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第9杯 ②
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「大変なんだね、ふたりとも」
あたしの言葉に、洋輔が誰よりも先に反応した。
「まぁな、どっかの誰かとは違って、俺も慎一も大変なの」
「へ~。それはそれは、どっかの誰かとは、誰の事なんだろうね?」
「さぁ~俺の口からは言えないねぇ」
「あっそ。あたしもどっかの住人に迷惑かけられて、大変なんだよね」
あたしの態度に、どうやらこれ以上は話さないほうがいいと悟った洋輔は、口をつぐんだ。
洋輔があたしにしてくれた事を思えば、今は黙っといた方が賢明。でも、少しいじめすぎたかな、と感じる自分もいた。あたしはちょっぴし大人気なかったと、少しだけ反省するのだった。
相変わらずなあたしたちふたりの会話には参加せず、藤井くんは会話が終わったのを見計らってから、話し掛けてくれる。
「そう言えば、険悪になる前のふたりは何を話し、してたわけ?」
藤井くんに痛い所を突かれたあたしも洋輔も、お互いの顔をチラッと見ては、様子をうかがうのだった。
少しの間を置いてから、洋輔が先に口を開く。
「……安心しろ。俺たちほんの5分前は、ちゃんと会話できてたぜ」
「それは、よかった。もっと皮肉のオンパレードで、会話にならない会話してたのかと、思ったよ」
藤井くんにしては珍しく毒づいた。その後、彼があたしたちに視線を送ると意味あり気に、あたしと洋輔を見入るのだった。
あたしはそれで藤井くんが何を言いたいのか、なんとなくわかった。彼の期待に応えるべく、声を出す。
「言いたい事はわかったよ――――藤井くん」
「じゃ、僕が来る前の仲良く会話してた事を、教えてくれるかい?」
そう言って皮肉る藤井くんは、あたしたちへ微笑んだ。
そして、優しい笑みを浮かべた藤井くんが、今度はあたしだけを見つめる。
「ええ、喜んで」
あたしは藤井くんの何とも言えない眼差しに観念して、苦笑してから、マス姉の為の計画を打ち明けた。
あたしが話し終えると藤井くんは賛同してくれるのだった。
「それいいんじゃないかな、気分転換になるだろうしね」
「だろ、慎一」
洋輔があたしの代わりに、ご満悦な顔をして答えた。
藤井くんの賛成で、あたしは勇気を出し、もう一つの話も切り出す。
「それでよかったら、時間ある時にでも、お手伝いしてもらうと、ありがたいかな」
「ああ、いいけど。何かする事あるのかい?」
藤井くんの疑問にあたしが答える間もなく、洋輔が便乗する。
「そう言えば、まだ、なんも決まってなくね?」
「うん、それを今から考えないと」
「場所と、コンセプトの夜桜が決まってるって事は――――――」
洋輔の言葉が途切れる。そして、少しの間考えてから、何かひらめいた様子。
「月並みだけど、花見だから、料理とか出して、皆で盛り上がるのがいいんじゃなくね?」
「お料理はもちろんだけど、重箱か、BBQとかね。どんなのがいいかなって」
「どっちも捨てがたいよな」
「でしょ?」
あたしと洋輔が意気投合する中、藤井くんの反応も知りたくて、彼を見た。
すると、藤井くんが乗り気じゃないような態度のようにもみえた。
「う~ん――――よかったら、料理は俺にまかしてもらえるかい?」
「ええ。料理得意なの、藤井くん?」
「あ~、……心辺りがあるから、その人に作ってもらうよ」
「じゃあ、お願いします」
「洋輔とあたしは、どうしよっか?」
「――――そうだな」
再び悩むあたし達を見て、横から、藤井くんが洋輔を呼ぶ。
「洋輔は料理の材料や色んな物を運ぶ、力仕事を頼むよ」
「了解。んじゃ、トウコはどうするんだ?」
藤井くんが洋輔にあたしの事を指摘されるとあたしの役割を考える。
「そうだな――――――」
「俺らだけじゃ、しんどいって。トウコにも手伝ってもらってもよくね?」
「あたしも、役に立てると思うけど――――――」
「いや、宮野さんにはマス姉以外の人のスケジュールおさえてもらうと助かるよ」
「OK。でも、あたしが言い出したのに、その仕事だけでいいのかな……?」
快くは返事したものの、やっぱり少しふに落ちない気もする。それにふたりに悪い気もした。
「いいよ、宮野さんにはマス姉にはバレないように、連れ出してもらう、重要な仕事が控えてるんだから」
「そっか――――――そうだよね。一番重要だよね、それが」
藤井くんは納得したあたしを見てから、ホッとしたような表情で穏やかに笑ってくれた。
「ああ、そうさ。洋輔も僕も男だからね、しんどい事は任しといてくれよ」
「んじゃ、哲太さんも巻き込んじゃおうぜ」
新たに洋輔が自分の提案を藤井くんへ述べた。彼の提案に真っ先に乗ったのは、このあたしだった。
「だね、きっと飛んで来てくれるよ」
「だろ?」
洋輔もあたしも気持ちがかみ合い、やっと自然と笑顔が、お互いから溢れ出るのだった。
あたしたちふたりの様子を見守る藤井くんはにこやな表情を浮かべる。
「ふたりともわかったよ。じゃあ、そのつもりで夜、哲太さんに声掛けておくよ」
今日はあたしたちのちょっとしたケンカもマス姉の計画も、藤井くんに全て丸く収められた。彼は洋輔と違って、頼りがいがある人だというのがよくわかった日。そして、あたしにとって、藤井くんという人間を知る貴重な一日なったのだった。
