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受験期
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クリスマスも終わり、年の瀬。俺は家で、机に向かっている。
二十五日以降、俺は本格的に、受験勉強を始めることにした。今まで休み気味だった塾にもまた通うようにするので、玲との時間はますます減っていくだろうと思う。
『もうすぐ今年も終わるね』
携帯越しに聞こえる玲の声は、少し寂しそうだ。
「そうだね……来年は受験だ」
『うん……私も、頑張らないとね』
玲は看護学校を受験する予定らしい。難易度が高いらしく、合格できるかは分からないが、挑戦してみたいと言っていた。
「お互い頑張ろうね」
『うん、頑張ろう……あっ、純くん』
「うん?」
『あけましておめでとうございます』
気付けば、時計の針は十二時を回っていた。
「おめでとう。今年もよろしくね」
改まって新年の挨拶をする玲に、俺も挨拶を返す。二人で今年も頑張ろうと励ましあって、笑う。
一人でも一人じゃない。そんな年の初めを過ごすうちに、夜も更けていった。
四月になると、新しい一年生が入学してきた。
この学校では大学受験に集中する人が少ないため、三年生と下級生たちの交流が、他の高校より盛んになる。
俺は数少ない大学受験組なので、特に誰とも仲良くすることなく、受験に集中する日々になるだろう。尤も、元から人と仲良くする気は、あまりない。
加えて、玲と別のクラスになったので、校内ではほとんど声を発さなくなった。唯一また同じクラスになった輝樹も、最後の大会に向けて集中するらしく、最近は話すことはない。
学校と塾に通い詰める毎日。高校受験で失敗してこの高校に入学した経験を持つ身としては、大学受験だけは絶対に失敗したくないという思いが強い。毎日必死に勉強した。
そうこうしているうちに、七月。夏休みに入った。
休みといっても、受験生にとって夏休みは勝負の期間だ。休んでいる暇はない。
朝早くから塾の自習室にこもり、夏期講習が終わると、また自習室へ行く。
そんな日々が続くある日、塾に新しい生徒がやってきた。
無口な女子生徒で、俺と同じ大学を志望しているらしい。能海愛花というらしい彼女は、学力も俺とそれほど変わらず、同じクラスで授業を受けることになった。
能海はほとんど喋らない。誰かに分からない問題を質問することもないので、通い始めて一週間で、周りからは優等生だと思われていた。
そんな彼女と俺が仲良くなったきっかけは、とても些細なことだった。
ある日の授業後。今日は用事があったので、自習室には行かずに帰ろうとした時だった。困った様子の能海が、俺の着ている服の裾を引っ張ってきたのだ。
「……何でしょうか」
「ん……」
無言のまま、彼女は机に広げられた参考書を指さす。そのページには、俺が授業で解いた問題が載っていた。
「もしかして、これを教えてほしいと?」
能海は、そうだと言わんばかりに何度も頷く。なぜ俺なのか。そう思って辺りを見渡すと、教室の中には俺と能海の二人だけしかいなかった。
「今日は忙しいんだけど……まあ良いか」
俺は自分のノートを鞄から取り出し、彼女に席に座るように促す。彼女の席の向かいに椅子を置いて、俺はそこに座った。
「急いで説明するから、一度で理解してくれ」
五分ほど解き方を説明すると能海は完全に理解したらしく、応用問題までスラスラと解いてしまった。
「これが解けるなら大丈夫だな」
俺は椅子を元に戻して、変える準備を始める。満足した様子の能海は、俺が帰るのを察すると立ち上がり、頭を下げた。
「あ……ありがとう」
初めて聞いたその声は、聞き取りが困難なほど小さかった。
「おう……それじゃあ、また」
「……うん」
その日から、俺と能海は一緒に勉強することが増えた。
二十五日以降、俺は本格的に、受験勉強を始めることにした。今まで休み気味だった塾にもまた通うようにするので、玲との時間はますます減っていくだろうと思う。
『もうすぐ今年も終わるね』
携帯越しに聞こえる玲の声は、少し寂しそうだ。
「そうだね……来年は受験だ」
『うん……私も、頑張らないとね』
玲は看護学校を受験する予定らしい。難易度が高いらしく、合格できるかは分からないが、挑戦してみたいと言っていた。
「お互い頑張ろうね」
『うん、頑張ろう……あっ、純くん』
「うん?」
『あけましておめでとうございます』
気付けば、時計の針は十二時を回っていた。
「おめでとう。今年もよろしくね」
改まって新年の挨拶をする玲に、俺も挨拶を返す。二人で今年も頑張ろうと励ましあって、笑う。
一人でも一人じゃない。そんな年の初めを過ごすうちに、夜も更けていった。
四月になると、新しい一年生が入学してきた。
この学校では大学受験に集中する人が少ないため、三年生と下級生たちの交流が、他の高校より盛んになる。
俺は数少ない大学受験組なので、特に誰とも仲良くすることなく、受験に集中する日々になるだろう。尤も、元から人と仲良くする気は、あまりない。
加えて、玲と別のクラスになったので、校内ではほとんど声を発さなくなった。唯一また同じクラスになった輝樹も、最後の大会に向けて集中するらしく、最近は話すことはない。
学校と塾に通い詰める毎日。高校受験で失敗してこの高校に入学した経験を持つ身としては、大学受験だけは絶対に失敗したくないという思いが強い。毎日必死に勉強した。
そうこうしているうちに、七月。夏休みに入った。
休みといっても、受験生にとって夏休みは勝負の期間だ。休んでいる暇はない。
朝早くから塾の自習室にこもり、夏期講習が終わると、また自習室へ行く。
そんな日々が続くある日、塾に新しい生徒がやってきた。
無口な女子生徒で、俺と同じ大学を志望しているらしい。能海愛花というらしい彼女は、学力も俺とそれほど変わらず、同じクラスで授業を受けることになった。
能海はほとんど喋らない。誰かに分からない問題を質問することもないので、通い始めて一週間で、周りからは優等生だと思われていた。
そんな彼女と俺が仲良くなったきっかけは、とても些細なことだった。
ある日の授業後。今日は用事があったので、自習室には行かずに帰ろうとした時だった。困った様子の能海が、俺の着ている服の裾を引っ張ってきたのだ。
「……何でしょうか」
「ん……」
無言のまま、彼女は机に広げられた参考書を指さす。そのページには、俺が授業で解いた問題が載っていた。
「もしかして、これを教えてほしいと?」
能海は、そうだと言わんばかりに何度も頷く。なぜ俺なのか。そう思って辺りを見渡すと、教室の中には俺と能海の二人だけしかいなかった。
「今日は忙しいんだけど……まあ良いか」
俺は自分のノートを鞄から取り出し、彼女に席に座るように促す。彼女の席の向かいに椅子を置いて、俺はそこに座った。
「急いで説明するから、一度で理解してくれ」
五分ほど解き方を説明すると能海は完全に理解したらしく、応用問題までスラスラと解いてしまった。
「これが解けるなら大丈夫だな」
俺は椅子を元に戻して、変える準備を始める。満足した様子の能海は、俺が帰るのを察すると立ち上がり、頭を下げた。
「あ……ありがとう」
初めて聞いたその声は、聞き取りが困難なほど小さかった。
「おう……それじゃあ、また」
「……うん」
その日から、俺と能海は一緒に勉強することが増えた。
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