白銀(ぎん)の魔女

中富虹輔

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第3章

第三章 白き籠手、黒き腕(1)

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第三話 白き籠手、黒き腕

「白銀の魔法使いさんって、どんな魔法使いだったんですか?」
 エリィに問われたのは、西の魔法使いの里に到着した、その日の夜だった。
 西の里は、魔法使いの里の中でも特にへんぴな場所にあるため、到着までに何日も野営を重ねることとなった。さすがにそのようなことには慣れていなかったのだろう。エリィはずいぶんと参ったようだったが、人のいるところに到着して屋根のある場所で休憩すると、途端に元気を取り戻していた。
 セルマたちは、今は使われていない一軒の家に宿泊することになった。家はもう長いこと使われていないということだったが、手入れだけは行き届いていて、居心地はよい。一階には台所と食堂、居間があり、二階にはちょうど四つの部屋があったので、一人が一室ずつ使うことになった。
 荷をほどくと、休憩する間もなくレイバーグは里長の元へと向かい、残された三人は老魔法使いが戻ってくるまでの間、思い思いの時間を過ごしていた。
 セルマは里の中を少し歩いて図書館を発見すると、そこで魔法の理論書を借りて部屋に戻った。その後、彼女がその本から目を離したのは、レイバーグが戻ってきて「食事にしよう」と声をかけてからだった。
 食事の最中に、レイバーグはこの里には温泉が湧いている、という話をした。
「熱い湯にゆっくりとつかってくるといい。疲れがとれるぞ」
 レイバーグの言葉にエリィがすっかりやられてしまったようで、食事を終えると早々に、セルマは猛烈な誘いを受けて、苦笑交じりに温泉へと向かうことになったのだった。
 温泉は少々熱かったが、師の言葉通り、熱い湯に肩までつかっていると、これまでの旅の疲れが流れていくような気がした。
 行きから帰りまで、終始エリィははしゃぎ通しだった。温泉の中ではまるで子供のようにばしゃばしゃとお湯を引っかき回し、あまりにはしゃぎすぎたせいか、一度ならず滑って転びそうにもなっていた。
 そうして温泉から戻ると、入れ替わるようにハーディたちが温泉へと向かった。やることもなくなってしまい、なんとなく手持ちぶさたになったセルマに、エリィが問うてきたのだった。
 少女の質問の意図がわからずに、セルマは小さく首をかしげる。
「それは、白銀の称号を得たくらいだから。優秀な魔法使いだったけど……」
 エリィは「うーん」と物足りなそうな顔をした。
「ええと、私が聞きたいのはそういうことじゃなくってですね。ほら、あるじゃないですか。得意な魔法はどんなのだとか、実践派か理論派かとか」
 エリィのいいたいことは、なんとなくわかった。セルマは「そうね」と、魔法使いとしての姉のことを、思い返してみた。
「あなたの区分けでいえば、姉さんは理論派だったわ。いつも、私では理解できないような難しい魔法の理論書を読んでいて、自分でも、色々と難しい書き物をしていたりもしたし」
「やっぱりそうですよね? そんな感じの人だなあって思ったんです」
 少女の言葉は無邪気だった。
 ――私も、こんな風にしていられれば、もう少し違ったのかな。
 エリィの笑顔を見ながら、セルマは思った。
「元々、好奇心が強かったのかな。旧代の魔法使いが遺した書物なんかも、自分で翻訳して読んでは、そこに載っている魔法を色々と試したりもしていたわ」
 旧代の魔法使いたちと、今を生きる魔法使いとでは根本的な魔力の大きさが違う。姉が試した魔法のほとんどは、発現もせずに終わっていたような記憶がある。
 あれはいつだったろう。異界の魔物を召還しようと試みたこともあった。師やセルマも巻き込んで、何日もかけて複雑な魔方陣を描いたというのに、姉がどれほど魔力を注ぎ込んでも、魔方陣はうんともすんともいわなかった。
