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そして二人は、結ばれる(3)
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「あなた。まつりちゃんのこと、どう思ってるの?」
それまでのほのぼのとした空気が一変し、史乃さんの目は鋭く俺を睨んでいた。
「どうって……。その、意外と優しい人だなって思いますよ」
「私が聞いてるのはそんな事じゃないの。あの子の性格なんて私が一番知ってるわ」
「は、はぁ……」
「私が聞きたいのは、あなたがまつりちゃんのことを異性としてどう思っているかよ」
「っ……」
触れたくなかった事に触れられて、思わず言葉が詰まる。もしかすると、彼女はそれを聞き出すために今日、この家に泊まらせたのだろうか。
「俺……いや、僕は茉莉さんの事が好き、なんだと思います」
まだ、結論が出たわけではない。ただ、曖昧なままだといけない気がした。
「というと?」
「事故の後、目を覚ました僕の横には、茉莉さんがいました」
「それだけで?」
「いえ、それはただのきっかけに過ぎなかったんだと思います。あの時、彼女はあまり寝ていなかったのか、目の下には大きなクマがありました。看護師さんに聞いたら、彼女は僕が起きるまでずっと起きていたそうです」
「うんうん」
「僕が彼女を意識しだしたのは、それからでした。話をする中で、彼女の人間性に触れ、いつしか彼女のことが好きになったんだと、思います」
しまった。つい熱弁してしまった。話し終えてから、自分の顔が熱いことに気付いた。すごく恥ずかしい。
「……そっか。純くん」
史乃さんは、いつものようなほのぼのとした雰囲気に戻っていた。
「まつりちゃんのこと、お願いね?あの子、なかなか素直に慣れない時があるから。あなたがリードしてあげてね?」
史乃さんは俺の言葉に満足したのだろうか。それだけ言うと、キッチンへと消えてしまった。
「は、はい!」
「はぁい。早めにお風呂にでも入って、まつりちゃんとお話でもしてきなさい」
「あ、わかりました」
俺は、リビングを出て風呂場へと向かう。
道中、茉莉と何を話そうか考えた。
彼女が好きだと告白するなら、今しかないだろう。ヘタレな俺は、雰囲気に便乗して、勢いで言うしか方法がないと思う。
問題なのは、どうやってその話題に持っていくかだが……。
考え事をすると、人は他のものに注意を払えなくなるらしい。脱衣所の明かりがついている事を気にも止めず、俺はそのドアを開けてしまった。
「な……っ!」
目の前には、風呂上がりの、何も身に纏っていない茉莉の姿があった。
「……そこで固まってないで早く出ていけー!!!」
茉莉は機嫌を損ねたのか、あれから一言も喋ってくれない。今まではなんとも思わなかっただろうが、彼女が好きだと自覚したせいなのか、この状況をひどく落ち込んでいる自分がいる。
やはり、謝るべきだろう。そう思った俺は、客間を出て彼女の部屋の前まで足を運んだ。
「あの……。茉莉、さん?」
「……何よ」
ぶっきらぼうな彼女の返答に、心が痛む。だが、このまま引いてはいけない。俺は、話を続けた。
「さっきのこと、謝ろうと思って」
「別に、怒ってないわよ」
「絶対怒ってるだろ」
「怒ってないって」
「じゃあ、せめて部屋に入れてくれないか?」
「……分かったわよ」
ドアを開けた彼女は、案の定ムッとした表情で出てきた。
「ありがとう」
「ふんっ」
部屋に入ったのは良いものの、茉莉はまただんまりを決め込んだ。
俺もなんと言えばいいのか分からず、押し黙ってしまう。
そんな二人に流れる空気を壊したのは、意外にも茉莉の言葉だった。
「前にも、こんな事あったわよね」
「……そう、だな」
「あんた、考え事してると他の事考えられないものね」
「そう、だな……」
「別に、怒ってるわけじゃないわよ」
「それはよかった」
彼女の口ぶりからして、本当に怒っているわけではないのだろう。それだけは、なんとなく分かった。
「あんたさ」
「なんだよ」
「私のこと、どう思ってる?」
「っ……」
数時間前に史乃さんから聞かれたことと同じだ。
「別に、言わなくていいわよ」
「そうか……」
「私は、あんたの事好きよ」
「……」
予想外だった。正直、すごく嬉しい。嬉しいはずなのに、この空気のせいなのか、素直に喜べない。
「いつも私のわがままに付き合ってくれるし、勉強だって教えてくれた。あの時だって、わがままを言った私に付き合ってくれて。車に轢かれそうになった私を、身を挺して助けてくれた」
「お前に死なれたら、夢見が悪いからな」
「それは、私が好きだから?」
「あの時は、まだ」
「そう。優しいのね」
「誰だってそうする」
「そっか」
茉莉の目には、いつの間にか涙が浮かんでいた。
俺は、そんな彼女を真っ直ぐに見つめる。
「でも次は、違う」
「え?」
「次、同じようなことがあっても、俺は茉莉を助けると思う。夢見が悪いからなんて理由じゃなくて、茉莉のことが好きだから。もっとも、次なんて絶対に起こさないが」
我ながら、随分とカッコつけた台詞を吐いたものだ。でも、これが俺の本音だ。もう二度と、大切な人を危険に晒したくない。
「こんなタイミングで言うなんて、ずるいわよ」
