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瓦解
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誰でも良かった。玲に裏切られたという事実を一瞬でも忘れるためなら、誰でも。
俺は気付くと、能海を抱き締めていた。
その相手が能海だったのは、ただの偶然。気付いて声を掛けてきたのが彼女以外の誰かでも、俺は同じことをしていただろう。
「……島崎?」
能海は驚きながらも、俺の頭に手を置いて宥めてくれる。
「……取り敢えず、建物に入ろう」
彼女は立ち上がると、俺の手を引いて歩きだした。
白い天井に、小さなシャンデリアが垂れ下がっている。俺はそれを、ベッドに横になって呆然と見つめていた。シャワールームの扉が開いて、能海が出てくる。
「……落ち着いた?」
肩まである髪を耳に引っ掛けながら、能海は俺の顔を覗き込んでくる。その仕草は、普段の彼女からは想像できないほど、色っぽかった。
「あぁ……少しは」
「……そう、なら良かった」
会話は、ほとんどなかった。頭の良い能海のことだ。あの場に居合わせただけで、大体は察してくれたのだろう。俺たちはどちらからともなく、互いの唇を重ねた。
浮気したことによる玲への罪悪感は、全くない。これはお互い様だから、大丈夫。そんな、軽い気持ちだった。
玲もまだ俺の事が好きだったようで、執拗に俺を求めてくる。それに応えるように、俺も能海の体を求めた。
何もかも、忘れてしまいたかった。今だけは全て忘れて、目の前で乱れる少女に、集中したかった。
目が覚めて、隣で眠る能海の横顔を見つめる。結局、裏切られて空いた心の穴は、彼女で満たされることはなかった。少し気が楽になるだけ。俺にとっては、ただそれだけの関係。
それでも、今はそれで充分なんだと思えた。玲が他の男に現を抜かしている中、能海は俺の事だけを見てくれる。それで良かった。
ただ、俺が本当に好きなのは玲で、玲もそのはず。最後には俺のもとに帰ってきてくれる。
そう、思っていた。
今の俺を茉莉が見たら、どう思うだろう。
「何してんのよ」と喝を入れてくれるだろうか。それとも、俺の選んだ道だからと、肯定してくれるだろうか。
どうすれば俺は、茉莉の望んだ通り幸せになれるだろうか。
部屋に帰ると、玲が玄関で待っていた。
「こんな時間に帰ってくるなんて、珍しいね。どうしたの?」
表ではいつも通りの彼女。昨日現場を見なかったら、浮気なんて疑いすらしなかった。
「……大学の友達と飲んできた」
朝帰りしてきた俺の浮気を疑っているのだろうか。浮気したのは自分なのに。俺は適当に昨夜のアリバイを作った。
「そっか、顔色悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも」
曇りない眼で俺を見る玲に、吐き気を催してしまった。その場でうずくまって、胃の中のものを全て吐き出してしまった。
「えぇ!?ちょっと、飲みすぎだよぉ」
甲斐甲斐しく俺を介抱する玲の横顔は、何度見ても浮気なんてしているようには見えなかった。
俺は気付くと、能海を抱き締めていた。
その相手が能海だったのは、ただの偶然。気付いて声を掛けてきたのが彼女以外の誰かでも、俺は同じことをしていただろう。
「……島崎?」
能海は驚きながらも、俺の頭に手を置いて宥めてくれる。
「……取り敢えず、建物に入ろう」
彼女は立ち上がると、俺の手を引いて歩きだした。
白い天井に、小さなシャンデリアが垂れ下がっている。俺はそれを、ベッドに横になって呆然と見つめていた。シャワールームの扉が開いて、能海が出てくる。
「……落ち着いた?」
肩まである髪を耳に引っ掛けながら、能海は俺の顔を覗き込んでくる。その仕草は、普段の彼女からは想像できないほど、色っぽかった。
「あぁ……少しは」
「……そう、なら良かった」
会話は、ほとんどなかった。頭の良い能海のことだ。あの場に居合わせただけで、大体は察してくれたのだろう。俺たちはどちらからともなく、互いの唇を重ねた。
浮気したことによる玲への罪悪感は、全くない。これはお互い様だから、大丈夫。そんな、軽い気持ちだった。
玲もまだ俺の事が好きだったようで、執拗に俺を求めてくる。それに応えるように、俺も能海の体を求めた。
何もかも、忘れてしまいたかった。今だけは全て忘れて、目の前で乱れる少女に、集中したかった。
目が覚めて、隣で眠る能海の横顔を見つめる。結局、裏切られて空いた心の穴は、彼女で満たされることはなかった。少し気が楽になるだけ。俺にとっては、ただそれだけの関係。
それでも、今はそれで充分なんだと思えた。玲が他の男に現を抜かしている中、能海は俺の事だけを見てくれる。それで良かった。
ただ、俺が本当に好きなのは玲で、玲もそのはず。最後には俺のもとに帰ってきてくれる。
そう、思っていた。
今の俺を茉莉が見たら、どう思うだろう。
「何してんのよ」と喝を入れてくれるだろうか。それとも、俺の選んだ道だからと、肯定してくれるだろうか。
どうすれば俺は、茉莉の望んだ通り幸せになれるだろうか。
部屋に帰ると、玲が玄関で待っていた。
「こんな時間に帰ってくるなんて、珍しいね。どうしたの?」
表ではいつも通りの彼女。昨日現場を見なかったら、浮気なんて疑いすらしなかった。
「……大学の友達と飲んできた」
朝帰りしてきた俺の浮気を疑っているのだろうか。浮気したのは自分なのに。俺は適当に昨夜のアリバイを作った。
「そっか、顔色悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも」
曇りない眼で俺を見る玲に、吐き気を催してしまった。その場でうずくまって、胃の中のものを全て吐き出してしまった。
「えぇ!?ちょっと、飲みすぎだよぉ」
甲斐甲斐しく俺を介抱する玲の横顔は、何度見ても浮気なんてしているようには見えなかった。
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