30年越しの手紙

星の書庫

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学校へ

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「ハルキ、おはよ!」
「うん、おはよ」
 今日も彼女は、いつもの朗らかな笑顔を見せてくれる。僕といると安心するのだそうだ。暇な時は、いつも一緒にいるようになった。
 あの日、母さんは「やっぱり彼女だったんじゃない」と、弟には「兄ちゃんに彼女が……!」と、喜んでいた。同時に、感謝していたようだった。僕なんかが学校に行くくらいでそこまで……とは思ったが、家族に恵まれてると実感できた。
 余談だけど、二人ともあの口喧嘩を聞いていたらしい。それを知った彼女は、ひどく赤面して、困っていた。

「ねぇ、ハルキ」
「どうした?」
「私達って、付き合ってるんだよね?」
「「えっ⁉︎」」
「えっ!ちょっと!声が大きいって!」
 クラスメイトが皆こっちを見ている。廊下にいた数人も、驚いて振り向いた。
「え?良いじゃん。だって事実でしょ?」
「それは……そうだけどさ」
「でしょー?」
にひひと笑う彼女に、苦笑した。それと同時に、クラスメイトが押し寄せてきた。
女子は彼女に、男子は僕のところに来て、質問攻めだ。
 カップルが少ないこのクラスでは、誰かがくっつくと必ずこうなるらしい。……色ボケクラスめ。

「いやー。大変だったねー!」
「……なんで嬉しそうなの?」
 昼休み、彼女は弁当を食べながら笑う。
「私とハルキの事、知ってもらえるのが嬉しくて」
そう言って、彼女はまたにひひと笑った。
「君にはかなわないな」
僕も、つられてにひひと笑った。
「ところでさ、ハルキ」
「ん?どうした?」
「君は、なんで私のことを「ひな」って呼んでくれないのかな?」
 全く意識してなかった。いきなりの質問に、なんと答えればいいのか分からなくなった。
「それは、ほら。……呼びやすいから?」
「どんなところが?」
「えっと……。どっちもイ段だから?」
「うーん。その呼び方、私はあんまり好きじゃないなぁ」
君って呼び方はダメなのか……。
「ご、ごめん……」
「ほら、なんて呼ぶの?」
「……佐野さん」
僕はあらん限りの抵抗をしてみた。すると、彼女は頬を膨らませて怒ったように指を指した。
「遠くなったじゃん!ひなって呼んで!」
「ごめんって。……ひな」
「うん!よし!」
彼女は、嬉しそうに笑った。僕はこの先、彼女に勝つ事は無いだろうなと思い始めた。
 彼女はいきなり立ち上がった。
「よし!今日はクレープ食べに行こう!クレープ!」
「ちょ、ひ、ひな!スカート!」
立ち上がった勢いで、制服のスカートがめくれてしまった。それはやがて、重力に従って元の位置へと戻った。
「……見た?」
「……見えちゃった」
 高校生なのにキャラクター物だった。なんて言ったらビンタされそうだからやめておこう。
「高校生なのにキャラパンだとか思ったでしょ!ばかぁ!」
「あえて言わなかったのに⁉︎」
「思ったんじゃん!」
思い切りビンタされてしまった。
そんな軽口を叩けるくらいに彼女との日常は、僕の心を満たしてくれつつあった。
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