「姉さん、あの実験にはよほど自信があったんでしょうね。魔力の桁が違っていることを師匠に指摘されてから、三日ぐらいは落ち込んでいたかな」
 今となっては懐かしい思い出だ。
 オムニの宝珠とマークの籠手を手に入れた今なら、姉はあの時の召還魔法を成功させることができるだろうか。ふと、セルマは思った。
 成功するような気もするし、また失敗してしまうような気もする。
 セルマは、その話を聞いて大笑いしているエリィの顔にちらりと目を向け、内心で小さくため息をついた。
 ――姉さんは今、どうしているだろう。
 セルマが与えた傷は、相当なものだった。ことによれば、あのまま命を落としてもおかしくはないほどの。
 仮に生き延びることができたとしても、その傷が癒えるまでには相当な時間がかかるだろう。
 ――姉さん。
 セルマは今度こそ、本当にため息をついた。
 同時に、エリィがぴたりと笑いを止める。
「ごめんなさい。ちょっと不謹慎でしたね」
 セルマは、少女に目を向けて、無理に微笑みを作った。
「大丈夫よ。あれは、本当にばかばかしい思い出だしね。私が、ちょっと感傷的になっているだけだから」
 はあ、とエリィはうなずいて、じっと、セルマの顔を見つめた。
 その表情はひどく真剣だった。今度は一体なんだろう。セルマはエリィの視線に応えてその顔を見つめ返したが、少女は彼女の視線に気づいていないようで、ただひたすらにセルマを見つめている。
 ――私が、どうしたっていうんだろう。
 なんだか、わけのわからない不安感に包まれたその時。
「セルマさんの……」
「私の、なに?」
 セルマは少々引きつった顔で応えた。
「セルマさんの髪って、綺麗ですよね」
「は?」
 まじめくさった表情と口調。そこから出てきたのんきな言葉に、セルマは間の抜けた声を出してしまった。慌てて表情を繕い、「そ、そう?」エリィに問い返す。
「そうですよ!」
 エリィは力一杯うなずいた。
「ちょっと触らせてください」
 返事も待たずに、少女はセルマへと手を伸ばし、その髪を一房手に取った。長い旅で少々くたびれていた彼女の黒髪は、先ほど温泉で念入りに洗ったおかげで、そのつやを取り戻している。肩の下まで伸ばしている髪は気持ちいいくらいにまっすぐで、しっとりと柔らかい。
 その手触りを楽しむかのように、エリィは手に取ったセルマの髪を自分の指に巻き付け、それがほどけていく様を見つめていた。
 ひとしきりセルマの髪を弄って満足したのか、ほどなくしてエリィは手を離した。セルマの黒髪はすぐに、あるべきところへと戻ってゆく。
「いいなあ。そういう綺麗な黒髪、あこがれてたんです」
 生まれついて持ってきたものを変える術はない。エリィは自分の栗色の髪を手に取った。
「エリィの髪も、よく似合っているわよ」
 セルマは微笑んだ。
「そうですか? ありがとうございます」
 エリィも小さく笑みを返すと、
「そういえば、白銀の魔法使いさんも、真っ黒な髪でしたね」
「ええ」セルマはうなずいた。「私は覚えていないんだけど、私たちの母親が、黒髪だったらしいの」
 へえー。エリィはうなずいて、もう一度セルマの顔をまじまじと見つめた。
「あの、失礼ですけど、お二人のご両親は」
「もういないわ。私が小さい頃に、流行り病で逝ってしまったって」
 セルマは小さく息をついて、表情にわずかな変化のあったエリィに微笑みかけた。
「途方に暮れていた私たちを助けてくれたのが、師匠だったの。それからは、師匠と姉さんが、ずっと私の家族だったわ」
 エリィは、セルマから目をそらすかのように、顔をうつむけた。少しの間、彼女は下を見つめていたが、やがて唐突に顔を跳ね上げ、セルマの目を見つめた。
「そしたら……」
 いうべき言葉が見つからないのだろうか。数瞬、エリィは戸惑っているかのように、じっとセルマを見つめた。
「そしたら、頑張ってお姉さんを説得して、帰ってきてもらいましょうよ!」
「そうね」
 この少女には、この少女なりに思うところがあるのだろう。セルマは微笑みを返した。
「姉さんに帰ってきてもらって、また前みたいに、みんなで穏やかな毎日を過ごせるといいのにね」

