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第11杯 ②
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背中が痛い……と思ったあたしは、その場で寝返りをうった――――――瞬間、柔らかい感触がくちびるに触れる。そして、一瞬でくちびるからそれは離れた。頭の中は真っ白になるし、何が自分に起こったのか、あたしには理解できなかった。
気が付くと自分の口を手で覆った上に、まぶたも今だ閉じたまま、あたしは固まる事しかできないでいた。
寝転んだままのあたしは、自分の身体の方に軽く顔をうずめるのだった。
頭のなかでは、今さっき起きた出来事がグルグルといつまでも渦巻いている。
どれくらい、その状態が続いたかわからなくなる程で、まぶたを開ける事すら忘れていた。
起きなきゃっと、あたしが身体を勢いよく起こし、おきあがる。次に硬い物がぶつかり合う鈍い音がした。その瞬間、あたしの目の前がチカチカと点滅。
そこへ、誰かがあたしに声を掛けるのだった。
「だ、大丈夫か?」
慌てる声は哲太さんで、あたしを見てオロオロしている様子。
何がどうしたのか、またまたわからない。あまりの痛さに自分の額を手でおさえたあたしは、痛さでうずくまる。
「ふたりとも、何やってんだよ」
呆れた声の洋輔が、あたしたちを見兼ねたらしく、こっちに彼らが近づいてくる。複数の足音があたしの耳にきこえるのだった。
「いや、その、洋輔が起こしてくれって――――――」
「言ったけどさ、哲太さん何も頭突きしなくてもいいんじゃなくね?」
洋輔の人聞き悪い冗談にも、対応できない程、哲太さんは追い込まれている様子。
「――――彼女が、こっちに、向かって来て……」
その後の言葉が続かない哲太さん。そこへもうひとりが声を出した。
あたしの後ろで、藤井くんの声が聞こえてくる。
「そんな事より、誰か冷やすものを」
そう言って、あたしの背中に、優しく手を添えてくれる藤井くん。
「だ、大丈夫。ちょ……と、ビックリしただけだから」
心配そうにあたしを見る藤井くんと哲太さんに、あたしは何とか作り笑いで応える。
すると、急にあたしの身体が浮き上がり、ビックリして思わず声が出た。
「キャッ……」
気が付いた時には、もう藤井くんがあたしをお姫様抱っこしていた。
「ビックリさせて、ごめん。でも、急いで冷やさないと」
「ホント、大丈夫だからおろして」
「そんなに額が赤いのに、大丈夫なわけないだろ」
「ホ、ホントに大丈夫だから」
やばい、藤井くんの顔近くて、あたし真面に見れないよ……気づかれないように彼からあたしは顔を逸らす。そして、意外と細マッチョな腕の中で、今もワタワタと暴れるのだった。
あたしがおろしてもらおうと必死に抵抗を試みているのに、余計なひと言で洋輔が水を差す。
「お前の額、ホントに赤いから。ここは慎一のいう事をきいた方がいいんじゃなくね?」
「で、でも……」
戸惑っているあたしを見た哲太さんが、沈黙を破ってやっと声を出した。
「慎一が恥ずかしいなら、代わりに」
「たぶん、慎一がとか、そう言う事じゃないと思うぜ――――哲太さん」
「そ、そうだな」
哲太さんがマジな顔の洋輔に突っ込まれるとヘコんだ模様。
「慎一、早く連れて帰ってやれよ」
「ああ。それじゃ、洋輔と哲太さん悪いけど後をお願いするよ」
「それはいいけど、すまないな慎一。彼女の事頼んだよ」
「はい、哲太さん」
藤井くんはそう言って、土手の方へ急ぐ。あたしを抱えたままハイツへ走ってくれるのだった。
気が付くと自分の口を手で覆った上に、まぶたも今だ閉じたまま、あたしは固まる事しかできないでいた。
寝転んだままのあたしは、自分の身体の方に軽く顔をうずめるのだった。
頭のなかでは、今さっき起きた出来事がグルグルといつまでも渦巻いている。
どれくらい、その状態が続いたかわからなくなる程で、まぶたを開ける事すら忘れていた。
起きなきゃっと、あたしが身体を勢いよく起こし、おきあがる。次に硬い物がぶつかり合う鈍い音がした。その瞬間、あたしの目の前がチカチカと点滅。
そこへ、誰かがあたしに声を掛けるのだった。
「だ、大丈夫か?」
慌てる声は哲太さんで、あたしを見てオロオロしている様子。
何がどうしたのか、またまたわからない。あまりの痛さに自分の額を手でおさえたあたしは、痛さでうずくまる。
「ふたりとも、何やってんだよ」
呆れた声の洋輔が、あたしたちを見兼ねたらしく、こっちに彼らが近づいてくる。複数の足音があたしの耳にきこえるのだった。
「いや、その、洋輔が起こしてくれって――――――」
「言ったけどさ、哲太さん何も頭突きしなくてもいいんじゃなくね?」
洋輔の人聞き悪い冗談にも、対応できない程、哲太さんは追い込まれている様子。
「――――彼女が、こっちに、向かって来て……」
その後の言葉が続かない哲太さん。そこへもうひとりが声を出した。
あたしの後ろで、藤井くんの声が聞こえてくる。
「そんな事より、誰か冷やすものを」
そう言って、あたしの背中に、優しく手を添えてくれる藤井くん。
「だ、大丈夫。ちょ……と、ビックリしただけだから」
心配そうにあたしを見る藤井くんと哲太さんに、あたしは何とか作り笑いで応える。
すると、急にあたしの身体が浮き上がり、ビックリして思わず声が出た。
「キャッ……」
気が付いた時には、もう藤井くんがあたしをお姫様抱っこしていた。
「ビックリさせて、ごめん。でも、急いで冷やさないと」
「ホント、大丈夫だからおろして」
「そんなに額が赤いのに、大丈夫なわけないだろ」
「ホ、ホントに大丈夫だから」
やばい、藤井くんの顔近くて、あたし真面に見れないよ……気づかれないように彼からあたしは顔を逸らす。そして、意外と細マッチョな腕の中で、今もワタワタと暴れるのだった。
あたしがおろしてもらおうと必死に抵抗を試みているのに、余計なひと言で洋輔が水を差す。
「お前の額、ホントに赤いから。ここは慎一のいう事をきいた方がいいんじゃなくね?」
「で、でも……」
戸惑っているあたしを見た哲太さんが、沈黙を破ってやっと声を出した。
「慎一が恥ずかしいなら、代わりに」
「たぶん、慎一がとか、そう言う事じゃないと思うぜ――――哲太さん」
「そ、そうだな」
哲太さんがマジな顔の洋輔に突っ込まれるとヘコんだ模様。
「慎一、早く連れて帰ってやれよ」
「ああ。それじゃ、洋輔と哲太さん悪いけど後をお願いするよ」
「それはいいけど、すまないな慎一。彼女の事頼んだよ」
「はい、哲太さん」
藤井くんはそう言って、土手の方へ急ぐ。あたしを抱えたままハイツへ走ってくれるのだった。
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