43 / 57
入店4回目 4 ~痛客~
しおりを挟む
「お客さま、困ります」
黒服さんはほとんど羽交い締め状態で女性を止めようとして、他のホストさんたちは二人の女性の間にどうにか割って入ろうとしています。
どう見ても“修羅場”という表現がふさわしそうな状況。
――結局、エースさんに喧嘩を売りにいった女性はそのまま退店させられてしまいました。
「皆さまお騒がせいたしました」
騒ぎがすむと、ことの成り行きを固唾を飲んで見守っていた店内中の方々に黒服さんが頭を下げて回ります。
「ごめんね、愛香ちゃん。びっくりしたでしょ」
「いいえ・・・」
純さんも申し訳なさそうに謝ってくださいましたが、私はただただ驚いてなにも言えませんでした。
「ホント、ごめんね。気を取り直してこれから楽しも」
琳人さんもどこかばつが悪そうにそうおっしゃってくださるのですが、私は曖昧な笑みしか返せません。
彼女たちを庇うわけではないですが・・・同じ女として気持ちは分からなくはないと思うのです。
ホストクラブのお姫に限らず、女性というのはマウンティングが好きな生き物です。
ましてホストクラブのように費やした金額が数字として目に見えるのあればマウンティングもしやすいかもしれません。
ただ・・・。
ネット上にはホストクラブの情報サイトなるものもあって、そこにはお姫たちが様々なことを書き込める掲示板もあります。
そういうところやTwitterなどでいわゆる「担当狂い」と自称するほど一人のホストさんにはまって入れ込んでいる女性たちの書き込みを見ていると何だか切なくなってしまうのです。
ホストと客という関係も、大まかに言ってしまえば人間関係の一つです。
ホストもお客さまも人間なのですから、そこに“情”が絡んでくることもあります。
「ホストに入れ込むなんて頭の悪い女だ」と一般的には侮蔑を持って認識されがちですが、例えば応援したい人、好きな人のために必死になるというのは、対象が誰であれ、女性であれば多かれ少なかれ経験したことがある、もしくは理解できるとおっしゃる方が大半なのではないかと思います。
お姫たちは心の底からホストさんたちを応援していて、あるいは本当にお相手のことが好きで、だからこそ日々ご自分たちの立場に思い悩まれることもあるのです。
マウンティングだって詰まるところ「あたしが一番彼のことを思ってるのよ!」「あたしが一番彼に尽くしてるのよ!」という心の叫びだとすれば、健気・・・と言えなくもないのではないでしょうか。
ただホストクラブの場合、費やされる金額と方向性が多少一般とは乖離しているというだけで。
店内で騒ぎを起こしたお客さまは“痛客”と認定され最悪出禁になることもあるらしいですが・・・痛客の女性にもエースさんにも、何だか私は(変な言い方ですが)女として親近感を抱くことしかできませんでした。
黒服さんはほとんど羽交い締め状態で女性を止めようとして、他のホストさんたちは二人の女性の間にどうにか割って入ろうとしています。
どう見ても“修羅場”という表現がふさわしそうな状況。
――結局、エースさんに喧嘩を売りにいった女性はそのまま退店させられてしまいました。
「皆さまお騒がせいたしました」
騒ぎがすむと、ことの成り行きを固唾を飲んで見守っていた店内中の方々に黒服さんが頭を下げて回ります。
「ごめんね、愛香ちゃん。びっくりしたでしょ」
「いいえ・・・」
純さんも申し訳なさそうに謝ってくださいましたが、私はただただ驚いてなにも言えませんでした。
「ホント、ごめんね。気を取り直してこれから楽しも」
琳人さんもどこかばつが悪そうにそうおっしゃってくださるのですが、私は曖昧な笑みしか返せません。
彼女たちを庇うわけではないですが・・・同じ女として気持ちは分からなくはないと思うのです。
ホストクラブのお姫に限らず、女性というのはマウンティングが好きな生き物です。
ましてホストクラブのように費やした金額が数字として目に見えるのあればマウンティングもしやすいかもしれません。
ただ・・・。
ネット上にはホストクラブの情報サイトなるものもあって、そこにはお姫たちが様々なことを書き込める掲示板もあります。
そういうところやTwitterなどでいわゆる「担当狂い」と自称するほど一人のホストさんにはまって入れ込んでいる女性たちの書き込みを見ていると何だか切なくなってしまうのです。
ホストと客という関係も、大まかに言ってしまえば人間関係の一つです。
ホストもお客さまも人間なのですから、そこに“情”が絡んでくることもあります。
「ホストに入れ込むなんて頭の悪い女だ」と一般的には侮蔑を持って認識されがちですが、例えば応援したい人、好きな人のために必死になるというのは、対象が誰であれ、女性であれば多かれ少なかれ経験したことがある、もしくは理解できるとおっしゃる方が大半なのではないかと思います。
お姫たちは心の底からホストさんたちを応援していて、あるいは本当にお相手のことが好きで、だからこそ日々ご自分たちの立場に思い悩まれることもあるのです。
マウンティングだって詰まるところ「あたしが一番彼のことを思ってるのよ!」「あたしが一番彼に尽くしてるのよ!」という心の叫びだとすれば、健気・・・と言えなくもないのではないでしょうか。
ただホストクラブの場合、費やされる金額と方向性が多少一般とは乖離しているというだけで。
店内で騒ぎを起こしたお客さまは“痛客”と認定され最悪出禁になることもあるらしいですが・・・痛客の女性にもエースさんにも、何だか私は(変な言い方ですが)女として親近感を抱くことしかできませんでした。
0
あなたにおすすめの小説
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~
伊咲 汐恩
恋愛
高校三年生の菊池梓は教師の高梨と交際中。ある日、元彼 蓮に密会現場を目撃されてしまい、復縁宣言される。蓮は心の距離を縮めようと接近を試みるが言葉の履き違えから不治の病と勘違いされる。慎重に恋愛を進める高梨とは対照的に蓮は度重なる嫌がらせと戦う梓を支えていく。後夜祭の時に密会している梓達の前に現れた蓮は梓の手を取って高梨に堂々とライバル宣言をする。そして、後夜祭のステージ上で付き合って欲しいと言い…。
※ この物語はフィクションです。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
この作品は「魔法のiらんど、野いちご、ベリーズカフェ、エブリスタ、小説家になろう」にも掲載してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる