はくらい。


何故なぜだろう ... ...


その時、何処どこかで、誰かが思った。
このところの日常にちじょうり返りながら。

魔法って何?
錬金術って何?

合間あいまを見て子供達の質問に答えてやっている若手のかんなぎは、
あえて小難こむずかしい話を聞かせているようだった。

光子こうし多元量子たげんりょうしを各次元へ透写とうしゃし、むすび付け。
 また、それら無数の情報は第六次元へ帰属きぞくする記憶にらぎをしょうじ、この世の物理に反映はんえいする』

『 キャハハ! 』
『 フフフ! 』

『わかんない!』

まあ、当然。
すると彼は応接室おうせつしつ窓掛けカーテンを閉め、小椅子スツールに本を数冊ほどんで電灯でらし。
周辺しゅうへんを歩きながら、こう話す。

『では、ある物体を光で照らす。
 私と君達とでは、目に見えるかげの形も、位置も面積もことなり、様々。
 そこで私は呪文をとなえる。君がいる角度から見た影にまつわる情報がしいと』

『イヤだ!』
『イイよ!』

フェレンスはほがらかに笑った。

『そう、自身とはことなる見え方、意見をあらわす他者の影響えいきょうもあって、君達の心はらぐ。
 第六次元の揺らぎも、それに近い』

『やっぱり、わかんないって!』

神秘学上の第六次元とは神々ノ意識スフィラしめす言葉。
魔法や錬金術というのは、人の心を動かす力とている。

『て言うか、かんなぎ様って何でも自分で出来るんじゃないの?」

フェレンスはだまって首を横にった。
そして続ける。

『けれど、君達が私の言葉におうじてくれたなら、
 私は自分では見ることのできなかった角度の情報をることが出来る」

『それなら俺にも出来るでしょ!』
『誰が、お前の言うコトなんか聞くんだよ』
『そこは魔法の言葉を考えてだな』
『うわ、何か鳥肌たった。キモっ!』

子供達のやり取りを聞きながら微笑ほほえむ彼は、
同じ目の高さで姿勢しせいを見せた。

『私も、君達が考えみちびき出した答えに興味きょうみがある。知りたい。だから ... 教えて欲しい』

『えー』
『そんなの、俺、まだ ... よく分かんないし』
『 ハハハ! でも考えとく!』

すると子供達はみなれくさそうに走りる。
やっと他の事をして遊ぶ気になったようだ。
けれども、それだけが理由りゆうではない。

興味きょうみ対象たいしょうが自分達と同様どうよう、興味をしめしてくれた事に満足したのだ。

かんなぎよそおうフェレンスは、以前と打って変わり。
人々に慈愛じあいしめすようにせっしている。

愛情にかんする解釈かいしゃくの仕方、理解するにいたらぬ者の演技えんぎとは思えないほど。
温かく、優しく、つつみ込むように。

そして、あの若者もまた、そんな彼にかれた者の一人なのだ。

朦朧もうろうとしながらも、散乱さんらんした記憶の整理せいりをしていく。
これまでの出来事をり返っていたのは、カーツェルだった。

若者は、誰かに相談しうだんしたかったのだそう。
じつの父親が、息子である自分と他者を比較評価ひかくひょうかあざける事について。

まわりの人間に話しても、返ってくるこたえはだいたい想像がつく。
傷つきたくない。嫌な思いをしたくない。逃避とうひばかり。
何のためそうしているのか、意味すら分からなくなってきたと言う。

『こんなちっぽけなコト ... 
 あなたのほうが、きっと、ずっと大変ですよね。ごめんなさい』

前屈まえかがみにうつむく彼は、
ひざに乗せた両手りょうてを強くにぎめ。
ついにはだまってしまった。

父親の言う最低限の範疇はんちゅうおさまったところで、反応は変わらない。
どこまで行っても出来て当然とうぜん
初めから出来ない時点で底辺ていへん見做みなさされてしまう。

環境かんきょう状況じょうきょうつらいと感じる度合どあい、何もかもが人それぞれなはずなのに。
自分自身でさえ、なさけないと感じてしまうのだ。

聞いていると、そうやって見下してきた相手のうったえに耳をすような父親ではなさそう。
上手くやっていくため努力しても否定ひていされるなら、彼の成長をのぞんでいるのではなく、
自身の不幸を彼のせいにしたいだけではないだろうか。

自分が変われば、改善かいぜんするのではないかというような視点してんの置きえ、
可能性を考慮こうりょしようとしないばかりか。
そうせざるをないのは他者がおとるせいと考え、不満をいだいてしまうような。
固執こしつした価値観、他責思考たせきしこうの持ち主と思われるので。

転嫁行動てんかこうどういた要因よういんさぐり。
別途べっと解決かいけつする必要がある。

一通ひととお考察こうさつえたところ。
フェレンスは次に、若者を気にけた。

彼の前には、手付かずのお茶。
主人の目配めくばせをさっしたカーツェルは、すぐに引き取ってれなおす。
しばらくしてし出されたのは、ふわりと湯気ゆげの立った紅茶。

『良ければ ... 一度、のどうるおして、深呼吸しんこきゅうを』

言う通りにすれば、すくわれる ... ... ?