あたしの言葉に、洋輔が誰よりも先に反応した。
「まぁな、どっかの誰かとは違って、俺も慎一も大変なの」
「へ~。それはそれは、どっかの誰かとは、誰の事なんだろうね?」
「さぁ~俺の口からは言えないねぇ」
「あっそ。あたしもどっかの住人に迷惑かけられて、大変なんだよね」
あたしの態度に、どうやらこれ以上は話さないほうがいいと悟った洋輔は、口をつぐんだ。
洋輔があたしにしてくれた事を思えば、今は黙っといた方が賢明。でも、少しいじめすぎたかな、と感じる自分もいた。あたしはちょっぴし大人気なかったと、少しだけ反省するのだった。
相変わらずなあたしたちふたりの会話には参加せず、藤井くんは会話が終わったのを見計らってから、話し掛けてくれる。
「そう言えば、険悪になる前のふたりは何を話し、してたわけ?」
藤井くんに痛い所を突かれたあたしも洋輔も、お互いの顔をチラッと見ては、様子をうかがうのだった。
少しの間を置いてから、洋輔が先に口を開く。
「……安心しろ。俺たちほんの5分前は、ちゃんと会話できてたぜ」
「それは、よかった。もっと皮肉のオンパレードで、会話にならない会話してたのかと、思ったよ」
藤井くんにしては珍しく毒づいた。その後、彼があたしたちに視線を送ると意味あり気に、あたしと洋輔を見入るのだった。
あたしはそれで藤井くんが何を言いたいのか、なんとなくわかった。彼の期待に応えるべく、声を出す。
「言いたい事はわかったよ――――藤井くん」
「じゃ、僕が来る前の仲良く会話してた事を、教えてくれるかい?」
そう言って皮肉る藤井くんは、あたしたちへ微笑んだ。
そして、優しい笑みを浮かべた藤井くんが、今度はあたしだけを見つめる。
「ええ、喜んで」
あたしは藤井くんの何とも言えない眼差しに観念して、苦笑してから、マス姉の為の計画を打ち明けた。
あたしが話し終えると藤井くんは賛同してくれるのだった。
「それいいんじゃないかな、気分転換になるだろうしね」
「だろ、慎一」
洋輔があたしの代わりに、ご満悦な顔をして答えた。
藤井くんの賛成で、あたしは勇気を出し、もう一つの話も切り出す。
「それでよかったら、時間ある時にでも、お手伝いしてもらうと、ありがたいかな」
「ああ、いいけど。何かする事あるのかい?」
藤井くんの疑問にあたしが答える間もなく、洋輔が便乗する。
「そう言えば、まだ、なんも決まってなくね?」
「うん、それを今から考えないと」
「場所と、コンセプトの夜桜が決まってるって事は――――――」
洋輔の言葉が途切れる。そして、少しの間考えてから、何かひらめいた様子。
「月並みだけど、花見だから、料理とか出して、皆で盛り上がるのがいいんじゃなくね?」
「お料理はもちろんだけど、重箱か、BBQとかね。どんなのがいいかなって」
「どっちも捨てがたいよな」
「でしょ?」
あたしと洋輔が意気投合する中、藤井くんの反応も知りたくて、彼を見た。
すると、藤井くんが乗り気じゃないような態度のようにもみえた。
「う~ん――――よかったら、料理は俺にまかしてもらえるかい?」
「ええ。料理得意なの、藤井くん?」
「あ~、……心辺りがあるから、その人に作ってもらうよ」
「じゃあ、お願いします」
「洋輔とあたしは、どうしよっか?」
「――――そうだな」
再び悩むあたし達を見て、横から、藤井くんが洋輔を呼ぶ。
「洋輔は料理の材料や色んな物を運ぶ、力仕事を頼むよ」
「了解。んじゃ、トウコはどうするんだ?」
藤井くんが洋輔にあたしの事を指摘されるとあたしの役割を考える。
「そうだな――――――」
「俺らだけじゃ、しんどいって。トウコにも手伝ってもらってもよくね?」
「あたしも、役に立てると思うけど――――――」
「いや、宮野さんにはマス姉以外の人のスケジュールおさえてもらうと助かるよ」
「OK。でも、あたしが言い出したのに、その仕事だけでいいのかな……?」
快くは返事したものの、やっぱり少しふに落ちない気もする。それにふたりに悪い気もした。
「いいよ、宮野さんにはマス姉にはバレないように、連れ出してもらう、重要な仕事が控えてるんだから」
「そっか――――――そうだよね。一番重要だよね、それが」
藤井くんは納得したあたしを見てから、ホッとしたような表情で穏やかに笑ってくれた。
「ああ、そうさ。洋輔も僕も男だからね、しんどい事は任しといてくれよ」
「んじゃ、哲太さんも巻き込んじゃおうぜ」
新たに洋輔が自分の提案を藤井くんへ述べた。彼の提案に真っ先に乗ったのは、このあたしだった。
「だね、きっと飛んで来てくれるよ」
「だろ?」
洋輔もあたしも気持ちがかみ合い、やっと自然と笑顔が、お互いから溢れ出るのだった。
あたしたちふたりの様子を見守る藤井くんはにこやな表情を浮かべる。
「ふたりともわかったよ。じゃあ、そのつもりで夜、哲太さんに声掛けておくよ」
今日はあたしたちのちょっとしたケンカもマス姉の計画も、藤井くんに全て丸く収められた。彼は洋輔と違って、頼りがいがある人だというのがよくわかった日。そして、あたしにとって、藤井くんという人間を知る貴重な一日なったのだった。
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