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失った悲しみ
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恋人である神林茉莉が交通事故で亡くなったと聞いたのは、二学期に入って二日目の朝だった。
茉莉とは昨日の夜から連絡が取れず、朝も待ち合わせ場所に来なかった。
それもそのはず。彼女は、昨日俺と別れた後に、車に撥ねられた。家の目の前だったそうだ。
その日俺は、学校を早退し、茉莉の元へと足を運んだ。向かったのは総合病院だ。
茉莉の姿を確認しに、遺体安置所へと出向いた。そこには、史乃さんと、旦那さんが座っていた。
「……いらっしゃい、純くん」
「……こんにちは」
赤く目を腫らした二人の顔には、生気が宿っていない。可愛い娘を亡くしたのだし、無理もないか。
最初に口を開いたのは、史乃さんだった。
「辛いと思うけれど……。まつりちゃんの顔、見てあげてほしいな」
「……はい。僕も、そのつもりでここに来ました」
俺と史乃さん達二人の間で寝かせられているのが、茉莉なのだろう。まだ心の準備ができていないが、確認しない事には何も始まらない。
俺は、恐る恐る顔に被せられた布を退ける。
「……茉莉」
紛れもなく、事故直前まで一緒にいた、茉莉の顔だった。彼女の顔は、事故死したと言うのにとても綺麗で、本当は眠っているだけだと、錯覚させた。
呼びかけたら、笑って起きてくるに違いない。そう感じさせるほどだった。
「茉莉。起きてくれよ……。ドッキリか何かなんだろう?もう分かったから。もうそろそろ、起きてくれよ……」
現実逃避するしかなかった。近くに寄って、彼女の下半身がないことにも、気付いていた。
でも、彼女なら。茉莉なら、生き返ってくれると、信じたかった。
「約束、したじゃないか……。結婚しようって。俺は、お前を幸せにするって、誓っただろう……?」
たった二日前に交わした約束は、あっさりと破られた。茉莉が悪いわけではない。これは、不慮の事故だ。仕方がなかったことだ。
「なんで、茉莉なんだよ……。なんで茉莉が死ななくちゃならないんだよ……」
限界だった。出会って半年も経っていないのに。恋人になって一月と少ししか経っていないのに。
俺はその場で泣き崩れた。茉莉の両親の前だと言うのに、みっともなく、泣き叫んだ。
俺が家に帰ったのは、夜九時を過ぎた頃だった。
特に何をするでもなく、ただひたすらに歩いて帰ってきた。
電車に乗る気にはなれなかった。気を抜くと線路に飛び出してしまいそうだったから。家までの道筋は、全く覚えていない。
「おかえり。遅かったじゃない。ご飯は?」
母さんは、俺の帰りを玄関先で待っていた。そこまで心配されるような歳でもないんだが。
「……いらない」
「あ、ちょっと!」
何も食べようと思わない。食べれる気がしなかった。俺は母さんを無視して自分の部屋まで戻り、そのまま泥のように眠った。
その夜、夢に茉莉が出てきた。
俺たちは教室にいる。現実と何も変わらない風景で、俺は彼女と二人きりで話している。
「茉莉……。お前、死んだんじゃ……」
「えへへ、ドッキリでした~」
ニコニコと笑う彼女はいつも通り、俺と他愛もない話をする。そんな事、もう絶対にないはずなのに。俺は、どんどんその夢にのめり込んでいく。
「……え?今、なんて?」
「だから、~~~~だって」
一箇所だけ、どうしても聞き取れない箇所があった。普段の茉莉からは想像もできないような低い声。俺は何度も聞き返す。
「ごめん、もう一回言って?」
「もう、これが最後ね?」
茉莉は、俺の耳に口を近づけて、確かにそう言った。
『お前が死ねばよかったのに』
そこで、目が覚めた。
茉莉とは昨日の夜から連絡が取れず、朝も待ち合わせ場所に来なかった。
それもそのはず。彼女は、昨日俺と別れた後に、車に撥ねられた。家の目の前だったそうだ。
その日俺は、学校を早退し、茉莉の元へと足を運んだ。向かったのは総合病院だ。
茉莉の姿を確認しに、遺体安置所へと出向いた。そこには、史乃さんと、旦那さんが座っていた。
「……いらっしゃい、純くん」
「……こんにちは」
赤く目を腫らした二人の顔には、生気が宿っていない。可愛い娘を亡くしたのだし、無理もないか。
最初に口を開いたのは、史乃さんだった。
「辛いと思うけれど……。まつりちゃんの顔、見てあげてほしいな」
「……はい。僕も、そのつもりでここに来ました」
俺と史乃さん達二人の間で寝かせられているのが、茉莉なのだろう。まだ心の準備ができていないが、確認しない事には何も始まらない。
俺は、恐る恐る顔に被せられた布を退ける。
「……茉莉」
紛れもなく、事故直前まで一緒にいた、茉莉の顔だった。彼女の顔は、事故死したと言うのにとても綺麗で、本当は眠っているだけだと、錯覚させた。
呼びかけたら、笑って起きてくるに違いない。そう感じさせるほどだった。
「茉莉。起きてくれよ……。ドッキリか何かなんだろう?もう分かったから。もうそろそろ、起きてくれよ……」
現実逃避するしかなかった。近くに寄って、彼女の下半身がないことにも、気付いていた。
でも、彼女なら。茉莉なら、生き返ってくれると、信じたかった。
「約束、したじゃないか……。結婚しようって。俺は、お前を幸せにするって、誓っただろう……?」
たった二日前に交わした約束は、あっさりと破られた。茉莉が悪いわけではない。これは、不慮の事故だ。仕方がなかったことだ。
「なんで、茉莉なんだよ……。なんで茉莉が死ななくちゃならないんだよ……」
限界だった。出会って半年も経っていないのに。恋人になって一月と少ししか経っていないのに。
俺はその場で泣き崩れた。茉莉の両親の前だと言うのに、みっともなく、泣き叫んだ。
俺が家に帰ったのは、夜九時を過ぎた頃だった。
特に何をするでもなく、ただひたすらに歩いて帰ってきた。
電車に乗る気にはなれなかった。気を抜くと線路に飛び出してしまいそうだったから。家までの道筋は、全く覚えていない。
「おかえり。遅かったじゃない。ご飯は?」
母さんは、俺の帰りを玄関先で待っていた。そこまで心配されるような歳でもないんだが。
「……いらない」
「あ、ちょっと!」
何も食べようと思わない。食べれる気がしなかった。俺は母さんを無視して自分の部屋まで戻り、そのまま泥のように眠った。
その夜、夢に茉莉が出てきた。
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「茉莉……。お前、死んだんじゃ……」
「えへへ、ドッキリでした~」
ニコニコと笑う彼女はいつも通り、俺と他愛もない話をする。そんな事、もう絶対にないはずなのに。俺は、どんどんその夢にのめり込んでいく。
「……え?今、なんて?」
「だから、~~~~だって」
一箇所だけ、どうしても聞き取れない箇所があった。普段の茉莉からは想像もできないような低い声。俺は何度も聞き返す。
「ごめん、もう一回言って?」
「もう、これが最後ね?」
茉莉は、俺の耳に口を近づけて、確かにそう言った。
『お前が死ねばよかったのに』
そこで、目が覚めた。
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