 それから数日。
 レイバーグは、来たる白銀の魔法使いの襲撃に備え、里長らとの打ち合わせに余念がなかった。忙しそうに里の中を歩き回る師とは裏腹に、セルマたちに与えられたのは、大量の時間だった。
 ハーディはその時間の大半を剣術の訓練などに費やし、セルマとエリィは、里の蔵書を借りて、新たな魔法の研鑽にいそしんでいた。
 白銀の杖は、セルマの中に眠っていた魔力を呼び覚ました。魔法の威力が上がったのは無論のこと、より高度な魔法さえも扱うことができるようになったのである。レイバーグやセシルにこそ及ばないものの、大抵の魔法使いには引けをとらないだけの魔力を、彼女は得ていた。
 それまでは何の役にも立たない存在だった自分が、重要な戦力として位置づけられる。それは誇らしくもあったが、それをもたらしてくれたのが、どう考えても自分には不釣合いな白銀の杖であると思えば、素直に喜んでばかりもいられない。
 そしてもうひとつ。
 ――私はこのまま、「戦力」として姉さんに相対していいのだろうか。
 このままなしくずし的に姉と戦うことになれば、最終的には姉の生命を奪うことになってしまうだろう。
 本当にそれでいいのか。もっと他に方法があるのではないか。セルマの頭には、常にそのことが引っかかっていた。
 そんな、もやもやした思いを抱き続けたまま幾日かが過ぎた夕方、セルマたちとは別ルートで東の魔法使いの里を出発していたモリー師らが、西の里に到着した。
 一行には、国から派遣された五人の戦士が加わっていた。長旅を経てきたためだろう。同行している戦士たちに比べると、魔法使いたちは皆、少々やつれているようにも見える。
 再会を喜び合うのもそこそこに、レイバーグとモリー師は互いの情報を交換しあったが、さして目新しいものはないようだった。白銀の魔女と、同行している棒術使いはどこかに潜伏しているのか、道中の捜査では手がかりも得られなかったという。
 東の里の魔法使いたちは、セルマが白銀の杖を手にしたことまでは聞いていなかったらしい。皆一様に驚いていたが、セルマが心配していたような反応は、誰一人として見せることはなかった。
 そして翌日から、里の警備体制が強化されることになった。見張りの人数が倍に増やされ、そこには常にハーディら戦士たちも加わる。同様に、セルマたちにも見張りの順番が割り当てられることになった。
 魔人サイフェルトを封印した宝珠の一つ、ジアスの宝珠は、里の中央の、ひときわ大きな建物に安置されている。石造りの頑丈な建物は、さらに幾重にも防御魔法が張り巡らされ、今は半端な魔力の持ち主では近づくことすらままならなくなっていた。

