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四章 一幕:管理者と筥の秘密
四章 一幕 1話-2 ※※
しおりを挟む「今度、ガイルを魔物討伐にでも連れていくかな」
呟いたのはレオンハルトだ。
「どうして魔物討伐に?」
「ガイルは平民出身だから。今は騎士爵だが、伯爵のアレン殿とどうにかなろうと思ったら、最低男爵位はあったほうがいいだろう? アースワイバーンあたりを仕留めてくれたら、一代限りでも叙爵を議会に提案することもできるんだが……、今はもう飛行型の魔物は王国側には出現しないしな……」
「今は爵位の差や身分を気にする貴族も少ないから、気にしなくてもいいんじゃないかな。叙爵じゃなくて、どこかの養子にするほうが手続きとしては簡単だよ?」
「俺も、周りは気にしないと思うよ。でも、ガイル自身が気にするだろうから。あいつ、真面目だからな。きっと、身分が違いすぎるって言いだすに決まってる。見たところ、ガイルも満更でもないみたいじゃないか。でも、アレン殿が遊びのつもりで自分に声をかけてるんだろうって思ってる気がするんだよな。一応あいつも令嬢令息にモテてる自覚あるらしいから」
「つまり、アレン兄さまが飽きるまでは付き合おうってこと?」
「アレン殿が本気かどうかは知らないが、ガイルは間違いなく自信がない感じがする」
「そうなんだ……。じゃあ、アレン兄さまにちゃんと本気だって伝えるようにアドバイスしておくね」
「本気なのか?」
「そうだと思うよ。相手がガイルだって知ったのは今だけど、長期滞在の理由を聞いた時に、どうしても口説き落としたい人がいるって言ってたのは本当だから」
「じゃあ、アレン殿は今回、ガイルを口説き落とすためだけに、いつもより半年も早く公爵家に来たってことなのか?」
「そうなるね。アレン兄さま曰く、僕とレオみたいな運命の相手なんだって」
「ははっ、それは離れられないな」
「そうでしょ? だから応援してあげて」
「じゃあ、今年一年、交流茶会は公爵家でしよう。アレン殿を王宮に招くには大義名分が必要だけど、公爵家なら俺とルゥが茶会するたびに会える。少なくとも二週に一度は会えるわけだ。ハロルドには悪いが茶会の日は休みをやって、ガイルだけ連れてくるとしよう。ルゥはどう思う?」
「アレン兄さまにとって魅力的な提案だね。もちろん、僕にも」
「ルゥも?」
「だって、王宮だといつも傍にガイルやハロルドがいたり、侍女がいたりするでしょう?」
そう言ってルヴィウスは席を立つと、レオンハルトの傍に歩み寄り、するり、と彼の首に腕を回すと、当たり前のように彼の膝の上に横向きに座った。
「でも、公爵家なら二人きりになれる。こんなふうにレオに甘えたい放題だよ?」
誘うように囁いたルヴィウスは、ゆったりとレオンハルトの唇に自分のそれを重ねる。その行為に応えるように、ルヴィウスを抱きしめたレオンハルトは、キスの合間に呟いた。
「隠ぺい魔法、かけようか」
「ん……っ、音も、漏れないように、して……、ぁ…っ」
ルヴィウスの可愛いお願いに、レオンハルトは口づけを深めながら、指を二度鳴らす。
ふわり、と魔法が展開する気配がし、ガゼボは二人だけの空間になった。外から見れば何の変哲もないガゼボで、この中の音は外へは届かない。
「ルゥがこんなに大胆だったとは思わなかったな」
ルヴィウスの首筋に口づけをしながら、レオンハルトが揶揄って言う。
「だって、最近ゆっくり会えなかったから……―――ぁっ」
いつの間にか外されたシャツのボタン。はだけた隙間からレオンハルトの少し冷たい手が入り込んでくる。
年末と年始の公式行事、そしてレオンハルトの魔法省での業務に、ルヴィウスが通うアカデミーから出される論文の課題。二人は、何かと忙しい。
ルヴィウスがアカデミーで専攻している古代語専攻学科は、担当教授や生徒数こそ少ないが、難関であることで有名で、課題がクリア出来ないと卒業できない。
授業より論文制作に重きを置いており、調査や下調べで多くの時間を取られるのだ。時折レオンハルトが助言をくれるが、ルヴィウスはなるべく自力で卒業を勝ち取りたいと考えている。
「ルゥ、少し痩せた?」
レオンハルトの問いかけに、ルヴィウスは首を横に振った。逆に体重が増えている。絶対に言わないけれど。
「うそだ。俺、ルゥのサイズを把握してるからすぐわかるんだ」
「うそでしょ……」太ったとバレるのはいただけないっ。
「ほんと―――あ、痩せたんじゃなくて、ちょっと背が伸びたほうかも」
「えっ、そうなのっ? うれし―――ぁ、んっ」
ルヴィウスの胸に触れていたレオンハルトの左手が、くるり、と円を描く。たったそれだけで、ルヴィウスの体は次を欲してしまう。
もっと直接的にレオンハルトを感じたくて、ルヴィウスは自ら体を擦り寄せた。
ルヴィウスの肩からシャツが滑り落ちる。真珠色の肌を晒したルヴィウスは、誘うように銀月の瞳を潤ませた。
