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【2】ものすごく残念で、あまり頼りたく…
トロッコ列車で行く、盗賊退治の旅。
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頭が悪い退治屋、世間知らずトランス王子、辞めたい勇者、思い込みガチ勢、猫もどき。
勇者の胃に優しくない仲間達は、冒険者協会本部を目指していた。
「たーのしー! これラクチンだな、王都まで線路敷いてくれ!」
「王都からは東にしか鉄道が走っていないからね。帰ったら父上に進言しよう」
「え、ジェインさんのお父様は鉄道関係者なのですか」
「あー……、あー広い捉え方をするなら関係者かな」
ニース達は、鉄鉱石を運ぶ単線のトロッコに乗っていた。
世界に幾つもない蒸気機関車が黒い煙を上げ、数十台のトロッコを引き連れて走る。
一方、客車は1両しかなく、生憎の満員。
翌日まで待つのが嫌だった4人は、最後尾に空きのトロッコを2台追加してもらったのだ。
ただ、鉄鉱石を運ぶトロッコは、当然ながらピカピカではない。
ローブや装備が汚れると困るため、4人は半袖シャツに短パンの格好でしゃがんでいる。
「こんな重いの引っ張れるのすげえよな、蒸気機関車は強い。すごい重荷は任せろって、こういう事だな」
「ジェインさん。鉄道業界的にはそんなことわざが?」
「いや、ボクは聞いたことがない。トリスタンのことわざかも」
「ニースさん。もしかして、強い者には任せろの事ですか」
「それ、長いものには巻かれろ、じゃないかな。語呂しか合ってないが」
ニースもアーサーもピンと来ていないが、アイゼンはもう気にするのを諦めていた。
問題児たちのせいで、アイゼンは精神的に強くなったようだ。
汽車は重いトロッコを引いているため、とてもゆっくり走っている。
人の全速力より遅く、馬車よりは若干早い。時速にして約15キルテほどだ。
「ネッコ、外見るの楽しいのか?」
「マァォ、マァー……グルル」
ネッコが目をまんまるにして後方の景色を眺めている。
赤茶色の荒野には木々も殆どなく、岩山が遮らない限りどこまでも見渡すことが出来る。
街道が次第に進行方向右手へと逸れていく。
のどかな雰囲気の中、最初に異変に気付いたのはアイゼンだった。
「……街道はもう随分北にあるはずなのに」
「んー?」
「線路沿いに馬が追って来ている」
アイゼンが目を凝らす。
ネッコが大きく口を開けて鳴いた瞬間、アイゼンは双剣を手に取った。
「盗賊だ!」
「え、盗賊!? よっしゃ!」
「……何でニースは嬉しそうなんだ」
「盗賊を見たら金と思え! って言うじゃん」
「えっ、言わないが」
盗賊退治は報奨金が高い。どこかの町で自治官に差し出せば、それまでの被害規模によっては100万エルを下らない。
ニースは早くも報奨金の事を考えていた。
馬達はどんどん迫って来る。
その背には、黒い目出し帽をかぶった黒づくめの男。数は10人程だ。
「ニース、この状況でも戦えるか!」
「おう、強い者には任せろだろ? 覚えた!」
「いや長いものには巻かれろだって、全然意味が違う」
機関士や機関助士は気付いていないようだ。速度は変わる気配がなく、盗賊はどんどん迫って来る。
とその時、トロッコの側面に金属音が響いた。
「あいつら銃を持っている!」
「どうしますか。勇者さんは装備を脱いでいますし、心配です」
「おい、オレ達の心配どうしたよ」
「銃を持てるという事は、それなりにお金に余裕がある盗賊……報奨金の心配はなさそうだね」
「ジェイン。命の心配の方が先じゃないかな」
厚い鉄板は銃弾を通さない。しゃがんでいれば狙撃はされないが、追いつかれて撃ち込まれたなら防ぎようがない。
ニースはため息をつき、剣を手に持った。
「アイゼン、近寄って来る奴は全部任せていいか」
