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入店5回目 6 ~泣きそうです・・・~
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思わずベッドに顔を伏せて寄りかかると、我知らず嗚咽がもれました。
もうそうなったら泣き止むことはできなくて、わぁわぁ声を上げて泣いてしまいました。
こんなに派手に泣いたのは小学生の時くらい、という感じです。
自分でも何がそんなに悲しいのか分からないのに、泣いて泣いて泣いて・・・三十分くらいたったでしょうか。
ようやく落ち着いてきて、というより喉が痛くなって、それ以上泣くことができなくなってひっくひっくしゃくり上げる程度になりました。
そこで床に投げ出していたバッグから携帯を取り出しました。
誰かに助けを求めずにはいられなくなって・・・当然、こんな時に頼れるのはお一人しかいません。
『幸子さん、まだ起きてらっしゃいます?』
幸子さんにそうLINEを送りました。
時間はまだ夜の11時前ですから、おそらく寝てはいらっしゃらないはずです。
『起きてるよ。何? 愛香がこんな時間に珍しいね』
案の定、すぐに返信がありました。
『今お話しても大丈夫ですか?』
『大丈夫だよ。LINEじゃ面倒くさいなら電話にしようか?』
そうおっしゃってくださったので、お言葉に甘えて通話に切り替えます。
「どーしたのー? 何かあった?」
いつもならまずありえない時間に私から連絡があったことで、幸子さんは既に何かを察してくださってるみたいです。
「実は、今日ホストクラブに行ったんですが・・・」
私は、今日あったことを、お盆休み中に純さんから来店のお願いをされたことまで含めて事細かにお話しました。
全部が全部順序立ててお話できたわけではありませんが、幸子さんは辛抱強く最後まで耳を傾けてくださいました。
「だからさぁ・・・」
全てお話し終わって、幸子さんは呆れたようにそう言いかけます。
でも途中で思い直されたらしく、一度言葉が途切れました。
「正直さぁ・・・そんな思いまでしてホストクラブって通う意味あるの?」
「・・・分かりません・・・」
「私はさ、大学の時ファミレスでバイトしてたことあるんだけど、そこでも『お客さまの立場に立って考えろ』『お客さまが何を求めているのか察することができるようになれ』って言われたよ? まぁ、同じ接客業でもファミレスとホストクラブじゃ全然違うのかもしれないけどさ」
「純さんはいつも『お店に来てお店を盛り上げてくれるお客さまを大事にする』っておっしゃってますよ」
「で、あんたは大事にされてんの?」
「分からないです・・・。ただ、純さんは『お店に恩返しをする』っていうのも口癖のようにおしゃってて・・・だから、そのことに集中すると、周りが見えなくなってしまうことはあるのではないかと・・・」
「じゃあさ、ホストクラブってなんのために存在すんの?って話じゃない? 少なくともホストの自己満のためではないでしょ? 愛香だって、お金払って遊びに行ってんのに、楽しめなかったら意味なくない?」
「それは・・・そうですが・・・」
「まぁ、ホストと客って関係は普通の接客業とはちょっと違うのかもしれないけどさ。でも、『応援する』って言ったら、客はホストの願いを何でも叶えてやらなきゃいけないわけ? あんたにも意思や都合があるのに? それじゃ客じゃなくて奴隷じゃん」
幸子さんは私のためにあえて辛辣な言葉を使って諭してくださったのだとは思いますが、私は何も言い返せませんでした。
もうそうなったら泣き止むことはできなくて、わぁわぁ声を上げて泣いてしまいました。
こんなに派手に泣いたのは小学生の時くらい、という感じです。
自分でも何がそんなに悲しいのか分からないのに、泣いて泣いて泣いて・・・三十分くらいたったでしょうか。
ようやく落ち着いてきて、というより喉が痛くなって、それ以上泣くことができなくなってひっくひっくしゃくり上げる程度になりました。
そこで床に投げ出していたバッグから携帯を取り出しました。
誰かに助けを求めずにはいられなくなって・・・当然、こんな時に頼れるのはお一人しかいません。
『幸子さん、まだ起きてらっしゃいます?』
幸子さんにそうLINEを送りました。
時間はまだ夜の11時前ですから、おそらく寝てはいらっしゃらないはずです。
『起きてるよ。何? 愛香がこんな時間に珍しいね』
案の定、すぐに返信がありました。
『今お話しても大丈夫ですか?』
『大丈夫だよ。LINEじゃ面倒くさいなら電話にしようか?』
そうおっしゃってくださったので、お言葉に甘えて通話に切り替えます。
「どーしたのー? 何かあった?」
いつもならまずありえない時間に私から連絡があったことで、幸子さんは既に何かを察してくださってるみたいです。
「実は、今日ホストクラブに行ったんですが・・・」
私は、今日あったことを、お盆休み中に純さんから来店のお願いをされたことまで含めて事細かにお話しました。
全部が全部順序立ててお話できたわけではありませんが、幸子さんは辛抱強く最後まで耳を傾けてくださいました。
「だからさぁ・・・」
全てお話し終わって、幸子さんは呆れたようにそう言いかけます。
でも途中で思い直されたらしく、一度言葉が途切れました。
「正直さぁ・・・そんな思いまでしてホストクラブって通う意味あるの?」
「・・・分かりません・・・」
「私はさ、大学の時ファミレスでバイトしてたことあるんだけど、そこでも『お客さまの立場に立って考えろ』『お客さまが何を求めているのか察することができるようになれ』って言われたよ? まぁ、同じ接客業でもファミレスとホストクラブじゃ全然違うのかもしれないけどさ」
「純さんはいつも『お店に来てお店を盛り上げてくれるお客さまを大事にする』っておっしゃってますよ」
「で、あんたは大事にされてんの?」
「分からないです・・・。ただ、純さんは『お店に恩返しをする』っていうのも口癖のようにおしゃってて・・・だから、そのことに集中すると、周りが見えなくなってしまうことはあるのではないかと・・・」
「じゃあさ、ホストクラブってなんのために存在すんの?って話じゃない? 少なくともホストの自己満のためではないでしょ? 愛香だって、お金払って遊びに行ってんのに、楽しめなかったら意味なくない?」
「それは・・・そうですが・・・」
「まぁ、ホストと客って関係は普通の接客業とはちょっと違うのかもしれないけどさ。でも、『応援する』って言ったら、客はホストの願いを何でも叶えてやらなきゃいけないわけ? あんたにも意思や都合があるのに? それじゃ客じゃなくて奴隷じゃん」
幸子さんは私のためにあえて辛辣な言葉を使って諭してくださったのだとは思いますが、私は何も言い返せませんでした。
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