若者は少しだけふるえながら、ゆっくりとした動作でしたがった。
わずかな期待を見受みうけ、フェレンスは提案ていあんしていく。

『あなたはまず、比較ひかくされている対象を自分と置きえてみてはどうだろう。
 あなたが先に見る誰かの背中、それは未来にいるあなた自身の姿かもしれないと』

『未来の俺、ですか』

『そう。いずれあなたは辿たどくのだから。
 そこにあるびしろでしかない。
 何でも好きなものを取り入れていける』

『でも、何をしたらいいのか』

無理むりに、考えなくても良いのでは?』

『え?』 

『何か理由があるのかも。
 しかし、それらは気付きにくい。
 
 新たな知識をたりなど。
 そなええが必要な事もある。

 きっとあせるだろう。
 つらくないわけはない。
 悲しい思いもするはず。

 だからうつむいてもいい。
 立ち止まってもいい。

 けれど ... どうせ目指すなら、出来るだけ早く立ち上がった方が有利ゆうりだ。
 前を向いて、歩きなさい。
 あなたはこれから先、ずっと成長し続けていくのだから。

 どうしても進めない時は、その場で出来る事で良い、方法を探して。
 考えて。分からなければ、少し休憩きゅうけいするといい。

 そうして時間をあますようなら ... また、私と話をしよう』

フェレンスに憂鬱ゆううつを打ちけた者はみな
彼の言葉を忘れぬよう、無くさぬよう、閉じこめる。
胸の中。心の奥底おくそこに。

自分もそうしてきた。
だからこそ、分かってしまうのだ。

カーツェルは思う。

この感情は ... フェレンスにおもいをせる者への ... 共感きょうかん、だろうか。

いや、違う ... ...

答えをみちびき出すためのかぎは、
若者がおとずれた日の深夜しんやにフェレンスとわした会話の中。

なやまましな彼を待ちかまえていたのはとう主人しゅじん
戸締とじまりをませたあとの事だった。

『今日、仕事の最中さいちゅう。何か納得なっとくのいかない事でもあったか?』

カーツェルは顔をそむけて弱々しく答える。

わたくしおさなかったころも、彼等かれらと同じように ...
 気兼きがねねなく旦那だんな様と話せたなら、どんなに良かったかと』

『そうか。それは奇遇きぐうだな』
『奇遇?』

たいして清々すがすがしいほど、意外いがいな反応を見せる。
フェレンスは、とてもうれしそうな表情。

何故なぜだろう ... ...

皮肉ひにくを込めて言ったつもりなのに。
カーツェルはどろきをかくせず、目を見張みはった。
するとフェレンスが言いくわえる。

『私も。当時のお前と、そのような話をすることがあったなら何と言って答えようかと。
 いつもお前の面影おもかげかさねて会話していた』

愛敬あいきょうしめそうにも、なかなかむずかしい。
見抜みぬかれてもこまるので、より親身しんみになって考えられるよう意識したとの事。

ああ ... なんて残酷ざんこくな ... ...

そうは思っても、悪い気がしない。

わたくしとのり取りを念頭ねんとうに置き、かりなくえんじてらっしゃると?』

フェレンスは素直すなおに答えた。

『そう。何せ ... 私が愛しているのは、お前しかいないので』

その時、彼をり立てたのは、
言葉であらわせるような心情しんじょうではない。

主人をさげすむ者も、恋慕れんぼする者も、ゆるせない ... 認知的不協和にんちてきふきょうわを。
欲情よくじょうまみれた執念しゅうねん上書うわがきし、自我じがたもっている状態じょうたいだ。

フェレンスがまなび、しめそうとしている愛情を
ひとめするためには、どうしたら良いだろう。
気付けば、そんなことを考えている。


カーツェルは知っているはずだった。


某英雄ぼうえいゆうせた特別とくべつ愛情あいじょうについて。
当時は疑問ぎもんいだくにもいたらず、たずねることすら出来なかったと言う相手が。
あらため人のじょうれ、自己拡張につとめるようになった経緯けいいを。


ただ、忘れていただけ。


何故なぜだろう ... ...

朦朧もうろうとしながら、カーツェルはり返す。

何故なぜなんだ ... ... !

お前は、何度も俺に言ってた。
お前は、何度も俺にうそをついた。

アイシテル?

初めて使う言葉なんかじゃないだろう?
それなのに俺は ... 忘れてた。
どうして。どうして忘れなきゃならない!

「フェレンス ... どうして、お前は ... 」


何のための演技えんぎか、うそか。


混乱こんらんしていると、意図いとせず向き合う事になる。

ああ、でも、てよ ... ...

はらえかねるいきどおり。

これは、お前のものでもあるのか ... グウィン ... ...

目の前にあらわれた幻影げんえいは、目を見開みひらいてカーツェルの胸の中央ちゅうおうに手をばした。
ところがだ。またしても意識をうしないかけていたはずのカーツェルが、その手をかえす。

フェレンスにっていいのは俺だけ。
したっていいのは俺だけ。
愛していいのは俺だけ。

負ノ共感ふのきょうかんは、決して相容あいいれぬもの。
散り々ちりぢりになった某英雄ぼうえいゆうの記憶を再生さいせいしたところで、反発はんぱつうだけなのだ。

それは最早もはや敵対意識てきたいいしき


寒気さむけがする。


その時ヴォルトはだならぬ気配けはいを感じ、身震みぶるいした。
さらに向きなおると。
路地裏ろじうらから姿すがたをあらわした男が、フラリ ... フラリ ... 足を引きずるようにして歩く。

カーツェルだった。

どうしてやつが!? 今、ここに ... ... !?

クロイツのひとみらわれ、機能不全きのうふぜんによる墜落後ついらくご
気絶きぜつしたはずの侍従じじゅうが、まさか二人いるわけはないし。

が目をうたがったのもつか

頭をかかうめさまは、
正気しょうきうしな彷徨さまよ薬物中毒者やくぶつちゅうどくしゃのよう。
おくれて避難ひなんする人々の誰もが危険人物と思い、けてとおった。

彼のこころは、ここに無い。

ただ本能的ほんのうてきに。
危険因子きけんいんし排除はいじょすべく、辿たどいたのだ。

そして、おに形相ぎょうそうせまる。

カーツェルに気が付いた若者わかものは、あやうくこしかけた。
けれどもとどまって逃げ出す。

そこへ、すかさずって入ったのは、ヴォルト。

うでかたじゅんひねかえし、乗り上がると。
呆気あっけなくたおんだので拍子抜ひょうしぬけしたが。
相手には抵抗ていこうするどころか、頭の向きを変えあたりを見る余力よりょくも無いよう。

朦朧うろうとしているくせに。
らしながら、ここまで来たらしい。

彼の何が、そうさせているのだろう。

思いまったヴォルトが、いきてたところ。
逆光ぎゃっこうの中、目の前にうつり込む。

見覚みおぼえのある人影ひとかげ

「やるではないか。ウルクア ... 思いのほか見識高けんしきたかい男だな」

クロイツの声だ。

思いがけぬ展開てんかい相俟あいまって。
いささ気不味きまずい。

ヴォルトはたずねた。 

「おいおい。とんだ臆病者おくびょうものと言ってなかったか?
 さっきまでのあんたに、こんな猿芝居さるしばいを見に来る余裕よゆうなんて見えなかったが ... 何しに来た?」

し、答えたのはノシュウェル。

「それが、わりと今でもギリギリなのに。
 この人ときたら ... 一度、言い出すと聞かなくてねぇ」

勿論もちろん、止めはした。
こちらにとってかなめノ人であるからして。
無理だけはしてしくない。

れて行けとおどされたところでらうのは、へなちょこパンチだし。
さからいようはあったのだ。

しかしさえぎられる。
クロイツは言った。

「王党派の諜報員共ちょうほういんども貴様きさま達を野放しにしておく理由りゆうについて、少し話したい」

逆光ぎゃっこうの中。

気怠けだるそうな足取あしどで、一歩、二歩、るうち。
クロイツは、挑発的ちょうはつてき語気ごきを強める。

「まあ、安心あんしんしろ。共有された情報の齟齬そごなど気にしてもないぞ。
 我々級われわれ クラスになれば、むしろ有益ゆうえき

 国境問題にかこつ会談かいだんを繰り返す帝国の官僚かんりょうとアイゼリア王党派おうとうは蜜月みつげつ
 双方そうほう営利えいりなど知ったところで 今更いまさら

 興味きょうみは無いのだ。

 例え貴様等きさまら共々ともども ... 同じ弱みをゆうする立場であり、
 我々われわれ独断的介入どくだんてきかいにゅう牽制けんせいするための当て馬だったとしてもな」

耳をかたむけるヴォルトは何をさっしたか。
少しばかりうつむいて溜息ためいきする。

「だが、しかしだ」

耳がいたい。

配下はいか動員どういんにあたるウルクアの独断専行どくだんせんこうが目にあまる。
 これ以上は看過かんかできぬのだ。分かるか?」

見ると、不意ふいすべり落ちていく視線。
クロイツのひとみは、ヴォルトがおさえ込む男を見詰みつめた。

内通ないつううたがわれているだけと思ったが、そうではなさそう。

という事は ... ...