「何をする気だ」
「まあ見てろ」
ニースがサッと立ち上がり、顔の前で剣を構える。
男達が不安定な騎乗のままニースへと銃弾を放つ。
「ニース!」
金属音が鳴り響いた。思わず3人とネッコが伏せるも、ニースは倒れない。
「まあ、これならいけるな。砲弾とか撃たれたらさすがにきついけど」
「もしかして、剣で……弾いたのか!?」
「おう!」
盗賊たちがムキになって銃弾を浴びせるも、ニースは全てを剣で防ぐ。
その眼差しは鋭く、まるで別人だ。
「……ニースが防いでくれる! 俺は乗り込んで来る奴を蹴散らす! アーサーはジェインを守れ!」
「ボクは!?」
「魔法だ、詠唱頼んだぞ!」
「わ、分かった!」
「出来れば自然への影響が少ないものを」
「き、期待には応えられない!」
アイゼンが立ち上がった時、ちょうど盗賊2人が馬をトロッコに寄せ、飛び乗った所だった。
トロッコに飛び乗った盗賊達は、忌々しそうにアイゼンを睨み、銃口を向ける。
「チッ! 今日は護衛を雇っていやがった!」
「フン。ただの護衛だと思うな」
「そうだぞ! あとでちゃんと護衛料はもらう!」
「ニース、黙っていてくれ」
アイゼンは瞬時にしゃがみ込み、男の1人の両足を双剣の腹で殴りつけた。
「破ァァッ!」
「コイツ……クソッ!」
男が仰向けに倒れる寸前、アイゼンは男の手首を掴んで投げ飛ばす。
「うわぁぁぁ!」
男が地面に投げ出され、起き上がれずに置き去りにされる。
だがアイゼンが揺れに一瞬怯んだ隙に、もう1人の男がアイゼンに銃を向けた。
「よくも邪魔をしてくれた!」
「勇者さん、危ない!」
アイゼンの危機を察知し、アーサーが男に飛び掛かった。
そのまま男の足を掴んで遠くへ投げ飛ばす。
「うわぁぁ!」
「勇者さん、お怪我は!?」
「ないよ、有難う、助かった!」
残りの者が乗り込んでくる様子はない。
それどころか、馬が言う事を聞かずに盗賊達を振り落とし、街道の方へと逃げていく。
「な……んだ?」
何が起こったのか。その原因はネッコだった。
ネッコが大きく口を開け、威嚇していたのだ。
「シャーッ」
首輪のせいで大きくはなれないが、馬はモンスターの怖さを知っている。
馬は臆病で、脅威を察知すればすぐに逃げ出す。ネッコを恐れたのだ。
汽車はようやく盗賊に気付いたのか、速度を落とし始めた。
「ネッコ! おりこうだなあお前! もしかして飼い主に似たのか?」
「グルル……マァーォ」
「へへっ。アイゼン! オレ走って機関室を襲ってる奴らぶっ叩いて来る!」
「頼んだ! ジェイン、どうやら今回は魔法を使わなくても……」
「はぁっ!? 唱え始めたのに、今更止められないんだが!」
「えっ!? お、おい待て!」
ジェインの目が光り、同時に天から稲妻が襲い掛かる。
盗賊達がいた辺りで、衝撃音と共に土埃が舞い上がった。
「おい、やりすぎだ!」
「制御できないって言っただろう! 1つだけで済んだ事を褒めて欲し……」
ジェインが猛抗議をしていると、再び爆音が轟いた。稲妻だ。
「……すまない、2つだった」
ジェインが小さく謝った時、左前方から地面でのたうち回る盗賊が流れてきた。
はるか前方に目を凝らすと、盗賊を剣の腹で殴り飛ばすニースが見える。
やがて汽車は完全に停止し、ニースが盗賊を引き摺って戻って来た。
気を失った盗賊をトロッコに投げ入れながら、稲妻の落下地点に向かおうとする。
「何をする気だ」
「あ? へっへ、あいつら金になるんだよ」
盗賊を捕えたら報奨金が貰える……と言いたいのだろう。
「ニースさん、僕も行きましょう」
「あいつ、盗賊より恐ろしいな」
「そうかな? 悪者を粗末にせず、使えるだけ使う精神は素晴らしいと思わないかい」
「俺は君のことも恐ろしい」
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