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第22杯 ④
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まず、ミルでコーヒー豆を粉にする。そして、メモリの付いた透明耐熱ガラスのサーバーの上に円錐形ドリッパーを設置。
ドリッパーにはペーパーをセット。その中にコーヒー粉を入れる。
粉の表面を平らにしておく。その上に一度沸騰させたものを90度以下にして、粉全部にいくように注ぐ。蒸らすのでそのまま数十秒待つ。
蒸らした後はまたお湯を全体にのを描くような感じで注ぎ、二回目以降はなるだけ真ん中辺りからお湯を注ぐ。この時お湯がサーバーに落ち切る前に、ゆっくり注いでいく。
完成は粉の中心辺りに白い泡になったら抽出完了。
あたしは一連の作業を終えると温めておいたコーヒーカップに入れた。
初めて誤魔化しの効かないブラックコーヒー出す。それをふたりの前に置いた。
「お待たせしました。どうぞ」
目の前にあるカップの薫りをふたりが揃って味わう。
「いい薫りだね」
そう言って、藤井くんは微笑んだ。それに続いて洋輔の顔からも自然と笑みがこぼれる。
「ホントにいい薫りだな」
「今度は味も味わってみて」
ふたりはまた揃って、カップを持ち、コーヒーを味わう。
今度は洋輔が先にしゃべり出した。
「俺、実は言うとブラックは苦手だったんだよな。超苦みがあって。アメリカンは薄いから余計あれだけどな。これはいい苦味が口に広がってコーヒーを飲んでるって気がする」
「確かに、その通りだね。いい味してるよ」
洋輔の言葉に納得した藤井くんが、うんうんと頷きながらまた口にカップをつける。
あたしにはホントにおいしそうに飲むふたりの姿が嬉しいのだった。
「ふたりとも、ありがとう。ホントにおいしそうに飲んでくれるから、すごく嬉しい」
あたしは言葉ひとつひとつに心を込めた。
藤井くんがそう言ったあたしの顔を見ると、手にあるカップを置く。
「これさ、大家さんにも召し上がって貰った方がいいよ」
「かな? お礼にあたしもそれは思ってたんだけどね。でも、お店邪魔しちゃいけないから、なかなか言い出せなくて」
困った顏であたしがそう言うと、今度は洋輔が藤井くんに加勢する。
「慎一、それ超いい考えじゃなくね」
藤井くんは黙って頷いているけど、あたしはまだ少し不安だった。
「トウコは心配すんな。ちゃんと呼んできてやるから」
「そうだよ、宮野さん」
ふたりの心強い味方ができて、あたしの顔からみるみる内に笑顔が戻る。
「じゃあ、これを飲んだら、洋輔呼びに行こう」
「ああ、それがいいな」
しばらくして、ふたりはコーヒーを味わい終わると約束した通り大家さんを呼びに、ここを後にした。
約束通り、ふたりは大家さんを呼んできてくれた。
あたしの目の前で大家さんはカップを持ってから、鼻の傍に寄せる。そうやって何も混じっていないブラックコーヒーの薫りを堪能する。そして、いよいよカップに口をつけた。
コーヒーを舌で味わいながら、徐々に口の中へひろがって行くようで、口を小刻みに動かしている。
その様子をあたしはただジッと見つめるのだった。すごく緊張して、手に汗が自然と湧き出てくる。この緊張感が伝わっているようで、大家さんがこちらを見た。
「董子ちゃん、とてもおいしいよ。今まで一番良い出来だよ」
彼の元々のシワがどんどん深く刻まれていく。その笑みは今日の中でとびっきりの笑顔だった。
どのお客さんの笑顔よりも輝いていて、あたしにとって誰も敵う事の出来ない大家さんの笑顔。
「……あぁ、よかった……」
ホッとしたあたしを見て、その場にいた皆がそれぞれ笑う。
その中の藤井くんと目が合うと、彼はグーの形をした手から、親指だけを上に向けて出した。その手を自分の顔の傍に近づけるとあたしにだけ見せた。
彼はグゥ~と言った口の形だけをして微笑む。
