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幕間
幕間 姉と妹
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幕間 姉と妹
――暗い。
彼女は、天井を見ながら思った。
うとうとと微睡んでは、わずかな間だけ覚醒する。そんな時間を繰り返していたため、日付の感覚もなくなっていた。
――今は、夜?
幾度かの覚醒の時も、ずっとそこは暗かった。たまたま夜間に覚醒してしまうのか、それとも元々ここが暗い場所なのか。
おそらく後者だろう。彼女は思った。
妹に焼かれた左半身は、もうだいぶん回復している。痛みも引き、力を入れれば動くようにもなった。もうしばらくすれば、前と同じように動けるようになるだろう。
ここがどこなのかもわからない。得るべきものは得たが、その後さんざんにやられ、ほうほうの体で逃げ出したあと、気を失ってしまった。
彼女の連れがここまで運び、応急処置をしてくれたらしいが、そのあたりのことは覚えていない。
どこかの、部屋のようではある。
彼女はベッドらしきものに寝かされていたし、微睡みの中、誰かの足音や、床板がぎしぎしときしむ音を聞いたような気もする。
――魔法を使って明かりを灯そうか。
右腕の籠手ははずされてしまっていたが、触媒がなくともその程度の魔法なら発現はできる。
意識を集中するのと同時に、右手から木のきしむ音が聞こえ、そこからわずかな光が差し込んでくる。
彼女はそちらへと目を向けた。
「気がついたか」
漆黒の金属棒を持った男が、部屋の入り口に立っている。男は短くいうと、床板をきしませながら、彼女の方へと歩み寄ってきた。
男が彼のそばで立ち止まるのを待って、彼女はいった。
「あれから、何日たちました?」
「三日だな」
妹たちは、次の目的地へ向けて出発しているだろう。あれからすぐに行動を起こしたとすれば、その差は三日。
妹たちに追われていたはずなのに、追いつかれ、今度は追い越されてしまった。
妹の、あの悲しげな瞳が目に浮かんでくる。
――妹といえば。
「私の杖は……」
「あまり喋らん方がいい」
男は、彼女の言葉を遮った。
「もうとっくにどうかなっていてもおかしくはない身体だ。今そうして体力を使えば、自らの命を縮めることになる」
彼女は、小さく微笑んだ。
「大丈夫です。もう、だいぶ回復していますから」
「自信があることは結構だが、お前の身体はまだ何があってもおかしくない状態だ。無駄な体力は使わんほうがいい」
応える男の声には、およそ感情というものが含まれていなかった。ただ淡々と事実だけを述べるような口調で、彼女の身体を案ずる言葉が出てくる。
「お前の杖ならば、妹の手に渡っている」
――とりあえずは、予定どおりか。
彼女は小さく息を漏らした。
「お前には、今しばらくの休養が必要だ。死ねんのだろう? 目的を達成するまでは」
死にたくないのならば、今は休め。男は短くそういった。
「ええ。それでは、そうさせてもらいます」
彼女はうなずいて目を閉じたが、すぐに目を開け、再び男へと目を向けた。
「このあとのことは……」
「わかっている」
男は短くうなずいた。
「見届けさせてもらう。最後まで、な」
「助かります」
彼女は小さく微笑み、今度こそ休息のために目を閉じた。ベッドの脇に立っていた男が、彼女に背を向けるのが気配でわかった。
床板をぎしぎしときしませる音が徐々に遠のいていき、やがて部屋のドアが開閉する音が聞こえ、室内は沈黙に包まれた。
――暗い。
彼女は、天井を見ながら思った。
うとうとと微睡んでは、わずかな間だけ覚醒する。そんな時間を繰り返していたため、日付の感覚もなくなっていた。
――今は、夜?
幾度かの覚醒の時も、ずっとそこは暗かった。たまたま夜間に覚醒してしまうのか、それとも元々ここが暗い場所なのか。
おそらく後者だろう。彼女は思った。
妹に焼かれた左半身は、もうだいぶん回復している。痛みも引き、力を入れれば動くようにもなった。もうしばらくすれば、前と同じように動けるようになるだろう。
ここがどこなのかもわからない。得るべきものは得たが、その後さんざんにやられ、ほうほうの体で逃げ出したあと、気を失ってしまった。
彼女の連れがここまで運び、応急処置をしてくれたらしいが、そのあたりのことは覚えていない。
どこかの、部屋のようではある。
彼女はベッドらしきものに寝かされていたし、微睡みの中、誰かの足音や、床板がぎしぎしときしむ音を聞いたような気もする。
――魔法を使って明かりを灯そうか。
右腕の籠手ははずされてしまっていたが、触媒がなくともその程度の魔法なら発現はできる。
意識を集中するのと同時に、右手から木のきしむ音が聞こえ、そこからわずかな光が差し込んでくる。
彼女はそちらへと目を向けた。
「気がついたか」
漆黒の金属棒を持った男が、部屋の入り口に立っている。男は短くいうと、床板をきしませながら、彼女の方へと歩み寄ってきた。
男が彼のそばで立ち止まるのを待って、彼女はいった。
「あれから、何日たちました?」
「三日だな」
妹たちは、次の目的地へ向けて出発しているだろう。あれからすぐに行動を起こしたとすれば、その差は三日。
妹たちに追われていたはずなのに、追いつかれ、今度は追い越されてしまった。
妹の、あの悲しげな瞳が目に浮かんでくる。
――妹といえば。
「私の杖は……」
「あまり喋らん方がいい」
男は、彼女の言葉を遮った。
「もうとっくにどうかなっていてもおかしくはない身体だ。今そうして体力を使えば、自らの命を縮めることになる」
彼女は、小さく微笑んだ。
「大丈夫です。もう、だいぶ回復していますから」
「自信があることは結構だが、お前の身体はまだ何があってもおかしくない状態だ。無駄な体力は使わんほうがいい」
応える男の声には、およそ感情というものが含まれていなかった。ただ淡々と事実だけを述べるような口調で、彼女の身体を案ずる言葉が出てくる。
「お前の杖ならば、妹の手に渡っている」
――とりあえずは、予定どおりか。
彼女は小さく息を漏らした。
「お前には、今しばらくの休養が必要だ。死ねんのだろう? 目的を達成するまでは」
死にたくないのならば、今は休め。男は短くそういった。
「ええ。それでは、そうさせてもらいます」
彼女はうなずいて目を閉じたが、すぐに目を開け、再び男へと目を向けた。
「このあとのことは……」
「わかっている」
男は短くうなずいた。
「見届けさせてもらう。最後まで、な」
「助かります」
彼女は小さく微笑み、今度こそ休息のために目を閉じた。ベッドの脇に立っていた男が、彼女に背を向けるのが気配でわかった。
床板をぎしぎしときしませる音が徐々に遠のいていき、やがて部屋のドアが開閉する音が聞こえ、室内は沈黙に包まれた。
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