「ごめん。でも、言うなら今だと思った」
「ほんと、ばか……」
こうして、俺と茉莉は正式に付き合う事になった。
それまでのほのぼのとした空気が一変し、史乃さんの目は鋭く俺を睨んでいた。
「どうって……。その、意外と優しい人だなって思いますよ」
「私が聞いてるのはそんな事じゃないの。あの子の性格なんて私が一番知ってるわ」
「は、はぁ……」
「私が聞きたいのは、あなたがまつりちゃんのことを異性としてどう思っているかよ」
「っ……」
触れたくなかった事に触れられて、思わず言葉が詰まる。もしかすると、彼女はそれを聞き出すために今日、この家に泊まらせたのだろうか。
「俺……いや、僕は茉莉さんの事が好き、なんだと思います」
まだ、結論が出たわけではない。ただ、曖昧なままだといけない気がした。
「というと?」
「事故の後、目を覚ました僕の横には、茉莉さんがいました」
「それだけで?」
「いえ、それはただのきっかけに過ぎなかったんだと思います。あの時、彼女はあまり寝ていなかったのか、目の下には大きなクマがありました。看護師さんに聞いたら、彼女は僕が起きるまでずっと起きていたそうです」
「うんうん」
「僕が彼女を意識しだしたのは、それからでした。話をする中で、彼女の人間性に触れ、いつしか彼女のことが好きになったんだと、思います」
しまった。つい熱弁してしまった。話し終えてから、自分の顔が熱いことに気付いた。すごく恥ずかしい。
「……そっか。純くん」
史乃さんは、いつものようなほのぼのとした雰囲気に戻っていた。
「まつりちゃんのこと、お願いね?あの子、なかなか素直に慣れない時があるから。あなたがリードしてあげてね?」
史乃さんは俺の言葉に満足したのだろうか。それだけ言うと、キッチンへと消えてしまった。
「は、はい!」
「はぁい。早めにお風呂にでも入って、まつりちゃんとお話でもしてきなさい」
「あ、わかりました」
俺は、リビングを出て風呂場へと向かう。
道中、茉莉と何を話そうか考えた。
彼女が好きだと告白するなら、今しかないだろう。ヘタレな俺は、雰囲気に便乗して、勢いで言うしか方法がないと思う。
問題なのは、どうやってその話題に持っていくかだが……。
考え事をすると、人は他のものに注意を払えなくなるらしい。脱衣所の明かりがついている事を気にも止めず、俺はそのドアを開けてしまった。
「な……っ!」
目の前には、風呂上がりの、何も身に纏っていない茉莉の姿があった。
「……そこで固まってないで早く出ていけー!!!」
茉莉は機嫌を損ねたのか、あれから一言も喋ってくれない。今まではなんとも思わなかっただろうが、彼女が好きだと自覚したせいなのか、この状況をひどく落ち込んでいる自分がいる。
やはり、謝るべきだろう。そう思った俺は、客間を出て彼女の部屋の前まで足を運んだ。
「あの……。茉莉、さん?」
「……何よ」
ぶっきらぼうな彼女の返答に、心が痛む。だが、このまま引いてはいけない。俺は、話を続けた。
「さっきのこと、謝ろうと思って」
「別に、怒ってないわよ」
「絶対怒ってるだろ」
「怒ってないって」
「じゃあ、せめて部屋に入れてくれないか?」
「……分かったわよ」
ドアを開けた彼女は、案の定ムッとした表情で出てきた。
「ありがとう」
「ふんっ」
部屋に入ったのは良いものの、茉莉はまただんまりを決め込んだ。
俺もなんと言えばいいのか分からず、押し黙ってしまう。
そんな二人に流れる空気を壊したのは、意外にも茉莉の言葉だった。
「前にも、こんな事あったわよね」
「……そう、だな」
「あんた、考え事してると他の事考えられないものね」
「そう、だな……」
「別に、怒ってるわけじゃないわよ」
「それはよかった」
彼女の口ぶりからして、本当に怒っているわけではないのだろう。それだけは、なんとなく分かった。
「あんたさ」
「なんだよ」
「私のこと、どう思ってる?」
「っ……」
数時間前に史乃さんから聞かれたことと同じだ。
「別に、言わなくていいわよ」
「そうか……」
「私は、あんたの事好きよ」
「……」
予想外だった。正直、すごく嬉しい。嬉しいはずなのに、この空気のせいなのか、素直に喜べない。
「いつも私のわがままに付き合ってくれるし、勉強だって教えてくれた。あの時だって、わがままを言った私に付き合ってくれて。車に轢かれそうになった私を、身を挺して助けてくれた」
「お前に死なれたら、夢見が悪いからな」
「それは、私が好きだから?」
「あの時は、まだ」
「そう。優しいのね」
「誰だってそうする」
「そっか」
茉莉の目には、いつの間にか涙が浮かんでいた。
俺は、そんな彼女を真っ直ぐに見つめる。
「でも次は、違う」
「え?」
「次、同じようなことがあっても、俺は茉莉を助けると思う。夢見が悪いからなんて理由じゃなくて、茉莉のことが好きだから。もっとも、次なんて絶対に起こさないが」
我ながら、随分とカッコつけた台詞を吐いたものだ。でも、これが俺の本音だ。もう二度と、大切な人を危険に晒したくない。
「こんなタイミングで言うなんて、ずるいわよ」
「ごめん。でも、言うなら今だと思った」
「ほんと、ばか……」
こうして、俺と茉莉は正式に付き合う事になった。
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