その笑顔は大家さんにも匹敵するぐらい、ううん……それ以上の価値かもしれない――――――――あたしの心を捕らえて放さない。
ドリッパーにはペーパーをセット。その中にコーヒー粉を入れる。
粉の表面を平らにしておく。その上に一度沸騰させたものを90度以下にして、粉全部にいくように注ぐ。蒸らすのでそのまま数十秒待つ。
蒸らした後はまたお湯を全体にのを描くような感じで注ぎ、二回目以降はなるだけ真ん中辺りからお湯を注ぐ。この時お湯がサーバーに落ち切る前に、ゆっくり注いでいく。
完成は粉の中心辺りに白い泡になったら抽出完了。
あたしは一連の作業を終えると温めておいたコーヒーカップに入れた。
初めて誤魔化しの効かないブラックコーヒー出す。それをふたりの前に置いた。
「お待たせしました。どうぞ」
目の前にあるカップの薫りをふたりが揃って味わう。
「いい薫りだね」
そう言って、藤井くんは微笑んだ。それに続いて洋輔の顔からも自然と笑みがこぼれる。
「ホントにいい薫りだな」
「今度は味も味わってみて」
ふたりはまた揃って、カップを持ち、コーヒーを味わう。
今度は洋輔が先にしゃべり出した。
「俺、実は言うとブラックは苦手だったんだよな。超苦みがあって。アメリカンは薄いから余計あれだけどな。これはいい苦味が口に広がってコーヒーを飲んでるって気がする」
「確かに、その通りだね。いい味してるよ」
洋輔の言葉に納得した藤井くんが、うんうんと頷きながらまた口にカップをつける。
あたしにはホントにおいしそうに飲むふたりの姿が嬉しいのだった。
「ふたりとも、ありがとう。ホントにおいしそうに飲んでくれるから、すごく嬉しい」
あたしは言葉ひとつひとつに心を込めた。
藤井くんがそう言ったあたしの顔を見ると、手にあるカップを置く。
「これさ、大家さんにも召し上がって貰った方がいいよ」
「かな? お礼にあたしもそれは思ってたんだけどね。でも、お店邪魔しちゃいけないから、なかなか言い出せなくて」
困った顏であたしがそう言うと、今度は洋輔が藤井くんに加勢する。
「慎一、それ超いい考えじゃなくね」
藤井くんは黙って頷いているけど、あたしはまだ少し不安だった。
「トウコは心配すんな。ちゃんと呼んできてやるから」
「そうだよ、宮野さん」
ふたりの心強い味方ができて、あたしの顔からみるみる内に笑顔が戻る。
「じゃあ、これを飲んだら、洋輔呼びに行こう」
「ああ、それがいいな」
しばらくして、ふたりはコーヒーを味わい終わると約束した通り大家さんを呼びに、ここを後にした。
約束通り、ふたりは大家さんを呼んできてくれた。
あたしの目の前で大家さんはカップを持ってから、鼻の傍に寄せる。そうやって何も混じっていないブラックコーヒーの薫りを堪能する。そして、いよいよカップに口をつけた。
コーヒーを舌で味わいながら、徐々に口の中へひろがって行くようで、口を小刻みに動かしている。
その様子をあたしはただジッと見つめるのだった。すごく緊張して、手に汗が自然と湧き出てくる。この緊張感が伝わっているようで、大家さんがこちらを見た。
「董子ちゃん、とてもおいしいよ。今まで一番良い出来だよ」
彼の元々のシワがどんどん深く刻まれていく。その笑みは今日の中でとびっきりの笑顔だった。
どのお客さんの笑顔よりも輝いていて、あたしにとって誰も敵う事の出来ない大家さんの笑顔。
「……あぁ、よかった……」
ホッとしたあたしを見て、その場にいた皆がそれぞれ笑う。
その中の藤井くんと目が合うと、彼はグーの形をした手から、親指だけを上に向けて出した。その手を自分の顔の傍に近づけるとあたしにだけ見せた。
彼はグゥ~と言った口の形だけをして微笑む。
その笑顔は大家さんにも匹敵するぐらい、ううん……それ以上の価値かもしれない――――――――あたしの心を捕らえて放さない。
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