 こうして、白銀の魔法使いを迎え打つ体制を整えながら、しかし何事もないままに数日が過ぎていった。
 その日の日中は、セルマが見張り当番だった。他にもう一人、東の里をモリー師と共に出発していた魔法使いアイクも、セルマと共に見張り当番の任についている。
 セルマたちは里の見張りやぐらに登ってじっと目をこらしていたが、その目に映るのは、なんの変哲もない、のどかな平原ばかりだった。
 セルマは、ちらりとアイクに目を向けた。奇抜な衣装を身につけた魔法使いは、じっと真昼の平原へと目を向けている。セルマは目線を戻した。
「少し、変わったな」
 唐突に、野太い声が聞こえてきた。
「そう?」
 セルマは遠くを見つめながら短く応た。
「ああ」アイクもまた、短い返事を返す。
「話は聞いた。白銀の魔法使いに、傷を負わせたのだろう?」
 少しだけためらってから、セルマは「ええ」とうなずいた。
「失礼を承知でいわせてもらえば、君にそんなことはできないと思っていた」
「大丈夫。私も、そんなことができるなんて思っていなかったから」
「辛くはなかったか?」
「覚悟は、できていたから。姉さんを追う、って決めたときから」
「そうか」と短くうなずいて、アイクは再び沈黙した。
 太陽が高い。時刻はそろそろ昼時だろう。陽射しは強かったが、頑丈な木材で組み上げられた見張りやぐらは風通しがよく、屋根も備えられている。決して不快ではなかった。
 しばらくの間、二人は黙って見張りを続けていたが、何か変化がある様子はない。
 セルマは小さく息をついた。
 足下に置いてある水筒を手に取り、生ぬるくなった水を口に含む。その感触を確かめるように口の中で水を転がし、ゆっくりと飲み込んだ。
 この里に到着してからの日数を数えてみる。
 ――二週間、か。
 何事も起きずに十四日間。その時間を、姉は何に使っているのだろう。
 傷の療養。この里に攻め込むための準備。あるいは、宝珠からより強大な魔力を引き出すための研究だろうか。
 セルマはもう一度息をついて、水筒を足下に置いた。と。
「セルマさあん!」
 見張りやぐらのすぐ下から、元気のいい声が届いた。声の主は見るまでもなくわかったが、セルマは身を乗り出して、声が聞こえた方を見下ろした。
 やぐらの下から、エリィがこちらを見上げている。治療術師の少女は、セルマに向けて大きく手を振った。そのすぐ後ろには、姉の知り合いだという金髪の魔法使いが、エリィと同じようにこちらを見上げている。次の見張り当番はこの二人だったはずだが、交代の時刻には少々早いような気もする。
「お昼ご飯、持ってきました」
 エリィは左手に持っていた包みを、セルマに見せるように差し上げた。昼食ついでに、交代の時刻まで一緒にいてくれるつもりなのだろう。
 エリィは右手の杖を腰ひもに挟むと、やぐらにかけられた梯子を、手慣れた様子で登り始めた。結構な高さのある梯子を、少女は左手に荷物を持ったまま、するすると登ってくる。
 瞬く間にエリィは梯子を登り切り、セルマたちの前に姿を現した。
「すごいわね」呆れ半分、感心半分で呟くと、
「山育ちなんですよ。小さい頃は遊び相手もいなかったから、男の子に混じってこんな遊びばっかり」
 エリィは屈託なく笑って、「はい、どうぞ」と、左手に持っている包みの中から、サンドウィッチを取り出した。
「ありがとう」
 セルマがそれを受け取ると、エリィはアイクへと歩み寄っていった。セルマはサンドウィッチを持って再び見張りに向かったが、それとほぼ同時にもう一人、見張りやぐらに登ってきた気配があった。
 ちらりと目を向けると、やぐらの下でエリィと一緒にいた金髪の魔法使いが姿を見せた。
 イルンはひどくくたびれたふうに「ああ、やれやれ」というと、
「どうだい、様子は?」
「変化なし、だ」
 アイクが応えると、金髪の魔法使いは「そうか」とうなずいた。
「交代にはまだ早い時間だと思うが?」
「あちらのお嬢さんの提案でね。昼食を運ぶついでだから、このまま交代の時間までここにいよう、ってことになってね。目は多い方がいいだろう?」
 イルンの言葉を聞いて、アイクがエリィへと目を向ける。少女は腰の杖を手に持つと、セルマのそばへと歩み寄っていった。イルンも同じように少女に目を向けていたが、目線を平原へと向けた。
「平和な光景だね。いにしえの魔人の復活を目論む魔法使いがいるなんて、信じられないくらいだ」
「本当に。全部、悪い夢だったらいいんですけどね」
 つぶやくようなイルンの声に、セルマはため息混じりに応えた。金髪の魔法使いはセルマへと目を向ける。
「白銀の魔法使いは、北の里でかなりこっぴどくやられたんだろう? なら、もうしばらくは大丈夫じゃないのかな?」
「油断は、できませんよ」
 サンドウィッチを一口かじって、セルマは応える。
「姉はオムニの宝珠と、旧代の魔法使いの籠手を持っていますから。もしかしたら、治療魔法だって使えるようになっているかもしれませんよ」
「そうなったら、こちらのお嬢さんは立場がなくなってしまうね」
 金髪の魔法使いはエリィに目を移して笑ったが、
「その可能性は、十分ありますよ」
 治療術師はこともなげに応えた。治癒魔法は特別な魔法ではあるが、同じ魔法であることにかわりはない。強大な魔力を持った魔法使いであれば、治癒魔法を使えてもおかしくはないだろう。
 エリィの説明に、金髪の魔法使いは「なるほどね」とうなずいた。そしてゆっくりとセルマの元へと歩み寄ると、その横に立ち、彼女が見ているのと同じ方へと目を向ける。
「ずいぶん、力が上がったんだって?」
「杖の、おかげです」
 セルマはイルンには目を向けずに応えた。
「謙虚だね、君は」
「自分の力は、自分がよくわかっていますから」
 白銀の杖を手放せば、自分は凡百の魔法使いでしかない。そのことは、自分が一番わかっている。
「この旅が終わったら、君はどうするんだい、セルマ?」
 唐突に、イルンは話題を変えてきた。セルマは金髪の魔法使いへと目を向けたが、すぐにその視線を戻し、ゆっくりと口を開く。
「里に、帰ろうと思っています。叶うなら、また姉と一緒に、元の穏やかな生活を」
「難しいだろうね、それは」
 容赦のないイルンの言葉に、セルマは下唇をかんだ。
「セシルは……」
「そのくらいにしておけ。姉思いの妹を、あまりいじめるものじゃない」
 なおも何かをいおうとしたイルンに、アイクが横から口を挟む。イルンが小さく息をつくのが聞こえ、
「どうやら、お出ましになったようだぞ。覚悟はいいか?」
 アイクの張りつめた声に、セルマはそちらへと目を向けた。
「ほんとですか?」
「本当か?」
 イルンとエリィとが、ほとんど同時に叫んでアイクの横に立つ。セルマも自分の立っている場所から、奇抜な服の魔法使いが見ている方へと目をこらした。
 二つの人影。まだ少々距離があるので判然とはしないが、一人は右腕だけが白く、もう一人は、長い棒状のものを持っている。
 セルマは息を飲んだ。まず間違いはないだろう。白銀の魔法使いセシルと、ダン・エリックの二人組だ。
 セルマはやぐらに取り付けてある鐘を鳴らし、アイクが大声で白銀の魔法使いがやってきたことを告げる。
 それから少し遅れて、別の場所にもある見張りやぐらからも同じように、鐘の音が聞こえ始めた。
 やぐらの鐘を鳴らしながら。
 ――姉さん。これで、終わりにしましょう。
 セルマは、ゆっくりと近づいてくる二つの人影に向けて、想いを送った。
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