後ろへと倒れていかないよう背を支えるレオンハルトの右手が、ルヴィウスの細い腰を撫でた。
真っ直ぐな蒼い瞳が、潤む銀月の瞳をじっと見つめている。
「れぉ……」
愛撫への期待で、ルヴィウスの胸の飾りは、ぷくり、と膨れた。それに気づいたレオンハルトは、見せつけるように左胸の尖りに吸い付く。
「ぁ、ンッ」
待ち焦がれていた快楽に、ルヴィウスの喉が反り、体がしなる。不安定さからレオンハルトの首に腕を回し、体をなんとか支えた。
「んっ、あっ、ぁっ、んん……っ」
左は舐め上げられ、しゃぶられ、思い出したかのように甘噛みされ、反対側の尖りは抓まれては弾かれ、捏ねられては捩じられる。
気持ちいい。もっとしてほしい。もっと、もっと、レオンハルトの熱に溺れたい。欲しくて、欲しくて仕方ない。
足らない。こんなんじゃ、ぜんぜん満たされない。どうにかしてレオンハルトの熱を、この体の中に受け入れたい。
ルヴィウスは、レオンハルトから与えられる愛撫に体を熱くしながらも、どこか物足りなさを覚え、彼の頭を抱えるようにしてしがみついた。
「ちょ……っ、ルゥっ、苦しい……っ」
レオンハルトが控えめにルヴィウスの背を叩く。
ルヴィウスは、こくっ、とひとつ息を飲んで、するり、と腕を解いた。そして、荒くなった息を整えることもせず、レオンハルトの上から降りると、そのまま彼の足の間に座り込む。
「ル…、ルゥ……?」
レオンハルトは戸惑いに瞳を揺らす。
ルヴィウスはレオンハルトのベルトに手をかけ、ズボンの前合わせを緩めると、下履きごとウェストを下げ、まだ柔らかい彼の熱を取り出した。
「ちょ……っ、ルゥっ? 待って、待ってっ?」
「ゃ、待てなぃ……んむっ」
ぱくり、と躊躇うことなく、ルヴィウスはレオンハルトの性器を口に含んだ。
濃い匂いが、口の中に広がる。吸い付くような甘い強さで、やわやわと舌を使って撫でるように刺激を加えていると、徐々に彼の熱が芯を持ち始める。
そうして膨らんでいく象徴に、ルヴィウスの口の中は刺激を拾い始めた。
「ん……く……っ」
「は、ぁ……っ、ルゥ……っ」
レオンハルトの声音が、艶っぽく湿り気を帯びる。
ルヴィウスはレオンハルトの熱を口の中で刺激しながら、上目遣いに彼を見あげた。
ぱちり、と視線が合う。レオンハルトが、眉尻を下げ、蕩けた蒼い瞳でルヴィウスを見下ろしている。
気持ちいい。
そう言われているようで、ルヴィウスはレオンハルトの熱杭を、強く吸いながら出しては甘く含み、喉の奥まで飲み込んでは再び出す、といったふうに、緩急をつけて挿入を繰り返した。
そうするうちに、レオンハルトが愛撫に応えるように吐息を零し、時おり喘ぐ。ルヴィウスは口の中いっぱいに膨れる息苦しさより、上顎に擦れる彼の熱に、胎の中が、きゅうっ、と収縮する快感に溺れた。
嬉しい。体の中に、レオンハルトの熱がある。
欲しい。この熱が弾けた時に吐き出される白濁の子種が。
じゅぶ、じゅぶ、とレオンハルトの熱杭を刺激し続けていると、「ルゥっ、ごめんっ」と唐突に謝られた。
なんだろう、と朦朧とする意識の端で思った瞬間、ガシッと頭を両手で掴まれた。かと思うと、ぐっ、と腰を押し付けられる。
「んぐ……ッ、ンンッ!」
ぐぽっ、ぐぽっ、と自分の意思とは関係なく、レオンハルトの熱が口の中を蹂躙していく。
苦しい。でも、気持ちいい。息ができない。意識が遠のく。涙が溢れて頬を濡らす。なのに、体中が歓喜している。
出して。出して。全部この口の中にちょうだい。
ルヴィウスは必死にレオンハルトの脚にしがみつきながら、その時を待ち望む。
「ルゥッ、イク……っ!」
どくり、とレオンハルトの熱が大きく脈打つ。膨れたそれは、ルヴィウスの喉奥に向かって欲望を吐き出した。
びゅるっ、と吐き出された熱を絞り出すように、ルヴィウスは舌と上顎を無意識に動かす。
体液に含まれたレオンハルトの魔力がルヴィウスの快楽を上塗りし、胎の奥が、きゅうっ、と締まった。
ずるり、とレオンハルトの熱杭を口から離したあと、ルヴィウスは熱に浮かされたかのような気だるげな表情を浮かべ、顔を上げると同時に、こくっ、と喉を上下させた。
「ばかっ、飲んでどうするっ! ほらっ、ペッてして! ペッって」
なに、ペッてしてって。なんだか可愛い。
そう思いながら、ルヴィウスは、ぱかっ、と口を開けた。
「のんじゃった」
ぶわっ、とレオンハルトが顔を赤らめる。
「あぁ、もう! 無茶して! いやっ、俺が無茶させたのか!」
レオンハルトは慌てながらも、ルヴィウスの両頬を優しく包み込み、浄化魔法をかける。
ルヴィウスは、口の中からレオンハルトの味が消えたことを残念に感じながらも、ふるふる、と顔を横に振った。
「気持ちよかった」
ふにゃり、と笑うルヴィウスに、レオンハルトは「いや、うん、そうか」と相づちをうちながら、気持ちよかったのは俺だけど、と戸惑う。
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