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ストレスを抱えて
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能海は一度教えたことはすぐに吸収する、いわゆる「天才肌」と呼ばれる部類の人だった。七月も終わり八月。もうすぐ夏休みも終わるという時期になると、彼女は俺に勉強を教わることはほとんどなくなった。俺の進度を遥かに超えた勉強量は、他の生徒はもちろん、講師まで驚くほどだ。相変わらず無口なので、周りからは機械か何かなのかと噂されている。
そんな能海だったが、俺と勉強会をする時はよく喋るようになった。
「……島崎は、何で大学に?」
能海の声は集中してやっと聞き取れるくらいだ。それを彼女は自覚しているのか、話しかけてくるときは必ずペンの先でつついてくる。自覚しているならもっと大きな声で話せば良いのに。
「さあ、なんでだろうな。学校の教師に言われるがまま、気付いたらここを目指してた」
「……そう」
予想していた回答と違ったのか、能海は興味なさげにまた参考書に目を落とす。能海はどこまでも自分勝手で、玲のような優しい女の子とは大違いだ。
「あのなぁ……」
その日は、丁度模試の結果に頭を悩ませていた。思っていたよりも成績の伸びが悪く、苛立っていたのかもしれない。俺は思わず声を荒げて、能海に対して怒鳴りつけていた。
「興味がないならわざわざ聞く必要ないだろう!お前が質問したい事があるからって勉強会を始めたのに、最近じゃ関係ないことばかり質問してきて……だいたい、今日は大事が用事があるのに、なんでお前に構わなきゃいけないんだよ!俺の邪魔をするなら帰ってくれよ、迷惑だ!」
そこまで言って、能海の目にうっすらと涙が浮かんでいることに気付いた。
「あ……」
「そんな……つもりじゃ……」
消え入りそうな彼女の声に、途端に罪悪感に苛まれた。何と言えば良いのか分からずに戸惑っていると、能海は荷物もそのままにして、その場から逃げるように出て行ってしまった。
急に大声を出したことと女子を泣かせてしまったことで、周りからは白い目で見られている。窓の外を見ると、雨が降っている。仕方なく、俺は二人分の荷物をまとめて、能海の後を追いかけた。
泣きながら塾を飛び出した彼女は、案外すぐに見つかった。能海は、少し歩いたところにある喫茶店のオーニングテントの下で体を丸めて、雨宿りしていた。
「……おい」
彼女の前に傘を差し出して、気まずいながらも話しかける。顔を上げた能海の目には、まだ涙が浮かんでいた。
「……お前の傘、分かりやすいな」
柄には大きく【能海愛花】と書かれたシールが貼ってある。俺なら恥ずかしくてすぐに捨てる。
「……すぐに無くすから」
「あっそ……早く持ってくれないか?流石に二人分は重い」
一人分でも、参考書やノートが大量に入った鞄は重い。それを二人分ともなると、誰も持ちたくはないだろう。
「……ん」
「まあ……立ち話も何だし、少しだけ中に入るか」
「……ん」
俺たちはそのまま、その喫茶店に入っていった。
そんな能海だったが、俺と勉強会をする時はよく喋るようになった。
「……島崎は、何で大学に?」
能海の声は集中してやっと聞き取れるくらいだ。それを彼女は自覚しているのか、話しかけてくるときは必ずペンの先でつついてくる。自覚しているならもっと大きな声で話せば良いのに。
「さあ、なんでだろうな。学校の教師に言われるがまま、気付いたらここを目指してた」
「……そう」
予想していた回答と違ったのか、能海は興味なさげにまた参考書に目を落とす。能海はどこまでも自分勝手で、玲のような優しい女の子とは大違いだ。
「あのなぁ……」
その日は、丁度模試の結果に頭を悩ませていた。思っていたよりも成績の伸びが悪く、苛立っていたのかもしれない。俺は思わず声を荒げて、能海に対して怒鳴りつけていた。
「興味がないならわざわざ聞く必要ないだろう!お前が質問したい事があるからって勉強会を始めたのに、最近じゃ関係ないことばかり質問してきて……だいたい、今日は大事が用事があるのに、なんでお前に構わなきゃいけないんだよ!俺の邪魔をするなら帰ってくれよ、迷惑だ!」
そこまで言って、能海の目にうっすらと涙が浮かんでいることに気付いた。
「あ……」
「そんな……つもりじゃ……」
消え入りそうな彼女の声に、途端に罪悪感に苛まれた。何と言えば良いのか分からずに戸惑っていると、能海は荷物もそのままにして、その場から逃げるように出て行ってしまった。
急に大声を出したことと女子を泣かせてしまったことで、周りからは白い目で見られている。窓の外を見ると、雨が降っている。仕方なく、俺は二人分の荷物をまとめて、能海の後を追いかけた。
泣きながら塾を飛び出した彼女は、案外すぐに見つかった。能海は、少し歩いたところにある喫茶店のオーニングテントの下で体を丸めて、雨宿りしていた。
「……おい」
彼女の前に傘を差し出して、気まずいながらも話しかける。顔を上げた能海の目には、まだ涙が浮かんでいた。
「……お前の傘、分かりやすいな」
柄には大きく【能海愛花】と書かれたシールが貼ってある。俺なら恥ずかしくてすぐに捨てる。
「……すぐに無くすから」
「あっそ……早く持ってくれないか?流石に二人分は重い」
一人分でも、参考書やノートが大量に入った鞄は重い。それを二人分ともなると、誰も持ちたくはないだろう。
「……ん」
「まあ……立ち話も何だし、少しだけ中に入るか」
「……ん」
俺たちはそのまま、その喫茶店に入っていった。
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