星になった私から

星の書庫

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空の上から見守ってるよ

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 午前七時。ハルキが起床した。
彼が起きるのと同時に、私も目を覚ました。
「……日曜日か」
携帯の画面を見て気付いた彼は、もう一度眠りにつこうとした。
『こらこら、手紙くらい読みなさいよ』
 そんな私の声が聞こえたのか、彼はおもむろに立ち上がる。そして、机に置かれた手紙を持ち上げた。
「これ……捨てたはず」
『私が置いたんだよ』
「……まあ良いか」
彼は封を開くと、手紙を読み始めた。
手紙を読んでいる間、私はずっと横で彼を眺めていた。

「こんな事も、あったな……」
読みながら、彼はずっとそんな事を言っていた。三十年という時間は、私との思い出を忘れるには、十分すぎたみたいだ。
『忘れちゃってたんだね。仕方ないよ』
まあ、私は全部覚えているけれど。

 手紙を読み終わる頃、ハルキは泣いていた。
『もう、泣かないでよ』
「……泣かないよ。大丈夫」
『それは良かった。ほら、涙を拭いて?』
彼に私の声は聞こえていない。
それなのに、彼は私の言う事がわかったみたいだ。
『君はもう四十八歳になるけれど、きっと良い人が見つかるよ』
「そうだね。ありがとう」
『えっ?』
私の声、聞こえてたの?
「聞こえないけれど、そこにいるんでしょ?」
『そっか……君には全部バレちゃうんだね』
「まあ、本当にいるのかはわからないんだけどね」
『君は、本当にずるいね』
そう言って、私は笑う。
「こんな時、君はずるいねって言って笑うんだよね」
『よく分かってるじゃん』
「何年君といたと思ってるの?」
『そうだったね』
「今さ。職場に僕を好いてくれている子がいるんだよね」
『知ってるよ。優しい君には良い子が寄ってくるんだね』
「今度、その子を食事に誘ってみようと思う」
『うん、良いと思うよ』
「君の分まで、僕は幸せになるよ」
『うん。期待してるよ』
「こんな事言っても、聞こえてないよね」
『全部、聞こえてるよ。……逆に、私の声は君には届いていないでしょ?』
「君の声は、僕には届かないよ。
でも、君なら同じ事を僕に言うと思うよ」
『本当に、ハルキには敵わないなぁ』
「褒め言葉とは思えないけれどね」
『ちゃんと、褒めてるよ』
「君はいつも、一言多いんだよ」
『うるさいなぁ』
「ははは……」

「職場の子ね。君と同じ笑い方をするんだ」
『ハルキにぴったりじゃん』
「あの子となら、うまくやれそうだよ」
『そっか』
 それから私たちは、微妙に噛み合っていない話を続けた。

『じゃあ、私はそろそろ行くね』
「もうそろそろ、君は行かなきゃいけないよね」
『よく分かってるじゃん』
「楽しかったよ」
『私も、楽しかったよ』
「会うとしたら、僕が死んだ時くらいじゃないかな」
『そうだね。……頑張って、幸せになりなさいよ』
「何回も同じ事を言うのは、三十年経っても変わらないね」
『君も、一言余計だよね』
「うるさいなぁ」
『……にひひ』

 そうして、私はハルキの家を出て行った。
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