ヴォルトのひたいに、あせにじみはじめる。
取りつくろうしかなかった。

「待て。今ここで話せることじゃない。あともう少し、いや、せめて場所を変えよう」

たいし相手はだんじて拒否きょひする。

「いいや ... 今でなければならぬ!」

事情じじょう加味かみしている場合ではない。

立ち上がりかけたヴォルトの声をさえぎるようにかた退けるクロイツの手が。
正面しょうめん射程しゃていひらいた時。
その後方こうほうかまえていたのは、ノシュウェルだった。

彼の手には曳光弾トレーサー装填そうてんした信号拳銃フレアガン
夕闇ゆうやみ旋光せんこうは、誰に、何をつたえたのだろう。

ただよ硝煙しょうえんの向こうからあらわれた何時いつぞやの紳士しんしは、不気味ぶきみに笑う。
血にえた亡者もうじゃを引きれて。

ヴォルトは状況じょうきょう把握はあくし、やがてなおった。
せまり来る徒党ととうを。かつての同志達どうしたちを。


時を同じくして。


臨戦間近りんせんまじかにして、フェレンスは悲しげにひとみを閉じる。

その時、彼の背後からち上げられた曳光弾えいこうだん残照ざんしょうは、
自身じしん鼓動こどうかさねる男の裏切うらぎりを示唆しさしていた。


のちにヴォルトは、こう釈明しゃくめいする。


俺達は元々もともと異国ノ刺客いこくのスパイ
他国へ潜入せんにゅうし権力者を暗殺後、顔を変え、声を変え、なりすます。
背乗せのりをり返してきた。

王党派はローランドの同業者が取り仕切しきっている。
対し俺達はハイランドの出身しゅっしん

アイゼリアをふくむ、それら三カ国は元々もともと同民族どうみんぞくであり。
たがいの治世ちせいくわしく。
資源目当しげんめあての領土りょうど問題はきなかった。

しかし、現在の帝国がそうであるように。
資源国との敵対てきたいけるべきであるとして。
石ノもりらった土地と、残される鉱物資源ミネラルしげん独占どくせんする
アイゼリアとは冷戦状態れいせんじょうたい

近隣きんりん各国かっこく牽制けんせいしあう中。
内部侵略ないぶしんりゃくが進んでいったわけだが。

 『 何もかも、わなだったんだ 』

今も昔も、 アイゼリアの王族をはじめとする政界、そして一般にいたるまで。
当該国とうがいこくたみなど存在しない。

何世代にも渡る収賄しゅうわい暗殺あんさつによって権力者を排除はいじょし、入れわってきた刺客達しかくたちは、
ぎゃくとらわれてしまったのだと。


馬鹿々ばかばかしい。

誰がそんな話を信じるだろう。

しかしうたが否定ひていする者すら、ここにはない。


石ノ杜いしのもり芽吹めぶいた時。
アイゼリアの民はかてとなり ... 姿すがたを消した。


『俺達が生かされている理由は、そう、あんたの言うとおり。
 近隣国きんりんこく治政干渉ちせいかんしょう対処たいしょする当て馬として利用するため』

ウルクアはもりとらわれた同志どうし筆頭ひっとうとして、
杜ノ主もりのあるじ交渉こうしょうしてきたという。

ところが、彼の動向どうこうには不審ふしんな点があった。
例の紳士をはじめとする王党派の同志等どうしらはウルクアを信用しんようしていない。

『 俺達は ... ウルクアの潔白けっぱく証明しょうめいしたかった』

かたやクロイツは、こう指摘してきする。

時期尚早じきしょうそう ... ... 。

不本意ふほんいながら。
フェレンスの私見しけん代弁だいべんしたにぎないが。


祖国そこくはなれ、長らく別人べつじんとして生きてきたばかりか。
囚人しゅうじんとして労役ろうえきする彼等かれら憂国ノ士ゆうこくのしを。
かこんだ者。まとめ上げた者。
それぞれのけ引きと、疑惑ぎわくすら目眩めくらましである可能性について。

協議きょうぎしたのは、ほんの数日前だ。


アイゼリア王都おうと真下ました支柱しちゅうから。
巨大な魔物キメラが姿をあらわた時。

まとった白い羽衣はごろもひるがえし、
ほうやいばるうかんなぎは ...

予期よきしていたらしい。
 
 
 
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